記者会見で謝罪するDeNA・守安功社長ら(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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 携帯ソーシャルゲーム大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は2016年12月7日、医療キュレーションサービス「WELQ」の記事の盗用・無断書き換えなどに端を発したキュレーションプラットフォーム事業のトラブルに関する記者会見を開き、守安功社長らが謝罪した。会見は3時間に及んだ。

 キュレーションとはインターネット上の情報を、ある特定のテーマや切り口で読みやすくまとめて公開するウェブサイトのことだ。

 DeNAは14年12月にサービスを開始し、以後サービスを拡充してWELQを含めた10の媒体を運営していた。

 DeNAのキュレーションサイトについては、医療情報を扱うWELQで記事内容の誤りや著作権侵害の指摘が続出。編集方針にも疑問の声が上がったことから、12月1日までに10媒体のうち9媒体の公開を中止。12月7日には主力だったファッションサイト「MERY」の記事も非公開とした。

 事態を収拾するため、守安社長は自らの月額報酬を6カ月にわたって3割削減。外部の専門家らで構成する第三者委員会の設立も決めた。

 会見には創業者の南場智子会長も出席。「(守安社長は)法令順守を軽視していたわけではないが、現場確認や管理が不十分だった」と反省の弁を述べた。

 テクノロジー&ビジネス情報のメディアサイト「CNET Japan」は、16年12月7日付記事で南場氏の発言をこう報じた。

「南場氏は、夫の闘病生活にあたりインターネット上のあらゆる医療情報を徹底的に調べたという。『がんに効くキノコの話を見つけたとき、信用できないと判断し、論文を調べたり、専門家のレクチャーを受けたりしていた。また、同じ病気の患者さんのブログは毎日チェックしていた』という。南場氏は、『WELQについてはまったく認識しておらず、報道されてからこの件を知った。WELQ内でがんという言葉を検索してみて、いつから医療情報を扱うになったのかと愕然とした』と述べた」

 住まいとインテリア、ファッションに特化したはずのキュレーション事業が医療情報を扱っていたことに、南場氏が心底驚いた様子が伝わってくる。

 キュレーション事業の責任者である村田マリ執行役員は、会見場に姿を見せなかった。問題が発覚したあとも、居住するシンガポールから日本に帰国していないという。

●DeNAがキュレーションサービス2社を50億円で買収

 14年10月1日、DeNAはインターネット関連ベンチャー2社を50億円で買収したと発表した。2社は特定のテーマに沿ってネット上の記事などを抽出して利用者に提供するキュレーションサービスを手掛けていた。

 キュレーションサービスは記事を自分で探す時間がない人や特定分野の情報だけを知りたい人に利用が広がっており、DeNAは既存事業が伸び悩むなか、新たな事業に取り組む目的で買収した。

 このとき買収したのは、iemo(イエモ)とペロリだ。13年12月の設立のiemoは、住まい・インテリア分野に特化したサイト「iemo」を、12年8月設立のペロリはMERYを運営していた。

 2社合計で社員数は20人だったにもかかわらず、買収金額は総額50億円。DeNAにとって国内で初となる大型の買収案件だった。

 守安社長は新しいキュレーションサービスを順次立ち上げ、「2年後にキュレーション事業全体で利用者を5000万人まで増やす。利用者を電子商取引などに引き込んで事業を広げていく」と抱負を語っていた。

 16年4〜9月期はキュレーション事業の月間利用者数は1億6000万人を超えた。売上高はおよそ25億円で、その半分をファッションのMERYが占める。16年9月は単月黒字を達成、16年4〜12月期の営業損益は800万円の黒字になる見通しだった。18年3月期中に10億円の利益を創出するとしていた。

 だが、10媒体をすべて閉鎖。キュレーション事業は、再開のメドが立っていない。それどころか、キュレーションサイトをめぐる問題の余波が広がっている。

「週刊文春」(文藝春秋/1月5日・12日号)は、「『50億円損させた女』村田マリ DeNA社長とキスの過去」と報じた。酒席で一緒になった守安社長に村田氏はiemoのすごさを売り込み、その直後にiemoの買収が決まったという内容だ。

 多くのベンチャー起業家は、新しいアイデアのネットビジネスを立ち上げ、ネット関連の大手や同業者に売却してリターンを得るビジネスモデルを描く。村田氏もその典型例だ。早稲田大学文学部を卒業し、サイバーエージェントに4年勤めた後、27歳でウェブ制作会社を設立。ソーシャルゲーム事業に転換させ12年にgumiへ売却した。

 その後、シンガポールに移住して、日本でのビジネスを続けた。13年12月にiemoを設立したが、1年もたたない14年10月にDeNAに売却し、DeNAの執行役員に就任したのである。ベンチャー起業家が、「ホップ・ステップ・ジャンプ」の三段跳びの跳躍を見せた格好だ。

●草創期から支えた経営チームが解体へ

 守安社長は12月7日の記者会見で「成長を優先し、管理や運営の体制の構築ができていなかった」と述べた。その場では辞任を否定したが、業界では「引責辞任は避けられない」という見方が広がっている。

 キュレーション事業の主要サイトを再開できなければ、50億円をドブに捨てたことになる。買収の経緯も「週刊文春」が指摘したように不透明だ。南場氏が愕然としたという、WELQをなぜ立ち上げたのかもはっきりしない。

 第三者委員会の調査報告書の提出を受けて、守安社長は辞任を表明するのではないかと見る向きが多い。

 南場氏は1999年、経営コンサルティング会社・マッキンゼーから独立、DeNAを設立した。草創期のDeNAを両輪となって支えた人物が春田真氏と守安氏だ。

 春田氏は京都大学法学部出身。00年2月、住友銀行(現・三井住友銀行)を退職し、DeNAに転職。財務管理部門を担当。11年6月、南場氏が病気療養中の夫を看病するため社長を辞任した際、DeNAの会長に就いた。

 11年12月、プロ野球球団、横浜DeNAベイスターズの誕生と同時に春田氏はオーナーに就任。南場氏が現役復帰したのに伴い、15年6月、春田氏はDeNAの会長と球団オーナーを退いた。

 DeNAを去った春田氏は16年2月、人工知能(AI)を使ったコンサルティング事業を行うベンチャー、エクサインテリジェンスを設立した。

 一方、守安氏は東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修了のエンジニア。日本オラクルを経て1999年、設立したばかりのDeNAに入社。屋台骨となるモバゲーを事業開始当時から担当してきた。11年、南場氏が経営の第一線から退いたのに伴い社長に就いた。

 それまでは社長の南場氏、管理部門の春田氏、モバゲー部門の守安氏の3人の経営チームがDeNAの経営を牽引してきた。

 南場氏が経営の第一線から退いて以降は、守安氏が南場氏の後継者として経営を引っ張ってきた。ところが、キュレーション事業の買収で大きく躓いた。

 守安氏が引責辞任する事態となれば、南場氏が社長に復帰して信頼回復に努めることになると考えられる。
(文=編集部)