写真提供:マイナビニュース

写真拡大

ウェアラブル関連の最新製品や技術・ソリューションを展示するイベント「第3回ウェアラブルEXPO」が18日に開幕した。レポート後編では、スマートグラスや「着る」タイプのウェアラブルデバイスについて、最新動向をお伝えしよう。

○進化を続けるエプソン「MOVERIO」

エプソンの「MOVERIO(モベリオ)」は、透過型ディスプレイに大画面を映し出せるスマートグラスと、ポケットタイプのコントローラーをセットにした、映像体験型のウェアラブルデバイスだ。エプソンはスマートグラス製品の先駆者として、MOVERIOシリーズに長く取り組むメーカー。コンシューマー向けとしては"第3世代"にあたる「BT-300」を発売しており、精彩感の高い有機ELディスプレイの映像が話題を呼んでいる。

MOVERIOシリーズは近年、ビジネス用途への展開にも力を入れている。今年の2月には、有機ELディスプレイ搭載のスリムな「BT-350」、堅牢性を高めた「BT-2200」が新たに発売される。

BT-350をコンシューマー機と比べると、映像や機能のパフォーマンスはほぼ変えずに、装着性能の柔軟度を高めている。さらに、不特定多数のユーザーが使うケースを想定して、リムの付け根が可動するギミックを追加。ユーザーの顔の幅に広く対応できるようにしたほか、「鼻あて」の部分も可動式にしている。視界の明るさを調節できるシェードも、着脱式から回転固定式に変えて、ハンドリングの手間を軽減している。

BT-2200は、ディスプレイデバイスに液晶を搭載。本体を装着したまま、ディスプレイ部分だけを180度回転させて跳ね上げ、肉眼視と瞬時にスイッチできるようギミックを改善している。本体は、ゴムバンドを使えばヘルメットの上にも装着可能。IP54相当の防滴・防塵仕様なので、雨天での作業にも対応できる。

○手持ちの眼鏡をウェアラブルデバイスに

一般的な眼鏡にカメラや直視型のディスプレイを載せるスマートグラス系デバイスは、最近多くのスタートアップから登場している。今後も眼鏡に装着するスマートデバイスが増えてくれば、より快適に使うためのマウント方法や装着スタイルにも関心が向くだろう。

「めがねのまち」として知られる福井・鯖江市に設立したボストンクラブは、眼鏡フレームとウェアラブルデバイスをつなぐ新たな機能拡張プラットフォーム「neoplug(ネオプラグ)」を出展している。

neoplugは、眼鏡に取り付けられるスライド着脱式のマウンターだ。ブースでは、クリップや磁石を使ってシンプルにウェアラブルデバイスに着脱する方式を紹介していた。将来的には、neoplugを基盤として様々な業種がウェアラブル製品の開発に乗り出せるよう、プラットフォームをつくることを狙っている。また現在、鯖江市のクラウドファンディングサービス「FAAVOさばえ」にて、neoplugの支援募集をスタートしている。

会場では、neoplugに装着できる様々なウェアラブルデバイスも紹介されていた。その一例はアメリカのVufineが開発を進める片眼タイプのディスプレイ「VUFINE」だ。

neoplugと磁石を使って装着するデバイスは、片眼でのぞく960×540ドットのディスプレイにスマホで撮影した動画・静止画、ゲームの映像などを映し出すことができる。目から約30cmの距離に4インチの画面が浮いて見えるという。HDMI経由で720pの映像信号入力にも対応しているので、BDプレーヤーやゲームコンソールもつなげる。こちらも現在、Kickstarterで支援募集を実施中だ。

○"着る"ウェアラブル

会場を歩いていると、リストバンドや眼鏡タイプのウェアラブルデバイスに続いて、今後はデザインがジャケットやシャツに近い"着る"タイプのウェアラブルデバイスが賑わうような雰囲気を感じた。ここからは、布や繊維素材の上に電子回路を成形するためのユニークなソリューションを紹介しよう。

エーアイシルクは、2016年に宮城県で起ち上がったスタートアップだ。開発した「フレキシブルシルク電極」は、天然由来のシルク(絹)の高い吸水性を活かし、導電性高分子を含む特殊なインク「PEDOT」を染みこませることで、電極を持つ繊維素材をつくり出すというものだ。

従来のように電解質ペーストや金属線を使って電極をつくり出すパターンと異なり、肌触りが良く炎症の発生リスクが低く抑えられる点などが特長であるという。また複雑な形状に加工がしやすく、染色の技法で製造するため比較的小規模な設備での大量生産にも向く。インク素材は洗濯しても簡単に落ちることがなく、スタッフによれば「洗濯機で30回洗っても落ちなかった。先にベースのシルクが痛んでしまったほど高い耐久性を備えている」という。目下の課題は、インクの原色である黒以外の色が作り出せないことか。

同社は、様々な素材に特殊インクを塗布するプリンターの開発にも成功。展示会場では実機によるデモンストレーションも公開していた。3月には量産体制が整うという。今後は国内・海外でのパートナー獲得に向けて本腰を入れて乗り出す構えだ。

接着材料のスペシャリストであるセメダインも、着るタイプのウェアラブルデバイスと相性のよい電導性を持つ接着剤の開発を進めている。昨年のウェアラブルEXPOでも脚光を浴びた「SX-ECA48/ECA」シリーズは、弾性接着剤「スーパーX」の高い耐久性を持ちながら、布やプラスチックなど様々なベースに付着して電気導電性を持たせた接着剤だ。

今回のウェアラブルEXPOでは、デジタルハリウッドとファッションテックデザイナーのOLGAさんがコラボレートし発案した「着るセメダイン」のプロトタイプが脚光を浴びていた。

その一つである「ヒーター・パーカー」は、電導性セメダインの回路パターンを普通のパーカーの裏地にアイロンプリントで乗せたパーカーだ。一般的なスマホ用のUSBポータブルバッテリーを使って電気を流すと、セメダインの回路がじんわりと温かくなって身体を温めてくれる。OLGAさんによれば、だいたい26度から30度ぐらいの温度に暖めることができるという。

樹脂の箱にセメダインの電極をプリントしたものは、同じくOLGAさんがデザインした「夢のランチボックス」のプロトタイプ。こちらも通電させると回路部分が熱を持って、食事や飲み物を温めることができるというユニークなアイデアだ。ブースに出展されたプロトタイプも、いつか現実のものになる日が来ることを楽しみにしたい。

(山本敦)