「米国を再び偉大にする」経済政策、トランプにとっては吉か凶か

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ここ何代かの米国大統領の中でも、ドナルド・トランプほど経済的な奇跡を期待され、そのプレッシャーの下で就任する大統領はいないだろう。経済を好転させると約束し、主にそれを理由に選出されたトランプは、2つの大きな課題に直面している。

その一つは国民の意識に関するものだが、もう一つは非常に現実的な、より重要性の高い問題だ。トランプはまず、メディアの大半が認め、国民にも幅広く受け入れられている考えに対応しなくてはならない。それは、米国が経験している「オバマ景気」ともいえるものだ。

トランプは非常に好調な経済を引き継ぐことになる。米MSNBCテレビは米国経済を「世界中がうらやむ状況」と報じ、フォーチュン誌も、トランプは「数十年で最も好調な経済を受け継ぐ」と伝えている。

念のために説明しておくと、バラク・オバマ大統領が前任のジョージ W. ブッシュから受け継いだ米国経済は、ひどい状況にあった。オバマにはある程度において、自らが主導した政策によって数百万の雇用が生み出され、地味ではあっても経済は安定的に成長してきたと主張できるだけの正当性がある。

オバマ政権の8年間、米国の国内総生産(GDP)は前ブッシュ政権時のおよそ2倍のペースで成長した。ただ、それ以前のビル・クリントン政権やロナルド・レーガン政権時の成長率と比べると、半分ほどの伸び率にとどまった。

現実的な課題

一方でブッシュ・オバマ両政権について評価が低いのは、トランプが引き継ぐ米国経済にもたらした根本的・長期的な弱さだ。

2005年以降に創出された新規雇用の大半はパートタイムで、多くが低賃金のサービス業の働き口だ。フルタイムで賃金が中程度の雇用は製造、建設、エネルギーの分野に集中し、ある程度の回復がみられてきた。だが、経済的な成功のチャンスがあるという感覚を幅広く国民の間によみがえらせるには、不十分だった。

オバマの就任以来、米国では富裕層も貧困層も同時に、大幅に拡大した。米国で食糧配給券に頼っている人は現在、2008年と比べて約1,600万人多くなっている。そして、持ち家率は過去およそ50年で最低の水準だ。

トランプに資質はあるか

経済にとって最も良いのは、国全体としての繁栄だ。そして、それは現在の米国に大きく失われているものだ。国の繁栄とは国民が住宅を購入し、新たな世帯を持ち、子どもを持つことであり、これらは力強い中間層にとって不可欠なものだ。国民にこうしたものをもたらした大統領は誰であれ(これを最後に実現したのはクリントンとレーガンだ)、再選を果たすことがほぼ確実になるとされる。

トランプは当然ながら、この実現を目指すだろう。ただし、クリントンともレーガンとも、大きく異なる手法を用いる。トランプは経済的愛国主義の道を進むことを選んだ。それはある意味で、成功を収めた前出の2人の大統領と、米国の既成勢力の大半が支持してきた手法を覆すものとなる。トランプが取るポピュリスト的な手法が功を奏するのか否かは、不透明だ。

それでも、トランプは結局のところ、他の誰が予想したよりはるかに抜け目のない政治家であることを自ら証明してみせた。そして、少なくとも現時点では、常に油断することがないようだ。

税制改革、規制改革、さらなるインフラ整備への支出の見通しはすでに、長期にわたって先延ばしにされてきた企業の投資を後押しし始めている。今後の問題は、トランプが貿易戦争や国際的な不安定化、新たな景気後退を引き起こすことなく、これらを順調に進めていけるかどうかということだ。