がん患者が離職せず働き続ける社会を((shutterstock.com)

写真拡大

 2013年に「全身がんだらけ」をカミングアウトして以降、奇跡的な復活を遂げて、現在も女優業を精力的にこなしている樹木希林さん(74)。

 乳がん闘病中の想いを綴るブログが支持を集め、英国BBCの「影響力を持ち、人の心を動かす女性100人(2016)」に日本人として初めて選ばれた小林麻央さん(34)。

 そんな女性たちの闘病姿勢が共感を呼ぶ一方、国立がん研究センターは昨年12月21日、75歳未満のがんによる死亡率の減少割合が2005年からの10年間で約16%に留まったと公表した。

 事前に国の目標(20%)を下回る結果は予測されてきたが、それを裏付ける喫緊の実測値が明かされた。

 それに先立つ12月9日に「改正がん対策基本法」が衆院本会議で可決・成立した。同改正法は「患者が安心して暮らせる社会」を謳い、がん診断後も患者が就労と治療を両立できるよう企業側の配慮を求めている。

 だが、<ボランティア精神に依存>する本末転倒の患者支援という問題点については本サイトでも触れたとおりだ。
*関連記事「がん対策基本法」は改正されたが......<ボランティア精神に依存>する本末転倒の「患者支援」

6割以上の経営者が「無理」回答

 がん患者の就労支援に取り組む一般社団法人「CSRプロジェクト」(Cancer Survivors Recruiting Project)が行なった全国調査によれば、改正法の掲げる理想(目標)とは程遠い事業主側の本音(現実)が浮き彫りにされた。

 CSRの調査は昨年4月、従業員300人以下の中小企業経営者および個人事業主の計200人を対象に行なわれたもの。うち就労と治療の両立に関する問いに対し、「難しい」「無理」という回答をした層が122人と「全体の61%」を占めた。

 両立の障害理由を尋ねた質問(=複数回答)については、「事業規模からして余裕がない」(93人)が最多。次いで「仕事量の調整が難しい」(42人)との現場性が露呈し、「どのように処遇していいか分からない」(28人)という戸惑いの本音が3位だった。

 では、一重に「中小企業」と呼ばれているが、国内の企業数全体の99.7%を占めているのを、あなたはご存じだろうか。昨春発表された中小企業庁の概要によれば、全国の中小企業数は380万9000社だ。

 その中小で働く計3361万人という従業員数も全体の70.1%を占めている。にもかかわらず、先程のCSR調査の就労と治療の両立に関するすべての質問を通じて、「問題ない」と答えた事業主は200人中71人(35.5%)だった――。

中小のがん失職率も3倍超

 また、同時期にCSRが全国の患者300人を対象に実施した調査でも、がんの診断後の「大手」と「中小」の実相差が確認された。

 診断後の失職率が従業員500人以上の企業では5.1%なのに対して、従業員500人未満の企業の場合は16.8%と「3倍以上」の数値が弾き出され、企業規模が小さいほど高い離職率を示していた。

 調査概要によれば、中小経営者が国などに求める具体的な支援策は、休職中社員の社会保険料の会社負担減免や、患者の就労継続に取り組む企業への助成金などが多かったという。

 だが、国や自治体は障害者・高齢者の雇用企業への助成金制度は設けているものの、がん患者雇用を促す制度は、いまだ確立されていない。

 折しも内閣府は昨年末、技術革新などがなされない場合の生産年齢人口減(2030年で1%減)による低成長定常化を想定し、高齢者の定義を「70歳以上」に引き上げることも提案。

 新年を迎えた5日には、日本老年学会・日本老年医学会が従来「65歳以上」とされてきた高齢者の定義を「75歳以上」にするべきだと提言した。日本人の死因第1位は変わらず「がん」、その「75歳未満」の死亡率減が目標値を下回る以上、そんな論議もどこか空しく響く。
(文=編集部)