Former Prime Minister Matteo Renzi (R) and Italy's newly appointed Prime Minister Paolo Gentiloni pose during a swearing in ceremony at the Palazzo Chigi on December 12, 2016 in Rome. (c)


 私は公認会計士、心理カウンセラーとして経営コンサルティングの仕事をしている。その中で様々なご相談をお受けするが、その中にはこういったご相談もある。

 「部下が言うことを聞いてくれないのですが、どうすればいいですか?」

 部下が言うことを聞かない原因はいくつかのケースに分けられる。

部下が言うことを聞かない4つのケース

,海舛蕕言ったことを相手が理解できていない。
△海舛蕕言ったことは理解できたが、そのやり方よりも自分の考えたやり方の方がうまくいくと思っている。
A蠎蠅箸竜離が近すぎて馴れ合いの関係になっている、あるいは完全になめられている。
ち蠎蠅反頼関係が築けていない、あるいは信頼関係が崩壊している。

 ,離院璽垢呂泙坐蠎蠅理解できているかどうかを確認するために、相手にその内容について説明させる。すると、どこが理解できていないかが分かる。

 △離院璽垢倭蠎蠅旅佑┐襪笋衒を確認し、特段、問題なければ本人のやり方を尊重するが、組織運営上、そのやり方に問題があるのであれば、なぜそのやり方ではいけないのか、その理由を説明する。それでもやり方を変えない場合は罰則を設ける。

 このケースで部下が言うことを聞かず、組織の統率が乱れるのであれば、それは上司と部下との間の適度な緊張感を保つ距離感を模索しなければならない。

 加えて、人間性や能力においても一目置かれる存在になるべく自己研鑽を積む必要がある。普段は優しくても怒ると恐い。その迫力もリーダーシップを発揮するうえでは身につけておかなければならない。

 問題はい離院璽垢任△襦

 相手と信頼関係が築けていない、あるいは信頼関係が崩壊している状態では、何を言っても相手は言うことを聞いてくれない。

 部下とこういった状態にある中で、「何と言えば相手は言うことを聞いてくれるでしょうか?」とご相談を受けた場合、私は「何を言っても言うことは聞いてもらえないでしょう」と答える。続けてこうお話しする。

 「何かを言うよりも、まず先に真摯に相手の話を聞いて信頼関係をつくることから始めて下さい」

 人間の言葉というのは、発する人間に信頼がないとその言葉は力を持たない。そのため、信頼関係がない状態で提案や指示をしても、相手は動かない。

 その状態にあっては、まずは言葉に力を持たせるために信頼関係の構築から始めなければならない。信頼関係構築の第一歩は相手の話を聞き、相手を認め、そして相手に敬意を持つことである。

 経営コンサルティングの仕事をするうえでは、クライアント企業の様々な方とお会いすることがある。その場合に私の提案を受け入れていただくために、短時間で信頼関係を築くことが求められることは少なくない。

アウェイな雰囲気を一変させた対応

 以前、ある会社で取締役のメンバーに私の方から直接意見を言ってほしいと社長から依頼され、取締役会に参加することになった。取締役会が行われる会議室に入り、社長から私の紹介がされると、アウェイな空気が流れ始めた。

 「社長がコンサルとか連れてきてるけど、そもそも何者?」「なんか社長から先生とか言われてるけど、上から目線で何か言ってくるんじゃないの」

 言葉には出さないものの、取締役メンバーの表情からそういった雰囲気を感じる。

 取締役会が始まり、私は意見を求められたが、「まずは皆さんのお話を聞かせて下さい」と意見を述べることを差し控えた。取締役会を一通り傍聴させていただいた後、最後に社長からこう話をふられる。

 「じゃ、先生、最後に何か一言アドバイスをお願いできればと・・・」

 取締役の皆さんの鋭い視線を感じる。そこで私はこうお話しさせていただいた。

 「皆さんが会議をされている姿を見て、会社を良くしたいという気持ちがとても伝わってきました。私の方から何かアドバイスをということですが、こちらの方が皆さんからいろいろと学ばせていただきました。本当にありがとうございます」

