李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長(YONHAP NEWS/アフロ)

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 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人で女性実業家、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件を捜査する「特別検察官」(特検)は16日、崔被告側への出資をめぐる贈賄などの疑いで、サムスングループの実質的経営トップである李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長(48)の逮捕状を請求した。崔被告の国政介入事件で財閥トップの逮捕状が請求されるのは、今回が初めて。

 李副会長の逮捕状請求が認められるかどうかは、18日に行われる裁判所の令状審査によって決定される。逮捕状が発行されれば、サムスングループと同様の疑惑を受けているロッテなどその他の財閥企業への捜査や、朴大統領の弾劾訴追案をめぐる憲法裁判所の判断にも影響を与えるとみられる。

 特検は、李副会長がグループを承継するために不可欠だったサムスングループ内のサムスン物産と第一毛織の合併を進める過程で、朴大統領と親しい崔氏に対して、朴大統領に働きかけをしてもらえるよう依頼したとみている。そして2015年7月、朴大統領は、サムスン物産大株主で政府所管の国民年金公団に合併を働きかけるよう指示し、その見返りに、サムスンは崔氏側にさまざまな金銭的な支援をしたとみられている。

 具体的には、サムスンは同年8月、崔氏がドイツに所有する企業「コレスポーツ(現ビデクスポーツ)」と220億ウォン(約22億円)に上るコンサルティング契約を結んだほか、崔被告側に16億2800万ウォン(約1億6000万円)の後援金を支払ったことについて、合併に協力したことへの見返りと判断した。

 また、特検は昨年12月に開かれた国会の聴聞会で、李副会長が15年8月の時点で、崔氏の存在すら知らず、見返りを期待して支援した事実もない、との虚偽の証言をした疑いがあるとして、逮捕状請求の根拠のひとつにしている。

 李氏の逮捕状の請求が認められれば、サムスンは売上高300兆ウォン(約29兆円)を超えるグローバル企業であることや、他の財閥企業にも捜査が及ぶのは確実だけに、韓国経済が大きな打撃を受けるのは間違いない。また、グループ企業の経営が打撃を受けるのは不可避だ。

●対日経済へも負の連鎖

 大韓商工会議所によると、韓国の製造業約2400社を対象にした今年1〜3月期の景況感指数は、昨年10〜12月期を18ポイントも下回る68まで悪化したという。景気悪化の判断基準である100を大きく下回っており、韓国経済の先行きへの悲観的な景気認識を示している。

 経済的停滞へのカギを握るのは民間の経済外交だが、今回の事件で財閥への風当たりが強いほか、李氏のほか、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長やロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)会長らも出国が禁じられており、捜査が終わるまでは八方塞がりの状態。

 すでに、ソフトバンクグループの孫正義社長や中国の馬雲(ジャック・マー)アリババグループ会長が就任前のドナルド・トランプ次期米大統領と会って、東アジア勢が活発な民間経済外交を展開しているが、韓国はひとり蚊帳の外だ。

 韓国では昨年の失業者数が100万人を超え、若年層の失業率も過去最悪の9.8%を記録するなど雇用危機が深刻化しており、さらに今回の事件で、一層の深刻な経済悪化を懸念する声が強まっている。

 さらに、その余波が日本経済に与える影響も指摘され始めている。日本と韓国はお互いに、貿易相手国として第3番目の規模となっている。その貿易額は15年で8兆5700億円だけに、韓国経済が悪化すれば日本への影響は必至。すでに昨年12月末の慰安婦問題をめぐる日韓合意は大統領職の機能停止で、白紙に戻る可能性も取り沙汰されており、今回の事件では、対日外交から対日経済へも負の連鎖が及んでくることも懸念される。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)