韓国・釜山の日本国総領事館前に設置された少女像(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

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 本連載前回記事で韓国の従軍慰安婦問題が再燃している背景について論じたが、今回はまた違った視点から、この問題を見ていきたい。

 釜山の日本国総領事館前に慰安婦をモチーフにした少女像が設置されたことで、日本は通貨スワップ協定の協議再開を中断したが、過去に韓国は日本とのスワップ協定を拒否するような姿勢を示しており、代わりに中国とスワップ協定を結ぶことで補完していた。

 通貨の価値を考えたとき、自国の通貨だけでは信用性を担保することができないため、海外の通貨と交換(スワップ)できるという協定が裏付けとなるわけだ。しかし、韓国が各国と結んだスワップ協定は3月から順次終了し、10月には中国との協定も終了する。そのため、今後、ウォンは信用の裏付けとなるものを完全に失うことになる。

 だからこそ、韓国の財界はなんとしても日本とのスワップ協定を再開したい。そうしないと、ウォンが暴落する可能性があるからだ。ただでさえ、サムスン電子や現代自動車など財閥企業の落ち込みが激しく、韓国経済は崩壊寸前になっている。仮に日本とのスワップ協定が完全に中止になれば、その状況はさらに悪化する可能性が高い。だからこそ、韓国は協議再開に必死になっているわけだ。

●日本が見放せば韓国経済は崩壊する?

 また、日本は日韓ハイレベル経済協議の延期も決めている。スワップ協定ばかり注目されているが、実は同協議も非常に大きな影響力を持つものだ。アジアの債券市場を見たとき、「アジア債券市場育成イニシアティブ」(ABMI)を通じて、日本が信用を担保して新興国や低信用国の債券発行を支えているという構図になっている。そのため、日韓の経済関係の悪化は韓国の債券発行にも大きな影響を与えるのだ。

 また、韓国の特殊銀行(中小企業銀行、韓国産業銀行、韓国輸出入銀行)などは、落ち込みの激しい造船企業や船舶企業への貸し付けが大きすぎて、いつ信用不安が生じてもおかしくない状態にある。これを支えているのが日本の銀行であり、円建て融資や融資枠を設定することで保証になっているのだ。

 日韓関係が悪化すれば、日本の銀行の持つウォン建ておよび韓国向け債券のリスクが高まるため、それらのリスク区分を上げる必要が出てくる。これは、金融庁の指導ひとつで決まるわけで、そうなれば、日本の銀行はこれらの貸し渋りや貸しはがしを行うことになるだろう。

 すると、韓国は外貨不足が深刻化するだけでなく、モノの輸入に必要な信用状を受け取ってもらえないというケースも出てくると思われる。日本としては、このカードをちらつかせるだけでいいのである。

●「日米か、中国か」どちらを選んでも地獄の韓国

 慰安婦問題、スワップ協定およびハイレベル経済協議に加え、高高度防衛ミサイル(THAAD)も日米の交渉のカードになる。米韓は韓国にTHAADを配備することで合意しているが、これに対して中国は強く反発してきた。

 現在、韓国の最大の貿易相手国は中国であり、中国の機嫌を損ねれば韓国経済の悪化は免れない。前述のように、10月には中韓のスワップ協定が切れるわけだが、このとき韓国にTHAADが導入されていれば、中国は同協定を延長することはないどころか、厳しい制裁をかけてくるだろう。

 しかし、韓国がこのまま慰安婦問題を持ち出し続ければ、「日韓合意すら守れないのであれば、THAAD配備も信用できない」とアメリカが判断する可能性もある。そうなると、日韓のスワップ協定も中止となり、韓国の経済崩壊はさらに進むことになるだろう。逆にいえば、韓国は慰安婦問題を引っ込めてTHAAD配備も守る姿勢を見せることで、日韓のスワップ協定を得ることができるわけだ。

 つまり、「慰安婦問題」「スワップ協定およびハイレベル経済協議」「THAAD」の3つはセットになっており、そのため、韓国は「日米を選ぶか、中国を選ぶか」という究極の選択を迫られることになる。しかし、どちらを選んでも、韓国にとっては地獄が待っているのだ。
(文=渡邉哲也/経済評論家)