『中韓関係を悪化させた米軍のTHAADミサイル。写真:米陸軍』

 日韓関係が従軍慰安婦の少女像設置問題で揺れている。

 しかし、韓国が本当に頭を悩ませているのは日本との関係ではない。中国だ。

 2016年夏、アメリカ軍が開発したサード(THAAD)ミサイル(高高度防衛ミサイル)を韓国国内の米軍基地に設置することが発表された。サードが配備されると北朝鮮から発射される弾道ミサイルが無効化できるが、同時に、レーダーによって中国国内を広範囲で監視できるようになる。

 兵器の性質上、攻撃のための配備ではないが、中国はこれに激怒。それ以降、中韓関係は冷え切ったものとなり、もはや「報復」を通り越して「いじめ」に近いレベルに達している。

 韓国の観光業界は、日本と同様に、ここ数年は中国からの旅行者で賑わいを見せていた。それが日を追うごとに目に見えて減ってきたという。

 中国政府が「韓国への旅行を控えるように」という指針を旅行会社に出したのだ。それにより韓国の観光地では「中国人観光客が30%も減少した」と言われる地域もある。

 旧正月を祝う春節は中国人観光客が増えることから航空便が増便されるのが常だが、2017年は数多くの申請が却下されていたこともわかった。

「今年の春節は今まで以上にヨーロッパ旅行が人気だそうです」

 そう教えてくれたのは上海に在住中のA子さん。駐在員の夫と一緒に上海で暮らし始めて3年になる。

「それと変わったことがもうひとつ。今までは韓流のエンタメが大流行していたのですが、その規制も始まりました。それからすぐに日本のアニメ『君の名は。』が大ヒットしたんです。それまで日本のエンタメはあまり人気がなかったので、とても驚きました」

 韓流スターを使ったドラマや広告の締め出しも行われ、出演者の差し替えが着々と行われているという。こうした真綿で首を絞めるような「限韓令」に、韓国の苦しみは大きい。

 もちろん、もっと直接的な攻撃もある。先日は韓国製の光ファイバー商品への反ダンピング関税を5年間延長することが発表された。ほかにも韓国製の自動車のバッテリーに対する補助金が制限されるなど、韓国が得意とする家電や自動車製品に狙いを定めてゆすぶりをかけている。

 中国への輸出依存度が高い韓国は、大きな経済不安を抱えた状況となった。

 そして、さらに大きな問題が目の前に迫っている。

 日本との関係がギクシャクし始めてから、「日韓スワップ協定」の協議が中断したことは大きく報じられた。スワップとは通貨危機の際の金融支援のことだ。

 同様のスワップ協定は中韓でも結ばれていて、その額は500億ドル以上。こちらは2017年10月に期限を迎え、再度締結されるかどうかは極めて流動的だ。もし協定が終了すれば、韓国経済にとって非常に大きな打撃となる。

 深まる対立のなか、韓国の立場は不安定なものになってきている。国内情勢も混とんとしている現状で、韓国は今後どのような打開策を見出すのだろうか――。