窪塚洋介、不遇の時代を経て大きなチャンスをつかんだ!

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窪塚洋介の役者人生、新たなステージが幕を開ける。舞台はハリウッド。巨匠マーティン・スコセッシ監督が長年、映画化を熱望してきた『沈黙-サイレンス-』(1月21日公開)で、重要人物・キチジロー役に抜擢されたのだ。

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窪塚は「不遇の時代もあったけれど、これですべてが報われた気がする」と噛みしめるが、なんと1回目のオーディションは「ガムを噛んで行って、落とされた」のだとか。目が飛び出るような告白からスタートしたインタビューで、アメリカンドリームを手にした軌跡に迫る!

遠藤周作の小説を映画化した本作。キリシタン弾圧下の長崎を舞台に、師の棄教の真実を探るために日本を訪れた若き司祭が直面する葛藤を、重厚な人物描写とともに描く。窪塚が演じるのは、ユダになぞらえられる裏切り者のキチジロー。最初にオーディションに呼ばれたのは「7年くらい前」と話す。

「1回目のオーディションは、ガムを噛んで行ったことで落とされているんです。そこは控え室だと言われて行ったんですが、部屋に入った瞬間、キャスティング・ディレクターに『マーティンはあんたみたいな無礼なヤツ、大嫌いだからね!』と超キレられて。他の撮影が佳境で、台本も覚えていなかったので、『紙を持ってやるのか!』と。最悪の空気のなかでやったもんで、場の空気にのまれてしまった」。

力をまったく発揮できず、「残尿感とともに帰った」そう。「『もう結構です』と言われて、『スコセッシの船は出ちゃうんだなぁ』と夕暮れに泣いていた」と失意を明かすが、実はその後も難役であるキチジローを演じる俳優が見つからず、2年経ってもスコセッシの船は出なかった。そこで再び、窪塚がオーディションに呼ばれたのだ。

運良く、前述のキャスティング・ディレクターは窪塚の“ガム事件”を覚えておらず、チャンス到来。本当に“持ってる人”だと感じるが、才能があるからこそ、運を引き寄せているのだろう。「そのオーディションでは、原作のキチジロー像を逸脱して、いろいろな引き出しを見せたんです。そのディレクターは『あんた面白い!いいねぇ!』とノッてきちゃって。好感触でした」。

その後いよいよ、スコセッシ監督とご対面。「『会いたかったよ』と言われて、俺の方が会いたかった!と思いながら。マーティンが相手役になって、芝居をすることになったんです」と最終オーディションの相手役は、スコセッシ監督だったそう。その時の印象に、スコセッシ監督が役者の演技を引き出す秘訣がある。

「温かなオーラで包んでくれて、ものすごく乗せてくれる。『こんなに落ち着いて芝居ができるのか』というくらい、リラックスさせてくれて、肌で懐の深さを感じた。ワンシーン終わるごとに『アメイジング!』とベタ誉めしてくれる」とまさに、役者の力を発揮させるプロ。オーディションは、「(撮影地の)台湾で待っている」との合格の言葉で締めくくられた。

振り返れば、日本アカデミー賞で新人俳優賞と最優秀主演男優賞を史上最年少で受賞した『GO』(01)をはじめ、彼の圧倒的なオーラと爆発的な演技力に驚いたもの。しかし、まっすぐ過ぎる性格のためか、周囲と「合わない」と感じることも。「仕事も少なく、不遇の時代もあった」と激白する。「いつも『これが最後の仕事だ』と思って気合いを入れてやるけれど、世の中と自分自身の温度がしっくりこないというジレンマがずっとあった。でもこの一発で、すべてが報われた気がしている」と充実感たっぷりだ。

不遇の時代を経て、夢のスコセッシ組に参加した窪塚。撮影現場では、その喜びと実力をいかんなく発揮した。「俺なりのキチジローを作った。一番大事にしたのは“イノセント”。子どものような無邪気さのなかにある、弱さや強さを表現した」と核をしっかりと掴んで演じ、それは監督を「これこそがキチジローだ」と感激させた。ますます窪塚への信頼度は強固なものとなり、控え室となるトレーラーハウスは当初、アンドリュー・ガーフィールドとアダム・ドライバーのものしかなかったが、撮影中に窪塚のものも増設されたそう。監督が「キチジローがOKと言うなら、今のシーンはOKだ」と言い出すこともあり、これには周囲もびっくり。

撮影が終わった時には、「マーティンから『君がいてくれて本当に助かった。初日から頼りにしていた』と声をかけられた」と言い、「泣きそうになっちゃった。本当に信頼してくれていたし、俺の演技をすごく楽しんでくれていた。今でも夢のようで、思い出すと飯2杯くらい食える」と照れ笑いをのぞかせる窪塚は、心からうれしそうだ。

窪塚の俳優力は、スコセッシをも感動させるほどのものだった。神とは?信じるとは?人間の弱さとはーー?力強く訴えかけるキチジローに、誰もがきっと心を震わせるはず。「すべてがここに到るまでの伏線だった気がする」という窪塚洋介の役者人生“第二幕”。衝撃の幕開けを、ぜひともスクリーンで目撃してほしい。【取材・文/成田おり枝】