■「月刊・白鵬」第68回:2017年の目標

【昨年はケガや病気に苦しんだ横綱。今年は万全な状態を作って、
さらに優勝回数を増やしていくつもりだ。
そしてもうひとつ、横綱は新たな記録に挑んでいくという――。】

 2017年最初の本場所となる大相撲初場所(1月場所)が、すでに両国国技館で始まっています。今場所は1月8日の初日を迎える前から、前売りチケットが千秋楽まで売り切れという盛況ぶりだとか。私たち力士としては、とてもうれしく思いますし、みなさんに一層いい相撲をお見せしたい、という気持ちが強くなっています。今年も引き続き、大相撲をどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、昨年の私の成績は、春場所(3月場所)、夏場所(5月場所)と、優勝は2回でした。夏場所以降は、相次ぐケガや病気に悩まされました。名古屋場所(7月場所)からは思うような相撲が取れず、秋場所(9月場所)は横綱になって初めて全休することになってしまいました。

 それだけに昨年の後半は、正直悔しい思いでいっぱいでした。ケガと病気に泣かされた1年、と言ってもいいかもしれません。

 そんな中、昨年は多くの力士たちが奮闘。初場所で大関・琴奨菊が初優勝を果たし、名古屋場所は横綱・日馬富士が制し、秋場所では大関・豪栄道が初優勝を飾りました。そして、最後の九州場所(11月場所)では、横綱・鶴竜が混戦を制覇。通算3度目の優勝を遂げました。

 賜杯を抱いた力士は5人。なかでも、琴奨菊と豪栄道の優勝は、日本出身力士の横綱誕生なるかと大きな期待が膨らみ、日本中の注目の的となりました。そうした話題で盛り上がったことは、本当によかったと思います。

 こうして、毎場所のように優勝争いが白熱し、さまざまな顔ぶれが優勝力士となったことで、「相撲って、面白い」と思ってくださった方が結構いらっしゃるようですね。そういうファンの期待どおり、今年も熾烈な争いが繰り広げられることでしょう。

 しかしながら、そんな状況にあって、私は改めて「強い横綱でありたい」と思う気持ちが強くなって、「38回目の優勝を狙いたい」という意識が高まっています。私としては、混戦を望むファンのみなさんの期待を裏切る活躍を目指して、がんばっていきたいと思っています。

 それだけの決意を秘めていましたから、昨年最後の宮城野部屋での稽古を終え、恒例の餅つきをしたあと、束の間のオフの間も、相撲のことが頭から離れませんでした。9月にヒザの手術をしたこともあり、休暇中は暖かい場所で体を慣らしたいと思ってグアムで過ごしていましたが、海を眺めながら、常に初場所のことを考えていました。

 ただ、それはどんな力士でも同じではないでしょうか。年末年始だとしても、場所前特有の緊張感があるからです。しかも、今年の初場所は例年よりも早く、年明け早々の1月8日が初日。まさに「待ったなし!」の状況でしたから、私は休暇先でも意識的に体を動かしていました。

 帰国後も、翌日からすぐに稽古場に下りて、体の動きを確認しました。その後は、日馬富士をはじめ、これまでに苦杯をなめたことのある大関・照ノ富士、前頭筆頭の宝富士ら6人の関取がいる伊勢ヶ濱部屋に出稽古にいきました。横綱同士で胸を合わせることはなかったのですが、自分なりに納得がいく稽古ができたと思っています。

 迎えた初日、相手は新関脇の正代。九州場所で11勝を挙げて敢闘賞を受賞。このところ急速に力をつけてきた若手力士のひとりです。やはり初日というものは緊張感がありましたが、引き落としで勝ち星を挙げることができました。

 続く2日目は、宝富士に寄り切り勝ち。そして3日目は再び、正代同様、若手のホープとして期待されている前頭筆頭の御嶽海と対戦。先場所では上位陣に跳ね返されて負け越したものの、この場所では2日目に日馬富士を破って金星を挙げ、波に乗っていました。その勢いはさすがでしたが、寄り切り勝ちを収めることができました。

 こうした若くて、勢いのある相手に、描いていたイメージに近い形で白星を挙げることができたのはよかったです。38回目の優勝へ向けて、幸先のいいスタートが切れたと思います。

 私には今年、もうひとつ大きな目標があります。昨年の九州場所で通算1000勝を達成したことで見えてきた、魁皇関(元大関=現・浅香山親方)が持つ最多勝利記録(通算1047勝)です。

 通算1000勝を達成した際、メディアの方々から次の目標を聞かれた私は、「1001勝です」と答えました。それは、1勝を挙げることの重みを、改めて実感した1年だったからでもあります。

 だからこそ同時に、次は史上最多勝利という偉大な記録に並ぶことを、自分の目標に据えたのです。そして、もし並ぶことができたなら、次の目標はもうひとつ白星を挙げること。その大きな1勝を、ぜひつかみ獲りたいです。

 初場所は、その足がかりになるような場所になればいいですね。元気な体で土俵に上がってこそ、得られるのが白星。そのためにも今年は、病気やケガを少なくしていきたいです。

 ところで、初場所後には今度で7回目となる少年相撲大会『白鵬杯』が両国国技館で開催されます。今年は、世界5カ国から1200人近い子どもたちが集まることになっていて、団体戦に参加するチームも150を超える大きな大会になりそうです。

 昨年の大会に初参戦した、私の長男・眞羽人(小学2年生)も再び出場する予定です。昨年は1回戦で敗れてしまいましたが、「今年こそは!」と意気込んでいるようです。

 宮城野部屋での合宿や稽古場でも、四股を踏む姿がだいぶ様になってきていましたし、一生懸命取り組んでいるところは、何より好感が持てます。父親としては、この1年間の稽古の成果を存分に出してほしいな、と思っています。が、一番は勝敗に関わらず、「相撲って、楽しいな」と感じてくれればいいですね。

 それは息子に限らず、参加する全選手に望むことです。みんなが相撲を好きになって、「白鵬杯に出てよかったな」と思ってもらえる大会になればいいな、と今から祈っています。

武田葉月●構成 text by Takeda Hazuki