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光と影を駆使して絵作りしてきたフォトグラファーにとって、目に見えないサウンドは未知の領域。リニアPCMレコーダー「TASCAM DR-701D」をメイン機材に使い、一眼ムービー撮影時に失敗しない、サウンド収録のノウハウを見ていこう。
解説:VideographersOnline(小島真也・安友康博)

TASCAM DR-701D


一眼ムービーサウンド収録の基本セッティング

●クリップオンマイク
カメラのホットシューに付けるタイプのマイク。カメラ本体内蔵マイクより、タッチノイズ、風切り音が入りにくい。S/N比をさらに向上したいならマイクをカメラから独立させる。

●サウンドレコーダー
「TASCAM DR-701D」 4チャンネルリニアPCMレコーダー。高音質での録音が可能。カメラとHDMI接続することで、カメラ操作連動で録音のスタート/ストップ、音声データへのタイムコード記録ができる。

●モニターヘッドフォン
録音状態のチェックにヘッドフォンは必須。低音強調など音質に色づけがされた通常のタイプではなく、モニター用ヘッドフォンがお薦め。

*DR-701DのHDMI同期はカメラ機種により機能制限あり。左写真のソニーα7S IIは「HDMIクロック同期」「スタート/ストップ同期」「HDMIタイムコード同期」全てに対応する。

一眼ムービーの普及によって、フォトグラファーも動画の仕事を依頼されるケースが増えてきた。そこでハードルとなるのが“サウンド”の問題。そもそもフォトグラファーに依頼される動画は、従来のスチル撮影からの延長の仕事も多く、撮影クルーも小規模だ。映画や放送の現場のように“音声さん”が居ないため、フォトグラファー自身が音声を担当するワンマンオペレーションが基本となる。明日依頼されるかもしれないインタビューや講演、ライブなどのサウンド必須の動画仕事に、本講座を転ばぬ先の杖としてもらえると嬉しい。

サウンドは思いのほか、作品の品質を左右する。劇場サラウンドのように音の力でさらに迫力満点になる場合もあれば、その逆に聴き難い話し声だったり、聴かせたいポイントにノイズが混入していたりでは、作品を台無しにしてしまう。

一眼カメラの内蔵マイクロフォン(以下マイク)を使っての失敗は、フォーカスやズーミングといったカメラ操作時の「タッチノイズ」や「吹かれノイズ」が主な原因だ。音の入口が数個の穴という内蔵マイクは少しの風でも風切り音を拾ってしまう。

それではと外付けのクリップオン型マイクを用いるが、実はこれも安心できない。カメラからの振動を緩和するサスペンション機能付きも多いのだが、慎重にフォーカスやズーミングする必要がある。

また、このマイクはステレオミニプラグでカメラ入力をするのだが、ここにも落とし穴が…。レンズ操作時に左手首がこのプラグに触れると「ザザッ」というノイズが発生する。インタビュー中の重要な話題に差し掛かったのでズームインする。その途端にノイズが入ってしまうとか…。手っ取り早く解決するには、スタンドにマイクを取り付けてカメラから離してしまうのが一番だろう。

そもそも絵作りを専門とする一眼カメラのマイクプリアンプ(以下アンプ)は決して高性能ではない。試しにクリップオン型マイクを使い、一眼ムービーカメラとリニアPCMレコーダーTASCAM DR-701D(以下DR-701D)で録り比べてみると、そのクオリティの差に驚く。

カメラアンプとDR-701Dアンプの聴き比べ

利点はアンプだけではない。DR-701Dは、カメラからのHDMI信号をトリガーとして映像収録とサウンド収録が同期する。つまりカメラが収録スタートすれば、DR-701Dもスタートするわけで、録音ボタンの押し忘れを防げる。ワンマンオペレーターには助かる機能だ。またXLR(通称キャノン)端子を持っている。XLR端子はケーブルを長く引き回してもノイズが乗りにくい仕組みになっていて、業務用として広く使われている。それとは別に、カメラ入出力と外部入力用のステレオミニプラグジャックを用意している。これはXLR端子を持たない一眼ムービーカメラには嬉しい装備だ。

