新年の辞の途中で頭を下げる金正恩氏(画像:朝鮮中央テレビキャプチャー)

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北朝鮮の金正恩党委員長は、1月1日に発表した新年の辞で、頭を下げつつ次のように反省の弁を述べた。

「いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送りましたが、今年は一層奮発して全身全霊を打ち込み、人民のためにより多くの仕事をするつもりです」

北朝鮮の最高指導者のこのような発言は、異例中の異例だ。ところが、北朝鮮の人々は冷めた反応を示している。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

情報筋によると、金正恩氏が自身の能力不足を認めたことに、多くの人が驚いている。「親戚や友人と話していて新年の辞の話題が出たのは数十年ぶりのこと」(情報筋)という状況が、その驚きの度合を現している。

一方、金正恩氏が「人民に忠実に仕える人民の真の忠僕、忠実なしもべになることを、この元旦に厳かに盟約します」と述べたことについては、「百回誓ったところで何になる」「実践が大事」「がらにもないことを言ってお涙頂戴か」「そんなことは、人民に白米と肉のスープを食べさせてから言うものだ」などと散々な反応だ。

「白米と肉のスープ」とは、故金日成主席が1962年10月22日の最高人民会議の場で述べた「1964年には、皆が瓦屋根の家で白米と肉のスープを食べて、絹の服を着る豊かな生活を享受することになるでしょう」という言葉が元ネタである。

もともと薄い期待

金正恩氏は、最高指導者に就任直後の2010年11月初め、「3年以内に国民経済を1960〜70年代の水準に回復させて『白ご飯に肉のスープを食べて、瓦屋根の家で絹の服を着て暮らす』生活水準を成し遂げなければならない」と語っている。

以前に比べ、食糧事情が改善したのは事実だが、依然として国際社会からの援助を受け取るなど、「公約」が完全に達成できたとは言えない状況だ。

そんな中での金正恩氏の異例の発言は、「人民の暮らしの責任を一手に引き受ける人民愛に溢れる指導者」というイメージ作りを目論んだものと思われるが、情報筋が伝える人々の反応を見る限り、あまり効果がないようだ。

国や指導者からの配給で暮らしていた以前とは違い、市場での商売をするなどして自らの力で生計を立てるようになっている北朝鮮の人々は、金正恩氏への期待感が薄いのだ。

金正恩氏の新年の辞に対する知識人やトンジュ(金主、進攻富裕層)の評価は、次のようなものだ。

「将軍様(金正日氏)は、庶民だけを痛めつけたが、元帥様は幹部の不正を締め上げて、庶民には市場での商売を許している。外国留学の経験があるせいか、政治戦略が一枚上だ」

その一方で、「テレビカメラの前で頭を下げる姿は、父親(金正日氏)よりは率直に見えるが、なんだか血の嵐が吹き荒れることを予感させる」として、金正恩氏が大々的な粛清に乗り出すのではないかと心配している。

さらに、中国遼寧省の丹東にやってきた北朝鮮の貿易関係者は次のような反応を示している。

「『人民の真の忠僕』という言葉を聞き、政治技法が優れた指導者の姿だと思った。もちろん他意を抱いているのだろうが、表向きは人民を騙す戦略ができる人だ」