トランプ発言に日本企業も振り回される(同氏のFacebookyより)

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 トヨタ自動車がトランプ次期米大統領のツイート攻撃という“指先介入”の標的となった。メキシコに工場を作る計画のトヨタに対し、トランプ氏は〈ありえない! 米国内に工場を作らないなら高額の「国境税」を払え〉と求めた。

 トランプ相場に沸いた日本経済が一転し、窮地に追い込まれかねないという不安感が一気に広がったが、その後、当初の計画通りとはいえ、トヨタは豊田章男社長自身がデトロイトで行なわれたモーターショーにて1月9日、トヨタが今後5年間で100億ドル(約1.1兆円)を米国に投資すると宣言したのだ。むしろ、日本企業の大復活を象徴する出来事かもしれない。

 20日の大統領就任式を控え、米国国内はもとより世界の市場関係者がトランプ氏の発言の真意がどこにあるのか、気をもむ展開が続いている。

 だが、『トランプ革命で復活するアメリカ―日本はどう対応すべきか』の著者で、早くから大統領選でのトランプ勝利を予想していた国際政治学者・藤井厳喜氏の見方はシンプルだ。

「トランプ政権では保護主義が強まるという論調が広がっていますが、トランプの本心はあくまでアメリカ・ファーストが達成できればいい。決して日本企業が憎いわけではない。そもそも米国の製造業は日本から輸出される中間財(エンジンやタイヤなど、工業製品の材料となるパーツのこと)が支えてきたことは明白で、日本が米国の仕事を奪ったわけではない。

 今後も米国国内にどれだけの雇用を創出するのかという点を重ねて説明していけばいい。ビジネスマンであるトランプは決して聞く耳を持たない人物ではありません」

 米国市場への貢献度について、トヨタの豊田社長はモーターショーで、次のような実績を示した。

「米国で車の開発、生産、販売に携わるトヨタのメンバーは約13万6000人」
「トヨタは米国で30年以上にわたり、2500万台以上の車を生産」

 とりわけ15年連続で米国のベストセラーカーとなったカムリの生産拠点であるケンタッキー工場は7700人もの現地従業員を雇用している。

 トヨタだけではない。外務省「海外在留邦人数調査統計」によれば、米国内の日系企業総数は毎年増加の一途を辿り、2015年は7849社と10年前より2422社も増えている。東京商工リサーチが業務提携するダンアンドブラッドストリートのデータを見ても、毎年新たに100社以上もの日系現地法人が誕生している。

 1980年代の貿易摩擦などを経て、長い時間をかけて米国に進出してきた日本企業にとってみれば、トランプ氏の望む程度の投資など決して難しい話ではないだろう。

 トランプ氏の真意をいち早く見抜いていた経営者がいる。ソフトバンクグループ社長の孫正義氏だ。

 大統領選後にニューヨークに飛び、総額500億ドル(5.7兆円)の投資と5万人の雇用創出を提示。トランプ氏との2ショット写真が世界中に配信されると、同社の株価は急上昇した。

 他にも、昨年末にはパナソニックが米国の新進気鋭の自動車メーカー・テスラモーターズとの提携を発表。米工場にパナソニックが約300億円を投じて太陽光パネルの生産ラインを導入し、2017年夏から生産を始める予定だ。

 近年、日本企業は世界での存在感を失いつつあった。トランプ氏がトヨタを“名指し”したことは、世界が再び日本企業に注目し始めている証なのだ。

※週刊ポスト2017年1月27日号