フランス国内各地で観客に多彩な日本映画が届けられる映画祭

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 仏パリで開催中の第11回日本映画祭キノタヨの授賞式が、現地時間の1月16日にあり、最高賞にあたるソレイユ・ドール(金の太陽)賞を想田和弘の「牡蠣工場」と、濱口竜介の「ハッピーアワー」が分け合った。

 本映画祭の特徴は、最高賞が観客の投票で決められる点にある。つまり観客賞とも言えるわけだが、統計の結果によれば、両作とも20満点中18点を超える高得点を記録し、「牡蠣工場」はアンケートを出した全員が「好きだった」と回答。また「ハッピーアワー」は1人を除いた全員が「好きだった」と回答したそうで、2作が同時受賞することになったという。

 壇上に上がった想田監督は、記念撮影でうれしそうにピースのポーズを決め、「145分のドキュメンタリーで、ナレーションも音楽もないのに、観客の方が好いてくれた。これは最高の栄誉だと思います」と満面の笑顔で語った。また監督のパートナーでもある柏木規与子プロデューサーは、「題材が(フランスでも人気のある)牡蠣だったのが良かったかなと思いました」と語り、笑いを誘った。

 「ハッピーアワー」の高田聡プロデューサーも、「観客から支持される賞を頂くことができてとてもうれしいです。まずは濱口監督と、最後までカメラの前に立ってくれた出演者のみなさんにお伝えしたい」と語った。また今回パリに来ることができなかった濱口監督は映画.comのためにコメントを寄せてくれた。「ソレイユドール賞受賞、とても光栄なことです。目の肥えたパリの観客の投票で選ばれる賞、ということで素直に誇らしく思います。これをきっかけにまた多くの観客に『ハッピーアワー』が出会いますよう。メルシーボークー!」

 審査員が選ぶ審査員賞には、富田克也の「バンコクナイツ」が選ばれた。審査員を代表してスピーチをした作家、ジャーナリストのジュリアン・ベクールは、「今年のセレクションはとてもバラエティに富み、強力だったと思う。感情面でも暴力的でありながらも可笑しかったり、メランコリックだったりといろいろだった。そのなかでも「バンコクナイツ」は、いま言ったようなさまざまなクオリティを併せ持っていると同時に、とてもオリジナルなやり方で観客を旅に誘ってくれる。タイの売春に関する慎みのある視点と感情を揺さぶるキャラクターたち、そして異なる文化の背景のなかで日本人の姿を浮きあがらせ、違う視点から日本社会を描いている点に惹かれた」と評価した。

 授賞式後、審査員と話したという富田監督は、「新しい映画の息吹を感じたと言われました。ずいぶん深い理解のもとに観てくれていることがわかって、とてもうれしかったです」と語った。

 また審査員賞とはべつの顔ぶれで構成されたメンバーが選んだ映像賞は、「俳優 亀岡拓次」に送られた。こちらには黒沢清の「ダゲレオタイプの女」で撮影監督を務めたアレクシ・カビルシーヌと、諏訪敦彦がフランスで撮影した次回作で撮影監督を務めたトム・アラリがいた。アラリは授賞の理由を、「映像は演出術など他の要素とも繋がっており、映像だけを切り離して考えることはできない。本作は、派手さはないものの映画制作の現場を題材にしたユーモラスな場面や幻想的な場面などが映像により的確に表現されているところに力を感じた」と語った。

 授賞式は終わったものの、各作品の上映は21日までパリでおこなわれ、その後リヨン、サン・マロ、ストラスブールなどの地方都市に巡回し、2月16日に幕を閉じる。パリのみならず、フランス国内各地で観客に多彩な日本映画が届けられる、絶好の機会であることは間違いない。(佐藤久理子)