 そして、深く頭を下げた。すると、会場の空気がふっと変わり、取締役の方々の表情が柔らかくなる。その後に私が気づいた点をお話しさせていただいた。

 すると、うなづきながら私の話を聞いてくださる。そして、取締役会が終わると、多くの方が笑顔で名刺交換をしに来てくださった。皆さんに受け入れてもらえたと感じる瞬間である。

 社長が外部の人間を取締役会に連れて来るということは、取締役の方々からしてみればあまりいい気がするものではない。よそ者に経営に口出しされたくはない。そもそもうちの会社のことをどこまで分かっているのか。そんな気持ちを抱かれるだろう。

 そんな状態で「会社の運営はこうした方がいいです」などと意見を述べても、素直に言うことを聞いてくれる可能性は低い。

 経営コンサルだからといって偉いわけでもなんでもない。偉いのは何年も現場でこの企業を支えてきた従業員の方々であり、この会社についての知識も経験も従業員の方々の方が圧倒的に豊富である。

 その点に真摯に敬意を払う必要がある。そういった気持ちをお伝えすることで、少しずつでも信頼関係を築いていく必要がある。

信頼関係ができるまでコメントしない

 信頼関係のない状態では言葉は力を持たない。そのため、信頼関係を築くきっかけが得られるまでは、コメントは差し控えるべきであり、皆さんの話を聞かせていただいた後、私は敬意とお礼を伝えてから、私の意見をお伝えさせていただいた。結果、取締役会の空気はアウェイからホームへと変わった。

 ある会社では40人ほどの営業の方を対象とした営業研修をさせていただくことになった。会場に行くと30〜40代のメンバーの中にお1人だけ60代の方がいらっしゃった。

 講義を始めるも、その60代の方は腕組みをして、眉間にしわを寄せ、そっぽを向いて、全く講義を聞いている様子はなかった。

 「こっちはこの道一筋で何十年も営業をやってきたんだ。それが何を今さらよそ者の若造の話を聞かなきゃいけないんだ」

 おそらくそんな心境なのだろう。私が逆の立場でもきっとそう思うかもしれない。お気持ちはよく分かる。

 私は講義の間の休憩時間にその方に話しかけた。そして、その方のこれまでの営業スタイルについてお話を伺った。

 長年かけて培ったご自身の営業のコツについてお話しいただき、私は素直にその方法が素晴らしいと感じた。そして、その気持ちをその方にお伝えした。

 「私もいろいろなところで営業の方とお会いしお話を伺いますが、そういった視点を持って営業をされている人を始めて見ました。勉強になります。ありがとうございます」。そうお伝えし、頭を下げた。

 「生徒に向かって勉強になりますなんて頭を下げる講師の先生は初めてだわ。先生は変わった人だねぇ」。その方はそう言って笑って下さった。

 研修という場では私が講師で、その方は生徒かもしれない。しかし、この会社の営業の現場では私なんかよりもはるかにその方の方が経験も知識もお持ちであり、講師と生徒の立場は逆転する。

 その生の現場のお話から学ぶことはとても多い。その点について、素直に敬意を表し、学びをいただいたことについてお礼を伝えた。

 それ以降、その方は私の講義を熱心に聞いて下さるようになった。さらには講義の時間に遅れてきた若手相手に、「お前ら、先生を待たせんじゃねぇ!」と注意までしてくださった。

相手のせいにせずコミュニケーション方法を考える

 以上の話は上司と部下という関係の話ではないが、相手が言うことを聞いてくれないという状況を克服するための参考になればと思い、ご紹介した。

 言うことを聞いてくれない原因はすべて相手にある。そう思えば思うほど、得てして相手は言うことを聞いてくれない。

 相手がこちらの言うことを聞いてくれないのであれば、まずは真摯に相手の話を聞き、敬意と感謝を伝える。そういったコミュニケーションがきっかけとなって状況が好転した例は少なくない。

 それは相手が部下であっても同じである。何を言っても相手が言うことを聞いてくれない。そういう場合は、相手を説得するコミュニケーションを考える前に、相手との関係性を変えるコミュニケーションを考える必要がある。

 そして、そのコミュニケーションは口先だけのものではなく、真摯な気持ちを伴うものでなければならないということは言うまでもない。

筆者:藤田 耕司