金正恩氏

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米国のトランプ次期政権の発足が、間近に迫っている。

現オバマ政権は、北朝鮮における人権侵害の責任を問い、史上初めて正恩氏を制裁指定した。これに対する正恩氏の怒りは凄まじく、ブチ切れて周りに当たり散らし、拳銃を乱射したとの情報もあるほどだ。

麻酔なしで手術

一方、トランプ政権が発足したらどうなるのか。トランプ氏やそのブレーンたちも、「北朝鮮の人権問題は重大だ」くらいのことは言うかもしれない。しかしその度に、人々は彼の発してきた人種差別的な言葉の数々を想起するだろう。北朝鮮に対する人権包囲網が、これまでに比べ真剣味の薄れたものになるのは大いにあり得ることだ。

それでも、この間に成し遂げられた北朝鮮の人権問題に対する取り組みが、大きく後退することはないだろう。トランプ政権は数年で終わるだろうし、その間に金正恩体制の人権犯罪が忘れ去られることもない。

いま重要なのは、北朝鮮の人権侵害の責任者たちを追及するその時に備え、事実の記録を蓄積しておくことかもしれない。

韓国の民間団体が運営する対北短波ラジオ「国民統一放送」はいま、独自に人権侵害被害者の証言の掘り起こしを行い、その証言を北朝鮮に向け発信している。

その証言者ひとりが、脱北女性のキム・チャンミさんだ。2007年、チャンミさんはいったんは中国へ逃れたものの北朝鮮に強制送還され、拘留場、集結所、教化所に収監され、壮絶な人権侵害を受けた。とりわけひどいのが、北朝鮮の収容施設で当局幹部により性的虐待され、妊娠させられ、麻酔もせずに中絶手術をされたというものだ。

(参考記事:刑務所の幹部に強姦され、中絶手術を受けさせられた北朝鮮女性の証言

また彼女が描写する収容施設内部の様子も凄惨そのものだ。収容施設では毎日のように栄養失調による死者が出ており、その死体を焼く匂いが常に漂っていたという。チャンミさんは、「その匂いは、人を絶望させるものでした」と語っている。

こうした情報は近年、様々な経路で北朝鮮国外に伝えられるようになっている。2013年8月、北朝鮮の有名芸術団のメンバー9人がポルノ動画を撮影し、頒布したとして公開処刑された事件があったが、その真相も、最近になってわかってきた。ポルノは北朝鮮では御法度かもしれないが、処刑は明らかに行き過ぎだし、人権侵害のひとつと見るべき出来事だ。

もちろん、北朝鮮当局はこれらすべてを「嘘だ」と否定するだろうが、多数の証言によって裏付けられた情報を目の前にして言い逃れをするのは、実際のところきわめて難しいものだ。

ただ、そのような証言と情報を集めるには物理的に時間がかかる。いまこそ、それに取り組むべきときなのかもしれない。