それからスペイン(エスパニョール)には一度は挑戦したい、ボロボロになってもいいから肌で感じておきたいと思っていました。それから、再びマリノスに戻れた。状況も、年齢も、いろいろ異なるけれど、今回はこれまでにない選択ですね。やっぱり、今までとは違う。
 マリノスでは、なんだろう……単純なものがそうでなくなった時、今まで普通であったことが普通でなくなった時、純粋な想いでサッカーがしたいなって。そう思っていた矢先、名波さんが声をかけてくれたタイミングは大きかったです。

 あとはマリノスでもそうですけど、自分も年齢的に上のほうになってきて、一緒にプレーしていた多くの方が指導者になられています。マリノスでいえば、井原さん、フミさん(三浦文丈)、そういう方のもとで一回やってみたかった。

 B級(指導者ライセンス)を取得したんですけど、絶対に勉強にもなると思います。組織のなかで、名波さんがどういう選手にどこまでのミーティングをして、どこまで言って、どのようにメンタルをケアして、マネジメントをしているのかは、知りたいところです。
 
 もちろん、それはあくまで副次的なもの。サッカーをするために、ここに来た。すべてはゼロから。スタートラインは全員一緒だと、名波さんからも言われたし、自分もそうだと覚悟しています。競争してレギュラーポジションを獲り、シーズンをとおしてプレーできるように、身体を作っていきたいです。
 
 イメージできているのは、良いプレーをして、FKを決めて、川又やみんなに良いパスを出して、やはり、そういったピッチ上のことのみです。新参者だけれど何かを落とし込み、このクラブが良い方向に進めるように、プレーの面で時にうるさく口を出すこともあるかもしれませんが。
 
――今季の具体的な目標は?
 
 イメージとしては、ジュビロのために、総合的になにができるかを、いつも全体を見渡して考えたい。例えば、大事にしている自主練の時間に、若い選手を捕まえて、こうしたほうがいいのでは? とパスを出してみたり、一緒に練習したり。ベテランの選手ともコミュニケーションをとり、例えば今、32、33歳の選手でも、4年後の36歳ぐらいまでジュビロに貢献できるようになれることを見出せるとも思います。

 そういったなかで、自分が教わることもたくさんあります。そのすべての時間が、僕には貴重です。もちろんプロだから、まずグラウンドで良いプレーをすることが先決。それでも何兎も追える状況は、僕にとっては遣り甲斐に感じることで、だからこそここに来ることを選びました。
 
取材・構成:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)