「Thinkstock」より

写真拡大

 今年のマンション市場は激変の年に――。値崩れを待つか、低金利のうちに買うか、あなたの判断力が問われる。

 大都市圏を中心に地価が上昇し、建築費は高止まり傾向が続いています。結果、不動産価格が上がり、依然として低金利が続いていることも加わり、さらなる上昇につながっています。20年の東京オリンピック・パラリンピックまでは、この好調さが続くのではないかといった楽観論が強まっているようですが、本当にそうでしょうか。

 現在の好調さはそこまで続かず、特にマンション市場は今年激変するのではないか。そんな気がしてなりません。

●「現在の状態は18年まで」が大勢に

 日本不動産研究所では、定期的に不動産投資の専門家を対象に「不動産投資家調査」を行っています。その16年10月調査では、特別調査として現在の状態がいつまで続きそうなのか、物件の形態別に聞き取りを行っています。

 その結果、20年頃までこの好調さが続くとする専門家も少なくないものの、実はそれより「18年、17年頃まで続く」とする見方のほうが強いのです。つまり、好調さはそう長続きせず、早ければ17年にも好調さは終了する、とする専門家がいずれの形態においても半数を超えています。

●18年には都心でオフィスの大量供給

 その要因はさまざま挙げられます。まず、現在の好調さを支えているオフィス需要が、一段落する可能性があります。18年には東京23区、わけても都心3区で12年以来の大量供給が行われます。
 
 極めて低い空室率のもと、賃料は着実に上がっていますが、大量供給が実施される18年には、それにブレーキがかかる可能性が高いのです。

 加えて低金利、株高、円安などの不動産投資に資金が向かいやすい環境も、いつまでも続くものではありません。事実、アメリカで金利の引き上げが始まり、日本でも金利上昇傾向が強まっています。日本銀行がゼロ金利の維持に躍起になっているものの、日本でも早晩本格的な金利上昇が始まるかもしれません。

●マンション業界は一足早く変化の可能性

 そうした動きを踏まえて、専門家の間でも18年には不動産市場の潮目が変わり、大きな曲がり角にさしかかるのではないかという見方が強くなっているわけです。

 なかでも、マンション分野は18年まで待たずに、あるいは持たずに激変するのではないかとする指標が続出しています。不動産業界全体より一足早く、17年には曲がり角がやってくるかもしれません。

●発売抑制、価格引き下げでも契約低調

 たとえば、首都圏の新築マンションをみると、このところは発売戸数が極端に減少しています。高くなり過ぎたために売れ行きが悪化、販売を抑制せざるを得なくなっているのです。

 11月の新規発売戸数は前年比22.7%の減少で、価格も18.4%のダウンでした。しかし、それでもなかなか売れず、11月に売り出した新規物件のうち契約が成立した割合を示す契約率は62.5%でした。70%が好不調のボーダーラインといわれていますが、これで70%割れは2カ月連続ですから、たいへん厳しい状況です。

●年間発売戸数は23年ぶりの低水準に

 その結果、16年1年間の発売戸数は3.5万戸程度にとどまる見込みです。図表4にあるように、これは1992年の2万戸台以来の低い水準。バブル崩壊直後と同様の極めて厳しい環境に陥っているといっていいでしょう。

 しかし、90年代から2000年代の初頭にかけてはマンション分譲が急増、首都圏だけで年間発売戸数が10万戸に近づくほどのブームになりました。バブル時に比べると価格が半分以下といっていい水準まで下がりましたから、バブル期に買えなかった人たちがいっせいに購入に動いたといわれています。

 バブル崩壊後には地価が大幅に下落し、建築費も安くなりましたから、マンション価格を大幅に下げることができ、結果的にこんな現象が起こったのです。

●新築マンションの価格はこうして決まる

 しかし、現在はとてもそんな環境にはありません。首都圏の新築マンション価格は、平均的な会社員の年収の10倍を超えていますが、とても価格を下げられる状態にはないのです。

 新築マンションの分譲価格の構成をみると、まず土地の取得費、建築費に分譲会社の経費や利益を加えて販売総額を決めます。それを住戸の条件に応じて按分、個別の住戸の価格が決まります。たとえば、最上階や東南の角部屋などは高くなり、下層階や北向き住戸などは安くされます。

●地価上昇、建築費高止まり、経費増大の三重苦

 ご承知のように、このところ地価はジワジワと上がっていますが、マンション適地といわれる利便性の高いエリアは、ジワジワではなく、大幅なアップになっています。建築費は一時の上昇が一服したとはいえ、高止まりしています。企業の経費や利益の削減には限りがあります。