少しでも高音質に、そして失敗なく収録したいならば、DR-701Dのような外部レコーダーの導入も一考すべきだろう。

ステレオミニプラグとXLR端子の違い

一般のマイクのステレオミニプラグは構造上、接点の経年劣化が激しく、ゆるみやすく抜けやすい。失敗の許されない仕事で使用するには不安要素も多い。一方、業務用標準のXLR(通称:キャノン)端子は、接続部が堅牢な上、カチッとロックされ脱落しない。音声ケーブルは長く引き回すとノイズが乗りやすいため、XLR端子はバランス方式というノイズキャンセル機能を採用している。ミニプラグなどはノイズキャンセルできないため数メートルまでのものが多い。

DR-701Dの側面。ステレオミニプラグ用入力ジャックの他、XLR入力端子を備える。逆側面にももうひとつXLR端子があるので計4チャンネルの入力が可能。

収録に話を戻そう。スタンドに取り付けたマイクは見切れるギリギリまで、音源(インタビュー相手など)に近づけること。直にマイクへ届く音を増やし、相対的に周囲に反射した間接音や現場音を減らすことで、S/N比(信号と雑音の比率)も良くなる。話し声に限って言えば、マイクは下方からよりも、上方から差し入れた方が自然な音声が録れる。

では、その時のレベル(音の大きさ)の最適値はどう判断すれば良いのか? 視覚的にチェックするには、画像のヒストグラムに相当する“ピークメーター”を使う。このピークレベルが決まったら、次は自分の耳でチェックするため、モニターヘッドフォンのボリュームを聴きやすいレベルに調整する。収録中のノイズの有無確認にはヘッドフォンは必須である。

収録フォーマットはWAV・48kHz・24bit

DR-701Dは記録音声のフォーマットとしてWAVとBWFが選択でき、それぞれビット深度:16/24bit、サンプリングレート:44.1k/48k/96k/192kHzの設定が可能だ。WAVは汎用性が高い音声フォーマット、BWFはその拡張版。納品先の視聴環境がWebやPC、DVDビデオの場合、その収録設定は、WAV・48kHz・24bitがお勧め。


192kHz収録の場合、録音トラックは最大2トラックとなる。


〈サンプリングレート目安〉
44.1kHz:音楽CD、MP3プレーヤー。
48kHz:DVDやケーブルTV。
96〜192kHz:ブルーレイやハリウッド映画。

〈ビット深度目安〉
16bit:録って出し(加工なし)ならば充分。
24bit:収録後の調整や加工をするならこちらを推奨。

音のレベルの基準は-12dB

ピークメーターは「-12dB(デシベル)」が目安となっている場合が多く、大きめの声が-12dB付近になるよう入力レベルを調整する。DR-701Dの表示では右側の破線が-12dB、その左の▼がついた破線が-20dB。ライブ、講演など音響ミキサーからライン入力(XLRケーブルで結線)する場合、収録前に音声基準信号「1kHz」を音響スタッフから出してもらい、-20dBになるようレベル調整する。左がDR-701Dのピークメーター、右がニコンD800のピークメーター。

余談だが収録後のサウンド編集時に適正を出すには“アンプ内蔵モニタースピーカー”があると良い。納品先の視聴環境が展示会やホールなど広い空間の場合、音質の良否や聴きやすさの確認には、ヘッドフォンよりもスピーカーをお勧めする。また、ヘッドフォンやスピーカーは気持ちよく聴けるよう味付けされたものがあるが、適正を出すには素直な音(忠実な音)の出るものが良い。高級である必要はなく長年使い慣れているものでも良いが、それで確認した場合は別の環境(他のPCやテレビ、ヘッドフォン、スピーカー等)でもチェックする必要がある。

VideographersOnline ビデオグラファーズ・オンライン

2011年に安友康博と小島真也で結成したビデオグラファー・ユニット。豊富な写真家のキャリアを背景に、主にWebコンテンツのリクエストに動画と写真の両面から応え、現在も進化中。
http://www.thevideographersonline.com

関連情報

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講師:小島真也(フォトグラファー)/安友康博(フォトグラファー)

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