「Amazon HP」より

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 米アマゾンが、家庭でのプレゼンスを高めつつある。

 毎年さまざまな家電製品が各メーカーから投入されているが、革新的な製品は少ない。だが近年、音声アシスト機能を搭載した端末「スマートホーム・アシスタント」の開発競争が高まり、家庭での覇権争いを展開している。その嚆矢となったのが、2014年の終わりに発売されたアマゾンの「エコー」である。

 エコーは、音声アシスト機能である「Alexa(アレクサ)」を搭載したスマートホーム・アシスタントであるが、昨年の米国クリスマス商戦で品切れとなり、この分野でリーダーとしての地位を築くことに成功した。

 米国のクリスマス商戦といえば、各社が毎年自社製品の販売にしのぎを削る。特に昨年はホットな製品が多く、任天堂の「NES Classic」や「ポケモンGOプラス」、米アップルの「AirPods」、ソニーの「プレイステーションVRヘッドセット」などが注目を集めた。

 エコーはこれら競合製品を差し置いて、メインの通販サイト「Amazon.com」を皮切りに、さまざまな販売チャネルで次々と品切れを記録した。

 販売好調の引き金となったのが、価格の値下げである。

 エコーは正規の小売価格200ドルに対して180ドルに設定されたが、さらに22%減の139.99ドルまで値下げが進んだ。これは明らかに競合の「グーグル・ホーム」(129ドルで発売)を意識した価格である。また、アマゾンの音声アシスタント内蔵スピーカー「エコー・ドット」も従来価格89.99ドルに対し50ドルで設定されたが、最終的に20%減の39.99ドルまで価格を下げた。

●バリューチェーンのすべてをカバー

 グーグル・ホームとの比較で考えると、同様の機能を持ち同程度の価格であるエコーを米国の消費者はなぜ選ぶのか。実際に2016年第3四半期までのエコーの販売実績は500万台を超えて好調を維持している。先行者優位も考えられるが、アマゾンには人の暮らしの導線を捉えた一連の製品システムがすでに構築されているのが最大の要因であろう。

 たとえば、エコーとのやりとりのなかで「キッチンペーパーがなくなった」と語りかければ、エコーが自動的にアマゾンに注文を出し、数時間以内には手元に届けてくれる。これは、アマゾンが構築したシステム、すなわちデバイスであるエコー、音声を認識するアルゴリズム、注文を受けるEC、さらには商品を届けるロジスティクスといった個々のプロセスが緊密に連携することにより成せる業である。

 こうした消費者の購買行動に対応したバリューチェーンのすべてを自社でカバーすることで、アマゾン・エコーは消費者の支持を得ているわけである。日常生活の中で消費者が感じ取る便益とは何かを常に念頭において、自社のバリューチェーンをそれに合わせて強固に構築することを怠らないアマゾン。今年の新たなる一手は何か、興味深いところである。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)