冬は素敵な季節だと思う人もいる一方で、私のように、冬は陰鬱で寒くて暗い季節でただただ春の訪れが待ち遠しいと思う人もいます。でも、上手に冬を乗り切る方法があります。それは、寒い季節をユニークな切り口でとらえることです。

今回ご紹介するのは、「人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地のよい雰囲気」 を意味する「hygge」という、デンマーク語独特の言葉です。敢えて日本語に置き換えるなら、「ほっこり」でしょうか。

hygge)はもともとノルウェー語に由来する単語で、「hoo-gah」と発音されます。大雑把に訳すと「心地よさ(coziness)」という意味ですが、「心地よさ」が物理的な状態を表すのに対して、「ほっこり」は態度やマインドセットを表しています。

アルバータ大学でスカンジナビア研究の教授を務めるNatalie Van Deusen氏は以下のように述べています。

訳語としてベストなのは「心地よさ」ですが、それはセーターを着たり毛布にくるまったりしたときの肉体的な心地よさではありません。むしろ、精神のバランスが取れていて心が健康な状態のことです。

それは、ちょうど休暇で故郷に帰ったとき多くの人が感じるような感覚ですが、現実の世界に戻ってきても消えてしまうわけではありません。デンマーク人なら、肌でわかることです。デンマークは冬が世界で一番長くて厳しい国ですが、それでも世界で一番幸福な国の1つです。これからご紹介するデンマーク流の「ほっこり」するコツを実践して、例年より冬をエンジョイしていただけたら幸いです。

自宅をとにかく心地よい環境にする


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「ほっこり」の真の定義にはそぐわないかもしれませんが、それでも、物理的に心地よくなるのは良いことです。「自宅に籠ってできるだけ快適に過ごすこと」の達人になりましょう。暖炉の側で暖かい飲み物を飲みながら読書すると「ほっこり」します。毛布をたくさんかぶってテレビを見ながらお手製のお菓子を食べるのも「ほっこり」します。毛布や枕、暖かい靴下、暖かい飲み物はいくらあっても足りないぐらいですし、ペットや大切な人と思う存分寄り添いましょう。

イギリスのモーレー大学でデンマーク語を教えているSusanne Nilsson氏は、究極の心地よさを実現するには、身のまわりのスペースに心を配ることが肝心だと言います。広くてがらんとした部屋や寒そうな感じのする部屋は避けるのが一番です。蛍光灯でなく温かみのある照明を使うことで、大きな部屋も実際より小さくて暖かい感じにしましょう。『The Little Book of Hygge』の著者、Meik Wiking氏が提唱するのは、たくさんのろうそくに火を灯すこと、温かみのある柔らかい光の電球を使った電灯を使うこと、暖炉があれば火を入れることです。暖炉が無ければ、テレビで暖炉のビデオを見るのも効果的です。とにかく、季節の美意識にかなうように自宅を演出することに尽きます。そうすれば、幸福感と暖かさに満ちた難攻不落の要塞にいるような気分になれます。

冬は冬眠の季節であり、暖かな自宅は熊の洞穴だと思いましょう。やりたくてもできなかったことを「冬だから」と言い訳して、今こそ全部やるのです。ソファにもたれて読みたかったあの本を読破しましょう。みんなが話題にしているあのテレビ番組を毛布にくるまって全部見ましょう。お風呂に浸かってたまっているポッドキャストを聞きましょう。季節が良くなると、外出したくなって、こういうことに時間がさけなくなりますから、冬の今こそチャンスです。私の場合は、心地よいベッドで普段より長時間過ごしたり、美味しいコーヒーを飲んだり、読書したり、攻略できていないビデオゲームをしたりしています。


気の合う仲間となるべく頻繁に集う


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冬は親しい仲間と過ごすことが少なくなりがちです。過酷な寒さや悪天候、危険な道路のせいで、集まるのも外出するのも大変になるからです。でも、仲間と集い親睦することは「ほっこり」の本質的側面です。デンマーク人は、社会的と強くつながっていることが精神的に良いと信じています。

