領海侵犯した中国船を追う海上保安庁の巡視船 共同通信社

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 著書『中国4.0』が話題のエドワード・ルトワック氏は、トランプ新政権は中国の冒険主義的な行動をもはや許容せず、米中関係は大きく変わると予測する。そんななか、今年、中国が尖閣諸島への侵略を実行に移す可能性があると語る。「米中関係」と「日米関係」から分析した、その対策を産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が聞いた。

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 日本について言うならば、2017年には中国が尖閣諸島に多数の「漁民」を軽武装で上陸させてくる可能性がある。実際には民兵であるこれら「漁民」は人民解放軍の指揮下にある「漁船」で上陸し、日本側が出動させるヘリコプターに対してフレア・ガン(照明弾や発煙弾を発射する信号銃)を一斉発射して撃退するだろう。

 この尖閣攻撃は、中国側が日本のなまぬるい対応を事前に知っているためにその可能性が高くなってきた。

 日本側は憲法上の規制などで尖閣に侵入してくる中国の軍事要員に対しても警察がヘリで飛来して、違法入国で逮捕し、刑事犯として扱おうとする対応を明らかにしている。だから中国側の偽装漁民はフレア・ガンでまずそのヘリを追い払うわけだ。ヘリがフレア・ガンに弱いことはよく知られている。この場合、米軍の介入も難しくなる。

 日本に必要なのは、尖閣諸島を、重要施設が集中している「東京都千代田区」と同じにみなし、そこへの侵略は本格的な軍事作戦で撃退することだ。日本側はいまその軍事反撃ができないことを内外に広報しているような状態であり、中国の侵略をかえって誘発する危険を高くしている。

 日本は自国の防衛のために現実的かつ本格的な軍事作戦を遂行する意思や能力があることを示さねばならない。そのことこそが中国の軍事的な侵略や威嚇への抑止となるのだ。

 トランプ次期大統領の安倍晋三首相への信頼度は高い。安倍氏をいまの世界で最高水準の指導者とみなし、日本をアメリカにとって第一の同盟国とみていると言える。11月17日の両首脳の会談ではトランプ氏は安倍氏に中国への新たな強硬策を伝えたと私は聞いている。

 だからトランプ政権下では日本は中国に対して強い措置をとる際にこれまでのようにアメリカ政府にいちいち了解を求める必要はもうなくなるだろう。

 トランプ氏は安倍首相に今後のアメリカが中国に対して新たに厳しい姿勢をとることを内密に告げ、その後に台湾の蔡英文総統と電話会談することでその姿勢を内外に明示したのだ。

 だから2017年は、アメリカはこれまでと異なる対中政策をとり、その結果、まったく新たな米中関係が始まるだろう。その変化は日本にとっても、プラスが多いと言える。

【PROFILE】1942年、ルーマニア生まれ。ロンドン大学、米ジョンズ・ホプキンス大学で学び、国防省長官府任用。現在は戦略国際問題研究所(CSIS)上級アドバイザー。『自滅する中国』『中国4.0』など著書多数。

※SAPIO2017年2月号