「SpeakBuddy」の画面

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 多くの日本人を悩ませ続ける「英会話の習得」。日常会話レベルであっても、スラスラと話せるようになるまでには道のりが長い。加えて、いくら駅前に英会話教室があっても、そこに通い続けるのはなかなか難しいのが現実だ。しかし、“あるスマートフォン(スマホ)向けアプリ”が、英会話に苦戦する多くの日本人にとっての希望の光となるかもしれない。

●AIブームのなかで誕生した“AI英会話”

 その正体は、ベンチャー企業appArrayがリリースした「SpeakBuddy」。「AI(人工知能)英会話」を謳い、AIキャラとのトークによって英会話の習得を目指すアプリである。注目すべき点は、就職活動や旅行、日常生活などさまざまなシチュエーションが用意されていること。これによって自分が重点的に習得したいシチュエーションを選べることができる。

 たとえば、「挨拶」を選択すると以下のように表示される。

 まず、AIキャラが質問してくるので、ユーザーは画面下部に表示された2択の選択肢から、自分が正しいと思うほうを発音。スマホの音声認識機能によって、自分が発した英会話が表示され、発音や答えが正しいかどうかすぐにわかるようになっている。

 このシチュエーション別に分かれていることは、英会話教室にはない「ユーザーが触れる英語に幅を持たせることができる」というメリットがあるという。というのも、たとえば英会話教室に通った場合には、挨拶から始まり、講師が変わるごとに自己紹介するなど、何かと同じような会話を繰り返すことが多い。もちろん、それによって挨拶や自己紹介が流暢になるかもしれないが、時間が限られているため新しい単語や熟語に触れづらい。その点、SpeakBuddyならば自分が習得したいシチュエーションを重点的に、そして何度も繰り返しトライすることができる。

 そして、特筆すべきポイントが、バージョンアップによって「フリートークモード」が搭載されたこと。これは、自由に会話を楽しむことができる機能で、イメージとしては米アップルのスマートフォン、iPhoneに内蔵されている音声アシスタント機能「Siri」と会話をするようなもの。話しかけた内容に応じて、キャラクターがリアクションを行い自然な会話が成り立つようになっている。

●AI英会話=ゴルフの打ちっぱなし?

 このアプリを使い込むことで、英会話の基礎は学べるだろう。しかし、いくらAIが相手とはいえ、リアルな人間とのトークとは別物であるのも事実だ。たとえば、臨機応変な返しなどを習得することは難しい。このポイントがAI英会話の弱点のように思えるが、appArray代表の立石剛史氏によると「ゴルフの打ちっぱなしのようなもの」だという。

「たとえばゴルフだと、初心者がいきなりコースを回るのは非効率的ですよね。当たり前ですが、打ちっぱなしで正しいフォームやコツなどを覚えてからコースを回ったほうが効率的。SpeakBuddyはゴルフでいう打ちっぱなしのような存在だと思っています」(立石氏)

 ここである疑問を感じる。英会話といえば、英会話教室のほかにも留学やSkypeを利用したオンライン英会話などがさまざまな方法が存在しているが、なぜアプリに目をつけたのだろうか。

「留学すれば英会話を早く習得できますが、仕事をしていると長期留学はほぼ不可能です。また、アメリカ政府の発表によると、英語話者が日本語を習得するには2200時間もかかるそうです。翻せば、日本人が英語を習得するにも同じくらい時間がかかることになる。英会話教室はマンツーマンで40分8000円が相場ですが、2200時間も通えません。最近では安価なオンライン英会話も登場していますが、講師のクオリティに大きな波があるのが現実です」(同)

 英会話教室に通うには安くない費用がかかり、また外国人と知り合いになるのもハードルが高すぎる。加えて、外国人を前にすると頭ではわかっていても実際に会話をするのは難しい部分もあるはずだ。そこでAI英会話がピッタリだという。

「つまり、一般的な会社員が既存のソリューションで英会話を習得するのは難しいのです。しかし、アプリなら時間帯も場所も問わず、会話の相手に気を使わなくてもいい。そして、英語の発音に自信がなくても恥ずかしがる必要もない。そこがSpeakBuddyの強みだと思っています」(同)

●たった半日でクラウドファンディング達成!
 
 appArrayは、App Storeの有料ランキングで総合1位を獲得したこともある「本気で英会話!ペラペラ英語」というアプリをリリースしているほどの実力の持ち主でもある。そして、SpeakBuddyにはこれまでに培ってきたノウハウも活用。そのような背景もあってか期待度も非常に高くなっている。

 事実、クラウドファンディングサイト「Makuake」でプロジェクトを開始したところ、わずか半日で目標金額を突破。通常は数カ月かけて目標に達するプロジェクトが多いなか異例の達成スピードだったという。加えて、最終的に集まった金額は当初の目標30万円をはるかに超える431万5500円という額を叩き出した。

 そんなSpeakBuddyだが、立石氏によると「将来的に目指しているポイントが100だとすると、現在は25くらい」だという。今後は、音声認識の精度向上やフリートークの充実などの性能や機能の拡充を予定。また、文法の間違いや発音間違いをリアルタイムで表示する機能の搭載も目指している。リアルな英会話の場合では、発音の間違いがあったとしても会話を途中で切り上げることは難しく、会話が一区切りついてからフィードバックすることが一般的なので、この機能はアプリならではといえるだろう。

 つまり、現在の完成度が25というのは、クオリティが決して低いのではなく、目標が高いということだ。半年以内には50、2年以内に100のデキを目指すとのこと。

 残念ながら、対応しているのはiOS端末のみ。音声認識の精度はSiriなどには劣る気もするが、言い換えればきちんとした発音をしないと正しく認識しないということであり、英会話力の向上にも役立つともいえる。ダウンロードは無料だが、すべてのコンテンツを使い放題にするには月額 960円が必要(現在は期間限定価格の600円)。アプリの課金としては安くはないかもしれないが、英会話をある程度のレベルまで習得できると思えば高くはないだろう。始めるなら早めのほうが良さそうだ。
(文=加藤純平/ライター)