「HUNTER×HUNTER」25巻を振り返る。好色家ビゼフは「幽☆遊☆白書」ではどのポジションか

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冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』が休載されてから25週目。今回は単行本25巻を振り返る。


25巻はこんな話


いよいよキメラ=アントの根城である宮殿に乗り込み直接対決を展開していくハンターたち。王VSネテロ、シャウアプフVSモラウ、モントゥトゥユピーVSナックル・シュート、ネフェルピトーVSゴンと、それぞれが標的と対峙する。
蟻からすれば突然の人間たちの乱入。浮足立っているやつや、どさくさまぎれで成り上がってやろうと目論む連中もいる。混乱する虫たち。その中に、人間であるビゼフ長官の姿があった。

自分の命は守りつつもきっちり甘い蜜を吸うビゼフ長官


ビゼフはアリたちが侵攻した東ゴルトー共和国の影の実力者。何もしない総帥の裏で行政を指揮している。人間は皆殺しにされたのだが、代わりの利かない役割を持っていたため、唯一生かされた。
虫たちがそれぞれの思惑、野心を働かせている中で、一人コソコソと気に入った女を連れ込み、色欲を満たしていた。
間者として送り込まれたパームにもあんなことやこんなことをしている。大きなベッドでビゼフが大の字でいびきをかき、その足元には大人の玩具が置いてあった。タオル一枚を身に纏ったパームからは、軽蔑するように唾を吐かれている。
男というのはピンチになればなるほど性欲が高まるという話もある。ただのスケベな男なんだな、と思っていたら、歪んだ変態性を持ち合わせているのが25巻で判明する。

東ゴルトー共和国の、数万人の国民を宮殿前に並べて先頭から殴り飛ばしていく国民大会。念を込めた攻撃を喰らって、9割の国民は死ぬ。生き残って能力に目覚めた1割の人間は、洗脳を受けて兵隊にされる。プフが鱗粉を撒いているため、列に並んでいる国民はパニックになることなくヨダレを垂らしてうつろな表情で行進していく。

将軍の横で私も何度も観ているがあれは…
性交とは全く別の 得もいえぬ 快感!!!

見晴らしのいい宮殿の上から国民大会を眺めるのに快感を覚えてしまうビゼフ。キメラ=アントという怪物たちに囲まれながら、自らの命を守りつつ、性欲、征服欲をきっちり満たしている。

ビゼフは幽白でいうと誰のポジションなのか


HUNTER×HUNTERのキャラクターは冨樫の過去作『幽☆遊☆白書』の登場人物のポジションと似通っていることがある。ゴンは浦飯(主人公枠)、キルアは飛影(猫目)、クラピカは蔵馬(知略キャラ)、レオリオは桑原(人情系)、クロロは仙水さん(おでこ)というように。


ビゼフは幽白でいうところの単行本14巻171ページに登場するオッサン二人組のポジションに似ている気がする。
無数に転がる妖怪の惨殺体、バラバラにされた内臓や眼球、蹲って怯える妖怪娘、それを恍惚に浸ってうっとりと眺める人間たち。山深い別荘の一室で、まだ純粋だったころの仙水さんが目撃した光景である。
これが悪堕ちのきっかけとなった仙水さんはその場に居合わせた人を全員殺害。人間のこれまでの悪行をまとめたビデオ「黒の章」を霊界から盗み出して、これを視聴し、「人間は滅ぶべきもの」という確信を元に、魔界の扉を開くことに決めるのである。
今、このシーンを見返してみると、ビゼフも国民大会の死の行列を、オッサンたちみたいな表情で見ていたんだろうなと思えてくる。
ちなみに「黒の章」を見た御手洗によると「殺されるために並んでいる子供の列やその横で蹲ってるウジ虫だらけの死体、鼻唄まじりでいかにも「楽しんでます」って顔つきで殺ってる奴ら」などがビデオに収録されているらしい。ここでも国民大会と重複する部分がある。

ビゼフは誰に粛清されるのか


結局、キメラ=アント編終了後も生還を果たしたビゼフは、流星街に逃げ延びた。クロロの生まれ故郷である。クロロと言えば、オールバックで額に印がついているという点で、登場初期は仙水さんポジションじゃないかと考えられていた男。仙水さんが別荘にいた人間を皆殺しにしたように、ビゼフもクロロに殺されるのか、とも思ったのだが……。
そもそもクロロが情で人を殺しそうもないし、髪型が変わってしまったし、暗黒大陸に向かおうとしているし。そういう展開は起きそうにない。
何らかの形でアルカ、または暗黒大陸のアイと邂逅し、おねだりミッションに失敗して死ぬんじゃないかと予想する。
(山川悠)

参考→『HUNTER×HUNTER』再開を待ちながら1巻から読んでみる