2013年10月のソフトバンク(現・ソフトバンクグループ)決算説明会

写真拡大

 過去にソフトバンクのスマートフォンを契約していた人が、回線を解約した後もなぜかソフトバンクから料金の引き落としがなされているという事例が、いくつか起きているようだ。その原因とは何か。また、こうした事態に陥らないためには、どのようなことに注意すべきなのだろうか。

●実は、もうひとつ回線を契約していた

 携帯電話の料金の仕組みや契約形態は、以前より複雑でわかりにくいといわれているが、それによるトラブルが何度か起きている。そして最近、インターネットなどでちょっとした話題となったのが、ソフトバンクの回線契約に関するトラブルである。

 このトラブルは、いったいどのようなものか、例を挙げて簡単に説明しよう。

 ある人が過去にソフトバンクの回線を契約しており、他のキャリアに移るなどの理由でそれを解約した。そこでソフトバンクとの契約は解除されたと思い、しばらく過ごしていたのだが、ある日ふとクレジットカードや銀行口座の明細を確認してみると、いつ頃からかソフトバンクより見覚えのない料金が引き落とされ続けていたというのだ。

 引き落とされていた料金は、以前利用していたときの金額とは異なることが多い。それゆえメインの回線とは異なるなんらかの契約が、解約されずに残っていたというのがトラブルの主因となるのだが、なぜこのような事例が多く発生してしまっているのだろうか。

 さまざまな事例を確認するに、かつてソフトバンク(2015年3月末まではソフトバンクモバイル)が展開していたキャンペーン施策などによって実はもう1回線契約していたことを、ユーザー側が忘れてしまっていたことが、大きな要因となっているようだ。

 例えばソフトバンクは、11〜15年頃にかけて実施していたいくつかのキャンペーン施策において、iPhoneやiPadを対象とした「ゼロから定額」という料金プランを提供していた。これは基本的に2年間、月額料金0円から利用できるが、対象デバイスや契約したタイミングなどによって異なるものの、500KB〜100MBのデータを通信すると5000円前後の料金がかかるというものであった。サブ回線としてWi-Fiでの運用を前提としたプランといえるだろう。

 そして当時、ソフトバンクショップではそうしたキャンペーン施策を積極的にアピールしており、新しいiPhoneに買い替えるユーザーに対しても、買い替えた後の古いiPhoneをゼロから定額プランで維持する提案がなされていたようだ。そうした提案に乗って複数の回線を持つこととなったユーザーが、当面の基本料が0円であるゆえに、その後古いiPhoneの側にも回線契約があることを忘れてしまい、メインの回線だけを解約した結果、無料期間の終了などでもう一方の回線側でなんらかの支払いが発生していたことに気が付かず、先のようなトラブルへとつながってしまったようだ。

 ユーザーの側からしてみれば、「メインの回線を解約すれば、もう一方の回線も解約されてしかるべきでは?」と思ってしまうかもしれない。だが、キャンペーン施策として料金面などでの連動性はあるにしても、回線契約はあくまで2回線分、個別になされている。それゆえ完全に解約するには、すべての回線に対して解約手続きが必要なのだ。

●トラブルの裏にかつての契約数競争あり

 しかしなぜ、ソフトバンクがユーザーの誤解を生みやすいキャンペーン施策を展開していたのかというと、そこにはキャリア同士の競争が大きく影響している。というのも、かつては電気通信事業者協会(TCA)が、毎月各キャリアの契約数を公表しており、その契約数の伸びが、キャリアの好不調を示す指標として非常に大きな注目を集めていたのだ。

 それゆえキャリアは、他社からユーザーを奪える番号ポータビリティ(MNP)を重要視。乗り換えユーザー獲得に向けた多くの優遇施策を打ち出すようになったのだが、それに加えて1人のユーザーに複数の回線を契約させることで、純増数を増やす施策にも積極的に取り組むようになった。ゼロから定額プランのような施策がなされたのも、1人のユーザーから複数の契約を獲得し、純増数を増やして好調さをアピールする狙いがあったことが大きいとみられる。

 もっとも当時はソフトバンク以外のキャリアも、仕組みこそ異なるものの、複数台数を契約することで料金がお得になるキャンペーン施策を多く展開していた。またキャリアによっては、回線の解約時に契約をプリペイドにして維持するようショップ店頭で促されるなど、回線数を増やすだけでなく、解約者の契約を維持するための施策に腐心する様子もよく見られたものだ。

 しかしながら、契約数拡大競争があまりに激化したことで、契約内容がよくわからないまま不要なフォトフレームやタブレット、Wi-Fiルーターなどを契約させられるトラブルが相次いだ。さらに乗り換え競争の激化でMNPでの乗り換えユーザーに対する万単位のキャッシュバック施策が横行したことが社会問題となった。そうしたことから行政側が、携帯電話業界の一連の競争環境を問題視するようになったのだ。

 そこでTCAは14年4月、各社の契約数を毎月から四半期ごとの公表へと変更するなどして、競争の沈静化が急速に図られた。さらに15年に総務省が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」での議論の結果を受け、携帯電話端末の実質0円販売が事実上できなくなるなど、行政によって業界の商習慣に大きなメスが入れられたことで、キャリア同士の契約数競争は事実上ピリオドを打ったといえる。

●携帯回線は必要な分だけ契約を

 ゆえに最近では、複数の端末を無理に契約させるような施策は大幅に減少している。だが現在もなお、競争が激しかった時期に複数回線を契約しており、それに気が付かないまま利用し続けている人もいるかもしれない。

 そうした人たちが、今後後悔しないためにしておくべきことは、まず現在の契約内容をしっかり見直しておくことだ。そしてもし、必要のない回線やサービスの契約があった場合は、たとえ解除料がかかったとしても素早く解約することをお勧めする。

 また携帯電話の支払いに用いているクレジットカードや銀行口座の明細を、毎月こまめにチェックすることも忘れないようにしたい。もし契約したことに気づいていなくても、明細をしっかり確認さえしていれば、不要な料金の支払いにいち早く気づいてなんらかの対応を取ることができるだろう。

 そして今後のために注意しておきたいのは、たとえ「お得だから」と言われても、必要のない回線契約はしないことだ。携帯電話は基本的に毎月料金を支払って利用するものなので、たとえそのときに得をしたと感じても、契約していることを忘れてしまえば、いずれ無駄な料金を延々と支払うことになってしまうからだ。キャンペーン施策に惑わされず、必要な回線を、必要な分だけ契約することが、結果的にお得へとつながることは覚えておきたい。
(文=佐野正弘/ITライター)