朴大統領、疑惑の墓穴を掘ったイヤな「クセ」

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2016年から17年へと年が切り替わった韓国は、歳末という空気を全く感じることができないほど慌ただしかった。
 
騒動の原因のひとつは、12月31日午後9時に釜山の日本総領事館前で除幕された従軍慰安婦問題を象徴する少女像。そしてもうひとつは、朴槿恵大統領を巡る一連の疑惑劇だ。特別検察官の捜査期間は「任命された日から最長120日間」と決められているため、「俺たちには大晦日も元旦もない」とばかりに、休日なしで捜査に明け暮れた。

年が明けた1月5日、ソウル中央地裁での公判に、財閥企業などに財団への出資を強要したなどとされる朴大統領の支援者、チェ・スンシル被告と前大統領府政策調整首席秘書官の安鍾範(アンジョンボム)被告、前付属秘書官・チョン・ホソン被告らが出廷した。

検察側はチェ被告と安被告が朴氏と共謀関係にあったと改めて主張。「大統領が共犯である証拠は、あふれかえるほどだ。すべて立証できる」と強調した。

この恐ろしいほどの自信はどこから来るのか。検察が決め手と頼んでいるのが、安被告の手帳とチョン被告の持っていた音声ファイルだ。

手帳は17冊。2015年1月から16年10月まで計510ページにわたり、朴大統領の指示や会議内容などが自筆で書かれていた。チョン被告のコンピューターや携帯電話に残された音声ファイルも236件を復元。朴大統領とチェ、チョン両被告3人が登場するファイルが11件、計5時間あまりあったという。

先日会った、韓国政府の元高官は「天につばする行為だったということだね」と語った。彼によれば、朴大統領はよく部下に対し、自分の話していることをメモしているかどうか確認する癖があった。閣議でもそうだった。ある日、朴大統領の話す内容をじっと聞いている閣僚をみつけると、朴氏は「メモしなくて覚えられるのですか」と問いただしたという。

閣議の映像をみると、居並んだ閣僚たちが必死でメモを取っている。メモなど、後で部下たちがどうせ会議録をまとめるはずだ。滑稽な光景このうえない。

私も記者なので身に覚えがあるが、最近の記者会見ではタブレット型コンピューターを持ち込んで、記者会見を速記する記者が増えている。ただ、これをやると、速報はできるが、相手の話す内容が頭に入らない。「速く打ち込まねば」という気ばかり焦り、どんな質問をするかという発想まで気が回らない。

同じ質問を先ほどの元高官氏にすると、彼は「朴大統領はフリーディスカッションを嫌う傾向もあった」と語る。1月1日、朴大統領は、韓国記者団を呼んで大統領府内で懇談した。後で映像を見ながら朴氏の発言をよく聞くと、一つの文章になっていない場合が多いことがわかる。頭の中が整理されていないという印象を持った。

朴大統領が部下にメモを取らせた背景には、自分に対して鋭い質問をさせないという意図こそなかっただろうが、少なくとも「自分の指示に対して反論はさせない」という意思の反映ではなかったか。

これが、朴大統領の政治の最大の欠点とされた「不通(プルトン)=意思疎通の不在」の原点だったのかもしれない。

それにしても「天につばする行為」とはどういう意味か。元高官氏が笑う。「だって、ちゃんとメモを取らないと大統領からしかられると思って、みんな必死でメモや音声ファイルを取っていたんだろ。それがそのまま動かぬ証拠になったんだから、これほど皮肉な話はないよ」

朴大統領の疑惑が表面化してから、安被告やチョン被告の職場や自宅が捜索されるまで、数日間の余裕があった。その間、メモ帳や音声ファイルを破棄することもできただろうに、彼らはそうしなかった。彼らの真意はまだ聞けないが、大統領への強い忠誠心がそれをさせなかったのか。