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●相次ぐIoT通信規格の導入
NB-IoTやLoRaWAN、SIGFOXなど、LPWA(Low Power Wide Area Network)と呼ばれるIoT向けの通信規格導入に向けた動きが相次いでいる。IoT人気の高まりとともに広まるLPWAだが、なぜ今、LPWAが求められるようになったのだろうか。そして2017年、LPWAはどこまで広がると考えられるだろうか。

○IoTに適した通信規格の本格導入が相次ぐ

ここ1、2年のうちにIT業界を大きくにぎわせている「IoT」(Internet of Things、モノのインターネット)。あらゆるモノがインターネットに接続することにより、新しい価値が生み出されるという期待感から、IoTが急速に注目を集めるようになったのである。

2016年もIoTに関しては、非常に多くの取り組みがなされていた。中でも最も大きな動きといえるのが、ソフトバンクグループが7月に、半導体設計大手の英ARMを、約3.3兆円もの巨額で買収したことだ。ARMはスマートフォンなどに搭載されているCPUの設計を手掛けており、省電力性に優れていることから、IoT時代の到来によって、より多くのデバイスに採用されることが期待されている。ソフトバンクグループはARMの買収によって、注力分野の1つであるIoTへの取り組みを拡大する狙いがあるようだ。

だが今年、IoT関連で盛り上がりを見せたのは半導体やデバイスだけではない。IoTの「I」の部分、つまりインターネットに接続するネットワークに関しても、大きな動きが相次いで起きている。

そのことを象徴するのがLPWA(Low Power Wide Area Network)の盛り上がりだ。IoT関連のデバイスは、インターネットに接続するといっても、実際にやり取りするデータの量はスマートフォンなどと比べると圧倒的に少ないことがほとんどだ。特に法人向けに関して言うならば、1日1〜数回、レポートをテキストで送付するだけで十分というケースも多い。 ゆえにIoTでは、広いエリアで利用できることは重要であるものの、LTE-Advancedのような高速・大容量通信はあまり求められない。もっと低速でいいので、一度に多くの機器を接続でき、よりローコストであること。そしてメンテナンスを減らすため、バッテリーで数年間は動作させられる省電力性を備えることなどが、重視されているのだ。

そうしたIoTに適した「LPWA」と呼ばれる通信規格が、ここ数年のうちに相次いで提唱されてきた。そして今年、LPWAの本格導入に向けた動きが急拡大したことから、大きな注目を集めたわけだ。

●LPWAを導入する企業
○大手からベンチャーまで、幅広い企業が導入するLPWA

LPWAの代表的な通信規格の1つとして挙げられるのが「NB-IoT」である。NB-IoTは、既存の携帯電話キャリアが展開するLTEを、IoT向けに低速だが低コスト・省電力で提供できるようにしたもので、2016年に標準化が完了したばかりの規格でもある。

NB-IoTはあくまでLTEの延長線上にあるため、既存の携帯電話キャリアが導入しやすい方式でもあり、採用するのも大手キャリアが主だ。実際、日本でもNTTドコモやKDDI、ソフトバンクがNB-IoTの導入に向けさまざまな取り組みを進めている。

例えばソフトバンクは、2016年11月にNB-IoTの屋外実証実験を実施。NB-IoTのモジュールを搭載したセンサーを駐車場に設置し、駐車状況や課金などを管理する「スマートパーキング」のデモを報道陣に公開している。

だが、LPWAの通信規格はNB-IoTだけではない。LTEのインフラを持たない企業が、他の通信規格を用いてIoT向けのネットワークを提供しようという動きも、2016年にはいくつか起きている。

そのうちの1つが「SIGFOX」である。SIGFOXは、フランスのシグフォックス社が2012年より提供するLPWAの草分け的存在であり、免許不要で利用できる920MHz帯を活用して低価格・省電力で、なおかつ広いエリアをカバーするネットワークを提供するというものだ。

そして2016年11月には、京セラコミュニケーションシステムが日本で独占契約を結び、SIGFOXのネットワークを同社が日本で展開することを発表している。同社はMVNOとして法人向けに通信サービスも提供しているほか、企業向けのICTソリューションなども提供している。そうしたノウハウを生かしてSIGFOXのネットワークを展開し、IoT機器への導入を進めるとしている。

もう1つ、LPWAの通信規格として注目されているのが、2015年より展開されている「LoRaWAN」だ。LoRaWANもSIGFOXと同様、920MHz帯を用いて広いエリアをカバーするIoT向けの通信規格だが、SIGFOXはシグフォックスが独占提供しているのに対し、LoRaWANは複数企業が参加して立ち上げた「LoRaアライアンス」が提唱する通信規格であるため、オープン性が高く多くの企業が導入しやすいのが特徴となっている。

それゆえLoRaWANを展開する企業は比較的幅が広い。例えばMVNOとしてIoT向けの無線ネットワークを手掛けるベンチャー企業のソラコムが、今年LoRaWANを展開するM2B通信企画という企業に出資してLoRaWANの展開に力を入れている。また固定通信のNTT西日本もLoRaWANの実証実験を進めており、規模を問わず多くの企業がLoRaWANを導入、あるいは導入に向けた準備を進めているようだ。

●LPWAの通信規格は何が残るか
○LPWAの通信規格は共存する?

2016年にLPWAの各通信規格の導入が打ち出されたことから、2017年にはいよいよ、本格的にそれらの通信規格によるインフラが実際に整備され、市場にもLPWAを用いた製品が徐々に出回っていくものと考えられる。

NB-IoT、SIGFOX、LoRaWANと複数の通信規格が急速に立ち上がったことから、各通信規格同士の争いが激しくなるようにも見えるが、実はそうとは限らない。それぞれの通信規格には特長や得意分野が存在するため、ネットワークを提供する企業の側は、むしろ複数の通信方式を使い分けようという考えが強いようだ。

特に通信キャリアは、あくまでNB-IoTを主体としてIoT向けのネットワークを提供するとしているものの、LoRaWANやSIGFOXなども場面に応じて活用していく方針を打ち出している。実際ソフトバンクは、NB-IoTと同時にLoRaWANのソリューション提供にも力を入れるとしており、双方を連携したIoT向けネットワークを提供する考えも示している。またKDDIは、京セラコミュニケーションシステムがSIGFOXの提供を発表した際、そのエコシステムパートナーとして参加し、さらにSIGFOXの活用を協業によって積極推進するとのコメントを寄せている。

一方で、ソラコムや京セラコミュニケーションシステムなど、NB-IoT以外のLPWA規格を採用する企業も、MVNOとしてキャリアからのネットワークを利用し、IoT向けにサービスを提供する動きは今後も継続するものと考えられる。特にカバーエリアに強みを持つNB-IoTがMVNOでも利用できるとなれば、LoRaWANなどだけでなく、NB-IoTを積極活用してサービスやソリューションを提供したいというMVNOは、むしろ増えていく可能性が高いだろう。

IoTが大きな注目を集めたとはいえ、IoTの機器やサービスの本格展開は、まだこれからという企業がほとんどというのが正直なところだ。それだけに2017年、IoT向けのネットワーク利用が爆発的に広まるとは考えにくい。当面は利用が拡大する将来を見越して、まずはサービスを確実に立ち上げ、着実にユーザー獲得を進めるなど足元をしっかり固めていくことが、ネットワークを提供する各社には求められるところだ。

(佐野正弘)