photo by Noofa2401 via wikimedia commons(CC BY-SA 4.0)

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 シリアの内戦はロシアの軍事介入によって、アサド政府軍は勢力を盛り返してイスラム国(IS)が後退を強いられている。イスラム国の勢いが衰えているのに対して、アルカイダはアフリカで勢力を伸ばしている。

 アルカイダは2011年のニューヨーク同時多発テロの主犯者として世界から一躍注目を集めるようになった。一方の、イスラム国はイラクのアルカイダ系の勢力としてシリア内戦で戦い発展したが、アルカイダに比べ過激すぎるとしてアルカイダから批難を受けて分離した。アルカイダもイスラム国もスンニ派である。

 この2-3年、シリア内戦で、政府軍と激しく攻防を繰り広げるイスラム国に世界から注目が集まった。また、リーダーのバグダディはカリフを称してイスラム国家の建設を目指すと謳って、反体制派として戦う彼らの姿を世界に宣伝した。それに惹かれて世界からイスラム国の戦闘員になりたいとして多くの若者がシリアに向かった。しかし、イスラム国が世界の注目を集めている間も、アルカイダは着々と布石を築いて行った。特に、イエメンとアフリカで、その勢力を拡大させている。

◆アフリカを支配するアルカイダ

 アルカイダがアフリカで勢力を伸ばしている国はリビア、マリ、ナイジェリア、ソマリア、ブルキナファソである。特に、アフリカの中央部の砂漠化が深刻なサヘル地方(モーリタニア、マリ、チャド、ニジェール、ブルキナファソ)ではアルカイダ系組織が根強い勢力を張っている。

 それはマグレブ地方のアルカイダと地元で勢力を張っているアルカイダ系のアル・ムラービトゥーンによって支配され、彼らは部族の長者と絆を築いて政治的にも影響力を伸ばした。それがイスラム国との違いの一つで、イスラム国が残虐な行動をして勢力拡大に努めるのとは対照的に、アルカイダは地元の指導者らとも関係を築いて伸展している。(参照「El Tiempo」)

 例えば、ソマリアでは2012年にアルカイダに合流したアル・シャバブがイスラム国の系列組織を駆逐して勢力を拡大している。同様にサヘル地方でも、アルカイダはイスラム国の系列組織を打倒し最も強力なジハード組織になっている。ナイジェリアでは残虐な行動に走るとして悪名高い過激派組織ボコハラムが存在しているが、彼らはイスラム国と名目的な繋がりしかない。

 しかし、サヘル地方でアルカイダが勢力を伸ばしているのも元を正せばリビアで独裁者カダフィが倒壊されたのが要因である。彼はアフリカの発展を望み近隣諸国を自らの意向に添わすために彼らに資金支援などをしていたのである。目指すはアフリカの統一である。また、原油の輸出で経済的にも豊かで、近隣諸国からの出稼ぎ者をリビアで雇用していた。カダフィは<「アフリカはイラクやシリアよりもあらゆる面で私の方が近い」>と良く口にしていたという。(参照「El Pais」)

◆カダフィ打倒がアルカイダ支配を生んだ

 元々、カダフィは1990年代までテロ組織を匿っていたとされ、その制裁として米国から空爆攻撃を受けた。それ以後、欧米寄りの外交路線に変更してアフリカに向けて勢力を伸展させる方向に動いた。しかし、独裁国によくあることで、反体制派はアラブの春の動きに便乗してカダフィ打倒を掲げた。またカダフィが欧米による支配を排除してアフリカ統一に動こうとしていることに欧米はそれを都合の良いものではないと見て、NATOは2011年にベンガシで生まれた国民評議会を支援してカダフィ打倒に動いて、40年続いたカダフィ政権に終止符が打たれるのである。

 カダフィが打倒されて、リビアは期待に反して無政府状態になってしまった。その空白を利用しサヘル地方に勢力を張ったのがアルカイダなのである。カダフィは一般のメディアでは悪者に仕立てられているが、彼の治世ではリビアは教育面でもアフリカで最も高い水準にまだ達していたという面もある。そして、近隣諸国では救世主的な存在であった。

 アルカイダが最も強力な勢力に発展しているのがイエメンである。1年前に比べ、<4倍の4000人の戦闘員を数えるまでに拡大>しているという。イエメンはハディ政権とフーシ派の戦いの間隙を縫ってアルカイダが成長している。(参照:「El Diario」)

 同様にアフガニスタンのタリバンとはアルカイダは現在も関係を維持している。

 一方のISはアフリカでは国内が混とんとしているリビアで彼らの存在が目立つ程度である。そして、アフガニスタンにも勢力を伸ばす行動に出たが、その成果は現れていない。

 ISは後退しているが、アルカイダは勢力を伸ばしている。日本も何れテロリスとの攻撃を受けるようになる危険性は非常に高くなったいま、こうした情勢は知っておくべきだろう。

<文/白石和幸 photo by Noofa2401 via wikimedia commons(CC BY-SA 4.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。