トランプ発言の真意は?(トランプ氏のFacebookより)

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 問題の発言が飛び出したのは今月5日。2019年の稼働を目指してメキシコに新工場を建設中のトヨタに対し、トランプ次期アメリカ大統領が自身のツイッターで、〈ありえない! 米国内に工場を作らないなら高額の『国境税』を払え〉と事実上の工場新設の撤回を求めた。

「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げるトランプ氏は、これまでも米国内の雇用増大を最優先に掲げ、メキシコに工場を持つ米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)やメキシコに新工場を計画するフォード・モーターに「口撃」を仕掛けてきたが、それが日本企業にまで及んだのだ。

 トランプ砲の威力は想像以上に強かった。このツイート後、トヨタ株は一時、前日終値比で219円(3.1%)下がり、同じくメキシコに工場を持つ、日産自動車、ホンダ、マツダといった日本の大手自動車株も軒並み下落した。

 米国ではトランプ氏の“政策”を受けてフォードがメキシコ工場の断念を発表した経緯もあり、世界中からトヨタの対応に注目が集まった。その中で飛び出したのが豊田章男・社長の起死回生の一手だった。

 9日、米デトロイトで開催された北米国際自動車ショーで豊田氏はメキシコ工場の計画に変更がないことを述べた上で、「これまでの60年間で米国に220億ドル(約2.5兆円)を投資してきたが、今後5年間でさらに100億ドル(約1.1兆円)を米国に投資する」と表明。慎重な姿勢で知られるトヨタが即断即決で1兆円規模の投資計画を明言したことは、日米の経済界で大きなインパクトを持って受け止められた。

 米国の市場関係者が「さすがトヨタはスケールが違う」と持ち上げる一方、日本の財界関係者の間では「日本企業特有の弱腰対応だ」などの批判も囁かれている。この“1兆円投資宣言”は吉と出るか凶と出るか。

『トランプ革命で復活するアメリカ―日本はどう対応すべきか』の著者で、早くから大統領選でのトランプ勝利を予想していた国際政治学者・藤井厳喜氏の見方だ。

「そもそもトランプが問題視しているのは、米国国内の雇用を減らすことです。トヨタは米国国内の工場を閉めてメキシコに新工場を作るわけではない。メキシコ国内で雇用が生まれることは不法移民を抑えることにもつながり、トランプ政策にはむしろプラスと考えられます。

 しかし、そうした理屈を説明してもトランプは聞かない。そこでトヨタは1兆円というインセンティブを示した。しかも、このタイミングで出したことでトランプに良いイメージを与えた。結果的にメキシコ工場の撤回は避けられるでしょう」

 フォードと比べれば、トヨタの対応はトランプ発言の真意を見抜いた「最高のアンサー」だったというのだ。

※週刊ポスト2017年1月27日号