2位に7打差をつけ、ソニーオープンを圧勝したジャスティン・トーマス。前週のトーナメント・オブ・チャンピオンズに続く2週連続優勝、そして今季4戦3勝の快進撃は、松山英樹のそれと同等か、それ以上の猛威となりつつある。
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「新たなスターの誕生」といった見出しが方々で踊っている。確かに、ここまで目立つ活躍を見せ、実績を作り、大きな注目を浴びたという意味では、彼のことを新たなスターと呼んでもいいのかもしれない。
だが、トーマスのこれまでの歩みを考えれば、新たなスターというより、必ず当たるはずだったスポットライトがようやく当たったという気がしてならない。
私が初めてトーマスを知ったのは、彼が米ツアーにデビューした2015年の春だった。ケンタッキー州で生まれ育ち、アラバマ大学ゴルフ部で腕を磨いた後、プロ転向したトーマスは、1年間のウエブドットコムツアー生活を経て、米ツアーに辿り着いた。
ジョーダン・スピースとは13歳のときからジュニアゴルフの世界で腕を競い合った良き友、そして良きライバル。父親も祖父もクラブプロというゴルフ一家に生まれたトーマスは、ジュニア時代はスピースより格段にランク上と見られていた。
だが、大学を中退し、先にプロの世界に入ったスピースが瞬く間にスターダムを駆け上っていったのに対し、大学卒業を待ち、下部ツアー経由になったトーマスはかなり出遅れた感があった。
そんな中、初優勝のチャンスは案外早く訪れた。最終日を最終組で回った2015年のヒューマナ・チャレンジ。しかし、ベテラン選手たちの猛追を食らったトーマスは、終盤16番で池に落としてダブルボギー。7位に終わったトーマスに駆け寄る米メディアは皆無だったが、外国人記者の私だけ、ポツンと佇んでいた彼に声をかけた。
「池ポチャで万事が休したと思った?」と尋ねると、トーマスは悔しさを押し殺しながら「いいえ。奇跡だって起こるかもしれないから、だから僕は最後の最後まで、あらゆる可能性を信じて諦めなかった」と答えた。
敗北しても毅然と胸を張り、ネバーギブアップの精神で戦い抜いたことを誇りに思っている様子だったトーマス。あのときのあの姿勢、あの言葉が本物だったことは、その後の彼の勝ち方に如実に反映されていた。
米ツアー初優勝を挙げた2015年のCIMBクラシックでは、単独首位を走っていた最終日の14番で池に落としてダブルボギー。その時点で3位に後退しながらも15番から3連続バーディを奪って勝利した。
先週のトーナメント・オブ・チャンピオンズのときもトーマスは最終日の15番でダブルボギーを喫し、その時点で松山英樹に1打差に迫られた。だが、慌てることなく持ちこたえ、上がり2ホールの連続バーディーで勝利を手に入れた。
そして今週は初日から米ツアー史上7人目(8度目)の「59」をマーク。その快挙を同組で回っていた親友スピースに祝福してもらえたこと。それはまさにトーマスが信じてきた「奇跡だって起こる」という現象だったと思えてならない。
8歳でゴルフクラブを握ったトーマスが21歳までに挙げた勝利は125勝。「その何倍も敗北を味わった」と彼は以前、語ってくれた。
プロ転向後に挙げた勝利は、これで4勝になったが、今日までに彼が噛み締めた敗北は、なるほど、その何倍もあった。「どんなときも、言い訳はせず、いつもチャンピオンのようにプレーする」自身にそう言い聞かせてきたトーマスは、これからは米ツアー4勝のチャンピオンとして、素晴らしいプレーを見せ続けてくれるだろう。
スポットライトが当たるべき選手に、ようやくスポットライトが当たる日々が到来したことを、今、私はひっそり喜んでいる。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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