柴田昌治 スコラ・コンサルタント プロセスデザイナー代表

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■成長が鈍化し、会社の力も弱体化する

これまで評価の高い社員というと「仕事が速い」「人よりも高い実績を上げている」「調整能力がある」といったことが当たり前になっていました。つまり、これに当てはまるのが「できる人」というわけです。ですが、その大半は、単に「仕事をさばく」のがうまい人でしかありません。実は、今日のような変化のめまぐるしい社会にあっては、彼らこそが会社をダメにする元凶だといったら、多くの人が驚かれることでしょう。

ここで仕事をさばくとは、上司やクライアントから出された課題を、流れ作業的にそつなく処理していくということ。もちろん、それ自体は悪いことではありません。ただ、そんなことを何気なく繰り返していくところに、ビジネスパーソンが陥りやすいワナが存在します。そこにはまってしまうと、社員1人ひとりの成長が鈍化し、会社の力も弱体化してしまいます。

なぜならその人は「この課題はそもそも何のためにあるのか、一体どんな意味を持つのか」を考えることをしないから、進歩や深掘りがありません。場合によっては、会社が発展するうえでの抵抗勢力になってしまう。私があえて「できる人」とカギカッコ付きで表記したのは、彼らが真の本当の意味で仕事ができる人とは区別すべきだと思っているからなのです。

確かに、日本が高度経済成長の時代ならそれでよかったかもしれません。欧米の先進企業のやり方をキャッチアップしていれば、会社も大きくなり業績も伸びました。けれども、1990年直後のバブル経済崩壊以降から様相は明らかに変わりました。「大量の仕事をさばくことができる人=仕事ができる人」という考え方は今や通用しません。

■「考える力」が劣化していく理由

仕事をさばいているだけでは、見えないところで「考える力」がどんどん劣化していく。残念ながら、そういう会社が昨今の日本にものすごく多くなってしまいました。日本企業90年代と2000年代の10年間、“失われた20年”と呼ばれる厳しい時代を体験しました。そのなかでは、まずは生き残るために目の前の数字を上げることに集中するしかなかったことも確かでしょう。

ようやく、そこから脱出しかけているとはいえ、かつて成功したビジネスモデルが復活することはありえません。液晶事業で大成功したシャープが、わずか10数年で台湾の企業の軍門に下ってしまいました。あるいは東芝がかつて看板だった家電事業を売却したことが、それを如実に物語っています。過去にどれほど輝かしい業績を上げたビジネスでも、永遠に存続することはできないのです。

しかしながら、まだ日本の経営の現場では旧来型の優秀な人材が評価される風土が残っています。もちろん、その弊害に気づいた会社も少なからずあります。評価自体が変わってきましたし、変わろうとしているのは間違いない。ところが、残念なことに社員のほうが変わりきれず、昔の評価軸でまだ動いている気がしてなりません。

しかし、組織全体の新しいものを生み出す能力が弱ってしまっていたら、新しい発想や着眼、そこから導き出させる戦略も出てくるはずはありません。やがて、組織の基盤が脆弱化していくことになるのです。会社が滅びるというのはそうした理由にほかなりません。そうならないためにも、これまでの働き方を考え直す時期に来ているのです。

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柴田昌治(しばた・まさはる)
1986年、日本企業の風土・体質改革を支援するスコラ・コンサルタントを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。著者に『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『成果を出す会社はどう考え動くのか』『日本起業の組織風土改革』など多数。近著に『「できる人」が会社を滅ぼす』がある。

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(スコラ・コンサルタント プロセスデザイナー代表 柴田昌治 構成=岡村繁雄)