マイクの向き、ちょっと気になる… - ジャンフランコ・ロージ監督

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 映画『海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜』で、ドキュメンタリー映画として初めてベルリン国際映画祭の金熊賞(グランプリ)を獲得したイタリアのジャンフランコ・ロージ監督が、19日に東京都千代田区のイタリア文化会館で行われた来日記者会見に出席し、映画の内容に絡めて日本の難民対応への驚きを明かしながら、「難民は世界的な問題だ」とヨーロッパを中心に世界の多くの地域で議論を呼んでいる難民問題について語った。

 前作『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』でベネチア国際映画祭の金獅子賞(グランプリ)を獲得したロージ監督の最新作となる本作は、アフリカや中東からの移民、難民たちの玄関口となっているイタリア最南端のランペドゥーサ島を舞台に、島民の日常や、命がけでイタリアを目指す難民の姿を詩情あふれる映像で描き出すドキュメンタリー。昨年の第66回ベルリン国際映画祭で審査委員長を務めた女優のメリル・ストリープが「想像力に富み、現代を生きる私たちに必要な映画」と絶賛していたが、ロージ監督も「彼女は初めて観た瞬間からこの作品が持つ力を信じてくれた。難民問題を扱ったからではなく、この映画的資質に対して賞を贈るんだと言ってくれてうれしかった。彼女がサポートしてくれるのは映画にとってすばらしい贈り物だ」と誇らしげな顔で振り返った。

 今回の映画について「1年ほど前から急にヨーロッパで難民問題がクローズアップされるようになり、ベルリンで上映された時も政治的な関心が寄せられるようになった」と話すロージ監督だが、「自分は政治的な映画を作ったつもりはない。そういった要素はフレームの外にあるもの。あくまでも人間の日々の暮らし、関係性に焦点を当てた作品なんだ」とキッパリ。「ランペドゥーサ島は20年以上前から移民を受け入れている。ランペドゥーサ島は漁師の島だから、海から来たものはすべて受け入れるんだ」という、本作に登場する医師の言葉を引用し、「これは美しいメタファー(隠喩)だと思ったし、未知の者に対する恐怖を感じがちな我々は、その魂から学ぶべきではないだろうか」としみじみ付け加えた。

 「昨年、イタリアには40万人の難民が漂流した。それはイタリアにとっては大変な負担だ」と述べるロージ監督は、日本が5,000人の申請を受けて11人しか難民を認定しなかったという例を聞いて大変に驚いたとのこと。そして「日本くらい豊かな国なら、1万人は受け入れるべきじゃないだろうか」と問いかけ、「でも難民の受け入れに消極的なのは日本に限った話ではなく、ポーランドやハンガリーなどでもそう。これは世界的な問題だ。世界の国々がそれぞれに責任をもってこの悲劇を解決するべきである」と見解を示す。ロージ監督は「わたしの映画が世界の方向性を変えるような力はないかもしれないが、それでも現状を知るきっかけにはなる。だからこそ日本でこの映画を観てもらえるのはとてもうれしいことだ」と今回の映画公開に感謝しつつ、作品に自身の思いを込めていた。

 まるで劇映画のような計算された構図・人物の証言などを多用したロージ監督の作品は、ドキュメンタリー作品でありながら、どこか劇映画を観ているような錯覚に陥る瞬間がある。「自分が撮っているのは現実、実在する人物。もちろん脚本も用意していない。大切な友人は時間だ」と明かすロージ監督。本作について「島に1年半滞在して、映画的言語を使いながら、現実がより強く浮き彫りにされていくような瞬間を求めた。どんなクリエイターであっても(前もって準備しては)撮れないような真実の瞬間を求めたんだ」と話し、「ドキュメンタリーとフィクションの間を区別したくないと思っている。むしろ現実を切り取った中から見えてくるストーリーで『シネマ』を作りたい」と映画製作にかける情熱を語った。(取材・文:壬生智裕)

『海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜』は2月11日よりBunkamuraル・シネマほかにて公開