金正恩氏

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中国で暗躍していた北朝鮮のIT関係者、約10人が集団脱北したと韓国のMBCニュースが報じた。彼らは主に外貨稼ぎに携わっていたという。

もし、これらのIT関係者が韓国入りするとなると、知られざる北朝鮮サイバー部隊の一端が明らかになる可能性もある。それは、同時にサイバー攻撃に力量を投入している金正恩体制に少なからずダメージを与えるかもしれない。

正恩氏のわいせつ動画

北朝鮮のサイバー部隊の主な目的は二つある。一つ目は、インターネットを通じた政治工作だ。韓国の情報機関である国家情報院によると、北朝鮮のサイバー部隊はフェイスブックなどのSNSでハニートラップを駆使し、韓国政府の主要人物が保有するスマートフォンにさえもサイバー攻撃を仕掛け、一部が成功していたという。

2014年に、金正恩氏の暗殺を描いたコメディ映画「ザ・インタビュー」をめぐって配給会社であるソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)に対して大規模なサイバー攻撃が仕掛けられた。この事件に関して米政府は北朝鮮が関与したと断定しているが、真偽はいまだに不明である。

北朝鮮は一貫して潔白を主張したが、日頃からサイバー攻撃を展開していることから犯人扱いされてしまった。また事件の思わぬ余波として「ザ・インタビュー」が自国へ流通することを恐れた北朝鮮当局が過剰反応し、挙げ句の果てには「元帥様(金正恩氏)が登場するわいせつ動画が存在する」という怪情報まで出回ることになる。

サイバー攻撃の二つ目の目的は外貨稼ぎだ。今回、集団脱北したとみられるIT関係者は、金策(キムチェク)工業総合大学の出身者だという。研修生の身分で中国に滞在していたというからサイバー部隊の卵かもしれないが、表向きは欧州企業の下請けとしてコンピュータプログラムを作成していた。しかし、実際はハッキングを目的とした不正プログラムを作成して中国国内の非合法組織に売り込み外貨稼ぎをしていたという。

北朝鮮の秘密警察である国家保衛省(前国家安全保衛部)は、中国の諜報機関である「中国国家安全部」に彼らの行方不明を通告し、調査を依頼したようだが身柄を確保できないという。彼らは今どこで何をしているのだろうか。また、韓国に入国できなければどうなるのだろうか。というのは、北朝鮮から逃れた脱北者が韓国に行けず中国での潜伏生活を強いられるケースが多かれ少なかれあるからだ。

このような脱北者たちは、あくまでも不法滞在者ゆえに、裏の世界に関わることも少なくない。例えば、潜伏生活を余儀なくされている脱北女性の多くが、中国のネット上でセックスワークを強いられている実態を米紙ワシントン・ポストが報じている。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

その結果、中国で潜伏する脱北者は裏の世界で生きて行かざるをえなくなり、ますます不法滞在者としての負のイメージが定着するという悪循環が続いている。中国政府にとってもこの問題は頭が痛い話だ。下手に脱北者を摘発すれば、北朝鮮へ送還しなければならず、人権問題として問題視されかねない。だからといって放置しておけば、脱北者たちはどんどん中国の闇社会で暗躍するからだ。

そして、冒頭に述べたように最もダメージを受けるのは金正恩氏だ。MBCニュースによると、北朝鮮のサイバー部隊は約580億円から680億円の外貨を稼ぐという。集団脱北した10人が稼ぐ外貨の額は不明だが、今回の事件を引き金に金正恩氏の貴重な金づるが逃亡するケースが増えるかもしれない。