各社出揃った学割プランを検証。昨年より安く3社のカラーも出てきた:週刊モバイル通信 石野純也

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▲auは、2980円からの段階制プラン「学割天国U18」を大々的にアピール

毎年の恒例行事となっている、3キャリアの学割が出そろいました。5GB、6GBと、大容量を対象ユーザーに追加していた昨年とは打って変わり、今年はau、ソフトバンクとドコモが、まったく異なるベクトルの学割を打ち出す結果になりました。

先手を打ったのは、auでした。ソフトバンクが12月から、20GB、30GBの大容量プラン限定で学割を発表したところに、段階制プランが特徴の「学割天国」をブツけてきました。KDDIの代表取締役社長、田中孝司氏が、「利用者の傾向が分かれている」と述べていたように、昨年の学割ユーザーを見ると、3GB未満が23.5%なのに対し、10GB以上使うユーザーも25.3%いました。その中間である5〜8GBのユーザーも25.9%で、"学生"というだけでデータ利用量を一括りにできないことが分かります。

▲昨年学割を利用したユーザーのデータ量分布

ここに対応するために、auが導入したのが、使ったデータ量に応じて自動的に料金が変動する、段階制の料金プラン「学割天国U18」です。対象者は、「U18データ定額20」に加入できます。U18データ定額20は、通話が5分まで無料になる「スーパーデジラ」と、ネットに接続するための基本料「LTE NET」、それに段階制のデータプランがセットになった料金。料金は4段階で変動する仕組みで、5390円から7500円の間になります。

▲多様なユーザーに対応できるよう、段階制のプランを導入

さらに、「auスマートバリュー」を適用させると1410円、学割対象者の家族も一緒に契約すると1000円割引になり、すべての条件を満たしたときの料金は2980円から5090円になります。田中氏が「格安スマホの領域に片足を突っ込んだ」と意気込んでいるのはそのためで、3GBまでで2980円という金額は、ワイモバイルやUQ mobileなどに迫る金額です。それでも、純粋に金額で比較するとまだMVNOの方が安くなりますが、auには「iPhone 7が使えたり、いろいろなサービスがついている」(同)という特徴もあります。条件つきながら料金をMVNOに近づけ、トータルな環境で学生に選んでもらいやすくしたというわけです。

▲MVNOとは異なり、最新iPhoneを選べることも強調した

このauの学割天国に対し、ソフトバンクも直球で対抗してきました。同社は昨年12月に、25歳以下のユーザーに対し、20GB、30GBプランが1000円引きになる学割を開始していましたが、auの発表を受け、同じ段階制の「学割モンスターU18」を導入しましたはauと同じで、5390円から7390円の間で変動。こちらも、「SoftBank光」とセットにして、かつ「家族追加特典」を利用すると、2980円から5050円に料金が下がります。

▲ソフトバンクも段階制の「学割モンスターU18」を開始

ただし、ソフトバンクの学割は、どちらかというと大容量プランに対する1000円の割引が本命の様子。記者会見に登壇したソフトバンクの執行役員、プロダクト&マーケティング統括 モバイル事業推進本部、菅野圭吾本部長は、学割モンスターU18について、「対抗の1つとして導入した部分はある」と本音を明かしました。

▲一方で売りは「学割モンスターU25」にあるという

一方で、25歳以下の大容量プランを対象にする「学割モンスターU25」は、「20GBで5000円以下という形で、よりよいサービスを拡充できるのではないか」と自信をのぞかせます。1000円の割引があれば、1つ下の5GBプランと同等の金額になるからで、見方を変えれば、学生に対して15GBを無料でつけるのと同じになるというのが、ソフトバンクの考え方です。

▲同じ金額で4倍データが使えるという見方もできる

段階制のデータ定額を導入したauとソフトバンクに対し、ドコモは"条件の緩さ"を全面的に打ち出してきました。プレスリリースに「本キャンペーンは、ご家族の新規契約や光ブロードバンドサービス契約、端末購入を条件としておらず」と記載するなど、最低料金を実現するために、固定回線や家族の新規契約が必須な他社への皮肉も織り交ぜています。

▲ドコモはプレスリリースで、制約が少ないことを強調

その言葉通り、ドコモの場合、新規ユーザーだけでなく、既存のユーザーも対象になります。新規ユーザーの場合、1年間1000円の割引が受けられるほか、既存の「U25応援割」も適用され、合計で1500円の割引になります。もっとも安価な「データSパック」でもOKで、さらに、シェアパックで子回線になっている場合でもこの学割が適用されます。結果として、子回線の場合、1年間は1500円で利用できるようになります。元々夫婦でシェアパックに入っているユーザーが、子どもの1回線を追加する際に、MVNOも顔負けな料金プランで契約できるというわけです。

一方で、既存ユーザーの場合は、少々条件が厳しくなり、「ウルトラパック」への加入が必須になります。また、料金からの直接値引きではなく、dポイントでの還元というのも、新規ユーザーとは異なる点。この場合も、親がウルトラシェアパックに加入していれば子回線でも対象になります。また、ドコモの広報部によると、昨年学割に加入したユーザーで、まだ割引が残っている場合は、重複適用されるとのこと。昨年は基本料が800円割引になり、なおかつ36ヵ月間データ量が5GB追加されていましたが、これに加えてdポイントを1000円分もらえるようになります。

▲新規ユーザーは値引き、既存ユーザーはポイントバックに

1500円という金額は、他社の段階制よりも額として大きいのもポイント。auやソフトバンクの場合、段階制で一見おトクに見えますが、実は既存のプランと比べた際に、最大で800円程度しか安くなっていません。1年間という期間限定なのが、ドコモの学割の弱点ですが、金額面では他社を上回ってきました。特にシェアパックと組み合わせた際の金額は、なかなかアグレッシブと言えるでしょう。

大容量一辺倒だった昨年の学割とは異なり、今年はある程度3社のカラーがはっきり出た印象もあります。一方で、最低料金の安さを打ち出しているのは、3社とも共通で去年との大きな違いです。ドコモで言えばシェアパックの子回線で1500円から使えますし、auやソフトバンクは各種条件を満たせば2980円からになります。一言で言えば、"金額推し"の学割になっているのです。

 ここには、やはりMVNOの影響がありそうです。KDDIの田中氏は、「前はMNOのセールスシーズンにはMVNOが減る方向だったが、この前のiPhoneから、シーズンが重なるようになってきた」と語っており、勢いづくMVNOに対する警戒心をのぞかせます。2月から3月にかけての春商戦は、携帯電話市場で最大の商戦期で新規契約も取りやすい時期なだけに、ここでMVNOに大敗するわけにはいかないというのが3社に共通した本音と言えるでしょう。