堀口英樹・キリンビバレッジ社長(1月19日の事業方針説明会)

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 嵐の前の静けさか、競合他社がひしめく飲料業界で新たな再編の気運が高まっている。台風の目になっているのは、「午後の紅茶」や「生茶」などの主力ブランドを販売するキリンビバレッジ(以下、キリンビバ)だ。

 昨年10月、同社を傘下に持つキリンホールディングス(HD)が、清涼飲料メーカートップのコカ・コーラグループと資本業務提携に向けた話し合いを始めたことを発表した。

 具体的な提携の中身は明らかにしていないが、原料や資材の共同調達、物流面での連携など限定的なもので、あくまで両社のコスト削減が主な狙いではないかとの憶測が流れている。そのため、株式の持ち合いも当初は数%ずつにとどまるとの見方が強い。

 だが、業界内では、「両社の関係が良好に築かれれば、いずれ提携拡大や場合によっては経営統合などの道もあり得る」といった声が根強い。それには根拠もある。

「清涼飲料事業は参入メーカーの数が多く過当競争に陥っているうえ、酒類に比べて利益率が極端に低い。上位メーカー以外が1社単独で商品開発や製造拠点、販売規模を拡大して利益を上げ続けられる時代ではなくなった。

 業界4位のキリンビバも例外ではない。キリンHDの磯崎功典社長は同社を『低収益事業』と明確に位置づけ、利益ある成長を促している。昨年、同社がダイドードリンコと自動販売機で商品の相互供給を始めたのも、生き残りのための布石といえる」(経済誌記者)

 キリンに限らず、すでに飲料業界では数年前より再編の動きが加速化しているのは周知の事実だ。

 2011年にサッポロHDがポッカコーポレーションを子会社化。その翌年にはアサヒグループHDがカルピスを買収。2015年には業界2位のサントリー食品インターナショナルが日本たばこ産業(JT)の自販機事業を買収した。

 そして、今回のキリンとコカ・コーラの提携が実現すれば、飲料業界は一層慌ただしさを増してくるかもしれない。飲料総研の宮下和浩氏がいう。

「トップのコカ社がサントリーの追撃をかわすためにキリンと密接な関係になれば、アサヒや伊藤園、大塚製薬などのメーカーを軸に、“第三極”づくりが急ピッチで進む可能性があります。ダイドーだって、いまだにキリン以外とも提携交渉の門戸を開いていますからね」

 しかし、昨年内には締結されるのではないかと見られていたキリンとコカ・コーラの提携話は、年が明けても一向に音沙汰がない。

 1月19日に開かれたキリンビバの事業方針説明会でも、記者から真っ先に質問が飛んだが、堀口英樹社長は「今は何も話せない」の一点張り。提携交渉が進んでいるのか否かの進捗状況さえ明かさなかった。

 その一方で、キリンビバ自身の業績は安定傾向にある。昨年3月に大幅リニューアルした「生茶」は年初目標の1.5倍を超える2620万ケースの販売を記録。発売から30周年を迎えたロングセラーの「午後の紅茶」も過去最高となる5150万ケースを販売した。

 また、長らく苦戦していた缶コーヒーの「ファイア」も、発売前に新商品名を伏せた“シークレットサンプリング”を大々的に行ったことも奏功し、好調な販売を続けている。

「飲料市場でもっともボリュームの大きなお茶とコーヒーで復調しているのは、キリンビバにとっては明るい材料です。また、今年からストレスの軽減を謡った機能性表示食品の飲料『SUPLI(サプリ)』シリーズで、健康に訴求した新商品も続々と投入します。

 とはいえ、経営資源の選択と集中、コスト削減等で収益構造を高める努力をしなければ、利益ある成長が続けられないのも事実。自社の強みを活かしながら、いかに他社と互角の立場でアライアンスを結ぶことができるかが、生き残りの大きなカギといえるでしょう」(前出・宮下氏)

 ここにきて、一気に合従連衡が進みそうな気配の飲料業界。かつてサントリーとの経営統合が破談に終わった苦い経験も持つキリンだけに、今回はいかにして巨人、コカ・コーラと歩調を合わせていくのか注目だ。