 下げたくても下げられない、そんなトリレンマに陥っているといっていいでしょう。ふつうに考えれば、とても価格を下げられる環境ではないのです。

●まずは専有面積圧縮や仕様・設備の引き下げ

 そこで考えられるのが、12月16日の本欄でも取り上げた、専有面積の圧縮という手口です。原価が坪単価200万円かかっているとすれば、それに利益などを乗せて250万円ほどで売らないと赤字になってしまいます。専有面積23坪、約76平方メートルのマンションだと250万円×23坪の5750万円で売らないと利益が出ないことになります。

 でも、その価格帯ではとても買ってもらえそうにない、このエリアだと5000万円が上限という判断から、専有面積を20坪、約66平方メートルに縮小することが考えられます。それでも、狭い部屋をつくって3LDKなどとして売り出したりします。

●専有面積の狭い物件は資産価値が低い

 前回の記事でも触れたように、そんな物件を買ってはいけません。3人、4人家族では使い勝手が極めて悪くなります。「夫婦2人だから70平方メートル以下でもOK」という人もいるでしょうが、将来売却しようとしたとき、70平方メートル以下ではお客がつきにくく、資産価値が低下するリスクがあります。いずれも手を出さないほうが無難です。

 設備・仕様のグレードダウンはさらに要注意。住み心地が低下し、安全・安心面でも不安があり、将来的にはやはり資産価値の低下が懸念されます。
  
●掟破りの投げ売りが登場してくる可能性も

 そうした物件に手を出さなければ、分譲会社などがしびれを切らしていよいよ投げ売りが始まるかもしれません。利益を度外視して価格の引き下げに走り始める可能性があるのです。

 分譲会社としては完成在庫を持っているだけで管理費や維持費がかかり、販売のための人件費負担もあります。それを考えれば、多少赤字になっても早く売り切ったほうが得策と考える会社が出てくるはずです。

●「再販物件」が再び登場する可能性も

 それでも難しくなったとき、かつてはこんなケースが続出しました。マンション販売の不振で経営が危なくなった分譲会社から、完成前の物件を安値で1棟丸ごと買い取り、それを相場より2、3割安くして販売する、いわゆる「再販物件」「クリアランス物件」が急増したのです。

 消費者からも新築物件が中古に近い価格で手に入ると人気を集めました。早ければ17年中にもそんな事態が出来するかもしれません。

●価格低下が早いか、金利上昇が早いか

 ただ、そのマンション価格の低下の一方で、金利の上昇が懸念されています。特に12月にはアメリカがついに金利引き上げを実施し、その影響が日本にも及んでいます。図表は民間機関と住宅金融支援機構提携のフラット35の金利の推移を示しています。すでに16年秋からジワジワと上がり始めていますが、17年にはこの勢いに拍車がかかる可能性があります。

 まだまだ日本の景気回復は本物とはいえず、物価上昇率も日本銀行が目標とする2%にはほど遠い状況です。日銀としてはできる限りゼロ金利を維持したい意向といわれますが、市場の勢いをどこまでコントロールできるのか、不安が残ります。

●価格低下だけなら返済負担がラクになる

 こうした変化が購入後の負担にどんな影響をもたらすのか試算してみましょう。
 
 たとえば、5000万円のマンションが1割下がって4500万円になり、住宅ローン借入額が4500万円から4000万円に減ったと想定しましょう。金利1%、35年の元利均等返済で4500万円借り入れると、毎月返済額は12万7028円です。それが、金利1%のままで借入額を4000万円に減らすことができれば、返済額は11万2914円に減少します。月々1万4000円以上の軽減ですから、かなり負担が軽くなります。

●1割下がっても金利1%上昇で負担増加!

 けれども、4000万円の借入額に減っても金利が1.5%になっていると毎月返済額は12万2473円と、価格低下メリットはかなり小さくなり、金利が2%まで上がっていると返済額は13万2505円と、むしろ価格低下前に金利1%で買ったほうが得策になります。

 周知のように大規模なマンションだと、販売開始から引き渡しまでに2年、3年の年月がかかることもあります。そんな物件の値下がりを待っていると、引き渡し時には金利が大幅に上がっていて、むしろ負担が重くなる可能性もあります。

 17年は、価格の低下を見極めるか、金利を重視するか――。皆さんの判断力が問われる年になるかもしれません。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)