人気の大都市は住民が減るという皮肉。

勢いのとどまらないシェアリング・エコノミー。UberやAirbnbのように個人が持つ資産やスキルをネット技術を介して他の人とシェアをするサービスのことですが、何も海外だけの話ではありません。Airbnbに代表される「民泊サービス」は日本でも徐々に普及しつつありますし、総務省は「シェアリング・エコノミーの国内市場規模は2014年度に約233億円であったが、2018年度までに462億円まで拡大すると予測されている」と毎年のように情報通信白書でシェアリング・エコノミーを取り上げています。

ちなみに世界規模で見ると「2013年に約150億ドルであったが、2025年までに約3,350億ドルにまで(市場規模が)拡大すると予測されている」とのこと。今後も全世界的に進んでいく傾向なのは間違いなさそうです。


1 シェアリング・エコノミーが都市を変える:Airbnbがパリの住民減、家賃高騰の原因に

シェアリング・エコノミーの例 image: 平成28年版情報通信白書(総務省)


シェアリング・エコノミーによって我々の生活が大きく変わっていくことも予想されています。Airbnbは個別のトラブルもたくさん報告されていますが、さらに大きなスケールでも変化をもたらしているようです。

QUARTZのレポートによると、パリは市の中心部の住民が減っており、その原因の1つにAirbnbがあると批判されているようです。


2009年から2014年の間、パリ1区(ルーブル美術館を有する、小規模な観光客に人気の地域)に住む人々の数は5%減少した。市の中心部の3つの他の区(2区、4区、8区)でも同様に人口減少が起きている。これはフランスの国立総計経済研究所Inseeが1月2日に発表したデータで明らかになっている。市全体では1万3600人の人口減となった。これは約0.6%の人口減である。


出産率の低下も原因として挙げられているものの、大きな理由としてAirbnbを利用して観光客に貸し出すために物件を保有する人が増えたことが指摘されています。

パリ1区の区長であるJean-François Legaretは日刊新聞Le Parisienに対して、「Airbnbはパリ中心部に大惨事を起こしている」と語っています。

Airbnbでこういった物件を貸し出している人たちは、自分たちが住んでいる家とは別に、中心部に物件を購入しているようです。そのため観光客が入れ替わり出入りするけど誰も住んでいない物件がどんどんと増えているとのこと。パリでは他にも死亡者数の増加や生活費の値上がりと人口減少につながる要素がある中、Airbnbのせいで誰も住まないセカンド・ハウスが増えていることでより拍車がかかっているようです。

住むことを希望する人にとっては災難です。空き物件が減り、それによって物件の価格も上がります。若い世代にとってはますます住むのが難しくなり、パリ郊外に出て行く人が増えているとか。

Airbnb用の物件保有が増えることで空き物件が減り、家賃が高騰するという問題を抱えているのはパリだけではありません。Gothamistはニューヨークでも同様の現象を報道しています。Airbnbによって人々が住むことのできる安価な物件の10%が減り、またニューヨークで登録されているAirbnbの物件の半数以上が州法に違反するというレポートも出されています。

Airbnbのデータを分析するAirDNAによるとパリのAirbnb登録ホスト数は3万9000人ほど。そのうち3,000人超が複数の物件でゲストを募集しているようです。ちなみに東京では登録ホスト数が7,400人ほど、複数の物件で募集しているのはそのうち3,000人弱となっています。

しかし一般人にとって有り難い副収入となっているのも事実。宿泊施設の少ない地域にも観光客を呼び込むこともできますし、経済効果も大きいわけです。パリのブルーノ・ジュリアーノ副市長はAirbnbを歓迎する声明を発表しています。自治体としてはなかなか複雑な問題のようです。


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source: 平成28年版情報通信白書(総務省), qz, Airbnb, AirDNA, Le Parisien, Gothamist, skift, ShareBetter

(塚本 紺)