皮下脂肪でも内臓脂肪でもない“第三の脂肪”と呼ばれる「異所性脂肪」が、このところ医学界で注目を集めている。
 山梨医科大学名誉教授の田村康二氏がこう説明する。
 「脂肪は脂肪細胞のある場所に溜まっていくものです。しかし、そこに収まりきらなくなると、臓器や筋肉細胞の中に溜まっていく。本来、溜まらないはずの場所に付くという意味で、これを異所性脂肪と呼んでいるのです」

 異所性脂肪は、本来の貯蔵部位である脂肪組織に溜まった脂肪とはまったく付き方が異なる。
 「脂肪細胞の数は人によって個人差があり、当然、少ない人もいますが、そのような異所性脂肪が溜まる人は、見た目は痩せ型体型を保ったまま、中性脂肪が臓器に付着していくのです」(田村氏)

 食べても太らない、痩せの大食いタイプと安心していたら、健康診断で血糖値やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の数値が高くて驚く人もいる。また、メタボ検診で“異常なし”の結果が出たのにもかかわらず、異所性脂肪が付いているケースもあるという。
 関東医療クリニック院長で、内科医の松本光正氏にも聞いてみよう。
 「異所性脂肪という言葉は最近できたもの。普通は脂肪のない膵臓や肝臓、心臓、筋肉に脂肪が付くものを言います。内臓脂肪、皮下脂肪とは別なので、“第三の脂肪”と呼ばれるのです。原因は、大抵が食べ過ぎでしょう。健康によくないことは言うまでもありません」

 では、異所性脂肪によって引き起こされる代表的な病気には、どのようなものがあるのか。
 さる大学病院の男性医師が言う。
 「脂肪肝や痛風、すい炎などでも、太りやすい人は余った中性脂肪を皮下脂肪や内臓脂肪で吸収する余地が高いと言えますが、痩せている場合は少ない脂肪細胞がすぐに一杯になり、実質的な臓器細胞にまであふれ出してしまいます」

 異所性脂肪が溜まり過ぎかどうかは、外見上からは判別しにくい。そのため、血液検査などで生活習慣病にかかわる主な数値項目(血糖値・LDLコレステロール値・中性脂肪値)の異常値を指摘されたら、体重の増減がなくとも体内の中性脂肪がオーバーフロー気味という自覚を持ち、食事や運動での対策をとるべきだという。
 「放置したままだと、肝臓などの臓器そのものが傷つき、肝硬変など、より深刻な病気を招きかねません。糖尿病の場合は、予備軍から合併症の発症など、病状そのものの悪化が確実に進むことになるのです」(同)

 こんな例がある。
 Aさん(男性・45)が朝目覚めると、胸が痛くて息苦しく、たまりかねて病院に駆け込んだ。すると急性心筋梗塞と診断され、そのまま入院、手術となったが、執刀した医師は、その時のことをこう説明する。
 「Aさんの心臓の周りに、脂肪がベットリとくっ付いていました。その異所性脂肪が悪さをして、40代という若さで急性心筋梗塞を引き起こしたのです」

 Aさんは肥満体型ではなく、むしろ痩せ型だったという。しかし数年前、中性脂肪の数値が500㎎(40代男性平均=171㎎)を超え、医師に指摘されたことがあった。酒は飲まないが、焼き肉が好物で、大盛りご飯を2膳もペロリと平らげてしまうほどの大食漢だった。
 「急性心筋梗塞の治療前の映像を見てみると、冠動脈が完全に詰まり、血流が途中で止まっていることがはっきりと分かりました。血管を広げるカテーテル治療を行わないと生命にかかわる状態だったのです」(同)