「ほっこり」スタイルの集いには2つのやり方があります。1つ目は、誰かの家でお菓子やおいしいドリンクを用意して、友人や家族と定期的にリラックスした集まりをもつことです。『The Year of Living Danishly: Uncovering the Secrets of the World's Happiest Country』の著者であるHelen Russell氏は、こうした集まりは好きなように楽しく過ごすことに尽きると言っています。ですから、友人を招き、ケーキ、コーヒー、サイダー、ドーナッツなど何でも好きなものを用意して、気持ちの良い居間でおしゃべりをしながら仲間と一緒に過ごすことを楽しんでください。こういう集まりを頻繁にすればするほど良いです。冬をたっぷり味わうために、この季節ならではのアイテムをたくさん取り入れましょう。

2番目は自宅が快適でない場合です。その場合は、居心地の良いレストラン、バー、カフェ、本屋で「ほっこり」スタイルの集まりを持つのもアリです。地元のコーヒーショップの快適なソファを見逃さないでください。私や友人たちはボードゲーム・カフェが気に入っています。暖かくて、コーヒーが飲めて、あまりお金をかけずにたくさんゲームができるからです。


適切な装備で冬の醍醐味を楽しむ


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私は寒いのも濡れるのも大嫌いですから、雪を踏み分け、凍てつく風に吹かれながら出かけたくありません。だから、今までお金をかけてそれなりの冬の服装を整えたことはありませんでした。ということは、逆から考えれば、私は単に寒さに備えた服装をしていないせいで、寒い屋外で過ごすことが楽しめないのでしょうか? 素敵な冬服を買って体を暖かく保てれば、実は楽しめるのかもしれません。

『The Cozy Life: Rediscover the Joy of the Simple Things Through the Danish Concept of Hygge』の著者、Pia Edberg氏は、自然を体感することは、火のそばで快適に過ごすことと同じぐらい「ほっこり」すると説明しています。

「悪天候など存在しない。単に服装が不適切なだけだ」という諺もあります。

外が凍てつく寒さだからというだけで、まったく活動しなくていいというわけではありません。ちょっと散歩するだけでもいいのです。素敵な上着、手袋、ブーツ、帽子、スノーパンツなど、必要なものは何でもそろえた上で、外に出たら100%快適に感じてください。繰り返して言いますが、「寒さに耐えられる」レベルでなく100%の快適さを求めるのです。そして、屋外では、スキー、スノーボード、アイススケート、ソリ遊び、雪合戦など、冬にしかできない活動をしましょう。こういう活動や冬ならではの景色や音など、1年のこの時期にしか体験できないことを味わえば、もう夏を恋しく思うこともなくなります。


生活のペースを落としてささやかなことに喜びを見出す


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「ほっこり」は精神的な健康と幸福を追い求めるだけでなく、生活の最も退屈な場面にも喜びを見出すことでもあります。『The Book of Hygge: The Danish Art of Contentment, Comfort, and Connection』の著者、Louisa Thomsen Brits氏は、日常の作業を楽しくする方法を見つけることを推奨しています。日々のToDoをゲームにしてしまいましょう。自分にご褒美をあげることで雑用を楽しみなことにしましょう、日常生活のありふれたことを斬新にとらえてみましょう。「ほっこり」は心地よさや帰属意識と同様に、マインドフルネスにも関係しています。現実の世界とさらにつながることであり、自分に恵まれていることに感謝を示すことでもあります。

バイキングは「ほっこり」の本質は「日々の幸福の追求」に集約されるとしています。それは、冬の数カ月を活用して、生活の中のシンプルな楽しみに専念したり、リラックスや快適さを求めたり、毎日仲間と集うことです。そんなレンズを通して冬を見つめると、何もかもがずっと暖かい感じになります。もしかしたら、春が来ると、冬が名残惜しくなるかもしれません。


Patrick Allan(原文/訳:春野ユリ)
Illustration by Angelica Alzona. Photos by OakleyOriginals, Mt. Hood Territory, Mt. Hood Territory, and libraryrachel.