講談社次長の逮捕で考える…イクメン幻想と、夫婦トラブルのドロ沼化

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 自宅で妻を殺害したとして、講談社の編集次長・朴鐘顕容疑者(41)が殺人容疑で1月10日に逮捕されました(本人は容疑を否認)。

 朴容疑者と妻との間では育児をめぐって度々トラブルがあったことが報じられています。

 敏腕編集者と名高い一方で、ツイッターでは子育てを熱く語り、2ヶ月の育児休暇を取っていた容疑者。激務の男性編集者が育休を取るのは、ありえないほど珍しいですが、妻側は「夫が育児をしない」と区に相談していたといいます。

 育児・教育ジャーナリスト、心理カウンセラーで「パパの悩み相談横丁」管理人のおおたとしまささんに話を聞きました。

◆「イクメン」であるがゆえのイザコザ

――まず、今回の報道をどのように感じましたか?

おおた「事件の真相は不明だという前提で言うと、育児や教育をめぐっての夫婦間トラブルが、もし殺人事件に発展してしまったのなら、ちょっと飛躍しすぎだなという感じはします。何かもっと闇の部分があるのかもしれません。

 ただ、事件にまでならなくとも、子育てをしている父親・母親がギリギリまで追い詰められてしまうことは珍しくないんです」

――社内・近所から「イクメン」と評判の夫であっても妻とのイザコザは絶えないものなのでしょうか。

おおた「夫が子煩悩で“イクメン”であることが、逆にイザコザのひきがねになることもあるんですよ」

――というと?

おおた「昔は、仕事で忙しい夫は子育てを妻に全て任せきりということがザラでした。もちろん妻の負担はかなりのものですが、その分、夫は子供のことは妻に信頼をおいて任せていたとも言えます。

 なので夫は妻に余計な口出しはできず、妻も自分の方針で子育てできていたところがあります。

 ところが、今回のように夫が育休を取ったりして“イクメン”をやればやるほど、妻への口出しやダメ出しも増える。これは僕自身も時々やってしまうのですが…。

 意見の違いが出てきてイザコザが起きるんです」

――それは皮肉なことですね。意見の違いはどのように起きるのでしょうか?

おおた「例えば、母親は『子どもに天然ジュースしか飲ませない』、父親は『時にはコーラ飲んだっていいじゃないか』と。すると母親は『たまにしか子育てしないくせに勝手なことを』と怒り、父親は『俺だって仕事も育児も精一杯やってる』とケンカになるわけです。

 そんな小さなズレが積み重なっていくと『私たちの教育方針は全く一致しない!』と思い込んで、夫婦関係が険悪になっていく。でも、夫婦なんだから意見が一致するという考えこそが、そもそも幻想なんです」

――そうは言ってもやはり、父親にも育児をしてほしいし、夫婦の意見も一致させたいと思ってしまいます。

おおた「子育てや教育について、どちらが正しいのか白黒つけようとすると、さらに深みにはまっていきます。あいまいにしておくほうがいい。正論をつきつけるのではなく、お互いの考えの落とし所を見つけることが重要なんです。

 妻の視点と夫の視点、どちらも大切だと認めること。夫が子供といるときは夫のやりかたに任せてみたり、『勉強のことは父親が決める、食事のことは母親が決める』とか、守備範囲を決めるのもいいでしょう」

――なかなか難しいですね…。

おおた「ぜんぶを自分の思い通りにしたいと思っていたら、難しいでしょうね。思い通りにならないものだと思っているくらいでちょうどいい。

“すべてを思い通りに”と思っていると、いずれ子どもにも、思い通りに育つことを求めるようになってしまう危険性があります」

◆仕事と育児で、疲れ果てて険悪になる夫婦たち

――容疑者である夫は、SNSに家族のために食事を作る様子や、子供との楽しいやりとりを投稿していて、家庭ではイクメンでありよき父であったことがうかがえます。