金正恩氏

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北朝鮮が国家ぐるみで保険金詐欺を働き、毎年数十億円の外貨を稼いでいたことが明らかになった。

この疑惑は以前、筆者も本欄で指摘したことのあるものだが、昨年7月に韓国に亡命したテ・ヨンホ元駐英北朝鮮公使が韓国紙とのインタビューで、事実であると認めたのだ。

公開処刑も恐れず

テ氏はソウル新聞のインタビューに答え、次のように語っている。

「北朝鮮は1980年代はじめから最近まで、ロンドンの国際保険市場で数千万ドルを毎年、稼いできた。北朝鮮には国営の保険会社がひとつだけで、事故をねつ造しても、外部からの検証が不可能な唯一の国だ。橋梁や工場などのインフラを国際保険・再保険に加入させた後、事故を装う文献をねつ造した」

北朝鮮で、一度に数百人が死亡するような大規模な事故が多発していること自体は事実だ。その多くは無茶苦茶な工期設定や行政の怠慢が原因となった「人災」である。

(参考記事:北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

しかし北朝鮮当局は、このような本物の事故については、国内にすらアナウンスすることがほとんどなかった。その理由は言うまでもなく、国民の反発を恐れているからである。

実際、昨年夏の大水害においては当局が住民への通告もなしにダムの水門を開いたため、おびただしい数の犠牲者が出たのだが、現地では公開処刑も恐れず権力批判の声を上げる遺族もいたという。

その一方、北朝鮮当局は海外の保険会社に対し、実に多くの事故を報告している。韓国KBSによれば、それぞれの事故で得た保険金は次のとおりだ。

2006年7月に平安南道(ピョンアンナムド)の水害で4230万ドル(約48億3700万円)、同年に旅客船が沈没したとして600万ドル(約6億8700万円)、2005年にはヘリコプターが墜落したとして5800万ドル(約66億3200万円)、1996年には渇水による被害が発生したとして1億3000万ドル(約148億6500万円)。

これらのほかにも、同様の例が数多く存在すると見られる。

ちなみに英国政府は昨年、対北朝鮮制裁の一環として自国内にある北朝鮮国営の朝鮮民族保険総会社(KNIC)のロンドン支社を閉鎖する措置を取り、職員2人を事実上国外追放した。同社は、金正恩政権の資金を管理する朝鮮労働党39号室との関連が指摘されており、核兵器やミサイル開発の資金源となっていたとの判断によるものだ。

北朝鮮の保険金詐欺は、世界最大級の保険市場があるロンドンが舞台となっていたはずで、元駐英公使であるテ氏が証言した意味は重い。今後、同氏の証言を基に、法的な追及がなされる可能性もある。