灯篭流しと言えば、亡くなった家族を弔うために、紙と木で灯籠や船を作り、川や海に流す日本の各地で行われている慣習だ。これと似たような慣習が北朝鮮にもあると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、北朝鮮の人々の間では最近、新年に祈りを捧げれば願いが叶うということが当たり前のように信じられるようになっている。そこで登場したのが灯篭流しに似た行事だ。

新年を迎え、清津(チョンジン)市を流れる寿城川(スソンチョン)の河原には、今までにないほど多くの人が訪れ、小さな紙の船に願いを書いて、川に流した。

ここまでならささやかな行事と言えるが、その様相は年々派手になっている。幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)は、分厚い紙で作った1メートルはある大きな船を流している。それも、途中で沈まないようにラッカーを塗って防水加工するなど本格的だ。彼らは、船の制作に数十万北朝鮮ウォン(10万北朝鮮ウォンは約1200円)も投資する。ここまで盛大になれば、灯篭流しというより、長崎で行われる精霊流し(しょうろうながし)に近いと言えよう。

咸興(ハムン)市でも、灯篭流しが盛大に行われた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、1月1日の午前0時、市内を流れる成川江(ソンチョンガン)には、明かりを灯した数多くの紙の船が一斉に浮かべられ、非常に美しい光景だったとのことだ。

元旦には、故金日成主席と故金正日総書記の銅像に花束を捧げて、新年の挨拶をする行事に参加しなければならないため、人々は夜中に灯篭流しを行うそうだ。

船には祈りを捧げる人の数だけロウソクを灯すが、途中で消えれば不吉だと言われているため、より大きく、より太く、より質のいいロウソクを求めようと競争になるほどだという。

金日成氏と金正日氏に銅像に捧げる1000北朝鮮ウォン(約12円)の花ですら「もったいない」とこぼす人々が、市場で売られている太いロウソクを数万北朝鮮ウォンで買い求めているのだ。

情報筋によると、灯篭流しに似た慣習は全国に広がっている。保安署(警察署)は「紙の船を浮かべて祈る抗議は迷信行為」だとして、取り締まりに乗り出したものの、河原にやってきた人があまりにも多くて、何もできなかったと情報筋は伝えている。

取り締まりはあくまでも表向きの姿で、保安員(警察官)も人知れず川に船を浮かべて手を合わせているとのことだ。

国際社会の対北朝鮮制裁網が強化され、先行きが不安な今、このような行事は年々、規模が大きくなっていくことが予想される。