Amazonは小売業界も変えていくのか!?

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「Dash Button」に「GO」ーーAmazonがボタンを押すだけで登録された商品を注文できる端末やシステムを開始した。

『週刊プレイボーイ』の対談コラム「帰ってきた! なんかヘンだよね」で、“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏が、「既存のものを組み合わせて改善する」日本のお家芸が海外に抜かれつつある現状を語る。

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ホリ Amazonがボタンを押すだけで登録された日用品を注文できる「Amazon DashButton」を始めたね。

ひろ 面白いですよね。端末に物理ボタンがついていて、そのボタンを押せば注文できるんですよね。

ホリ これは便利だと思うよ。今は水とか洗剤、ペットフードなどだけど、もっと商品数が増えると思う。

ひろ ギーク的な見方をすると、この端末って改造しがいがありそうだなぁと。要は無線を使っているので、「水を注文する」っていう信号を別のものに変えればいいだけですから。

ホリ あ、もうハックしてる人はいるらしいよ。照明のリモコンにしてみたり、ドミノ・ピザをオーダーするように改造した人もいるみたい。

ひろ じゃあ、これからいろんな使い方が生まれそうな予感がしますね。端末が1個500円しますけど、初回注文時に500円引きになるので実質タダなんですよ。つまり、改造可能な無線端末がタダでもらえるってことなんですね。言い方を変えれば「Amazonは無料の無線キットを世界中に配っている」わけで、こういう太っ腹な企業のおかげで、社会にいろんな面白いものが増えるのはいいことだと思います。

ホリ Amazon的には面白くないだろうけどね(笑)。

ひろ ただ、調べてみると別の用途で使うのはAmazonの利用規約的にはNGです。しかも、送信先はAmazonに固定されるような仕様になっているみたいなので、照明のリモコンやドミノ・ピザ用にハックした人は、信号をジャックして別のパソコンなりで自動的に処理する方法をとったんでしょうね。

ホリ Amazonでいえば、同じ時期に発表したレジなし食料雑貨店の「Amazon Go」もインパクトあるよね。

ひろ 入店の時にQRコードを店の端末に読み込ませておけば、商品をそのままカバンに入れて店を出ても、後からネット決済してもらえるっていうシステムですね。

ホリ 駅の改札みたいな読み取り端末を通って入店するんだけど、チェックインにQRコードを使うってのがいいよね。

ひろ 最初に認証した人しか入れないってのは効率的ですよね。入店時に認証すれば、万引きもなくなりますから。

ホリ 一番面白いのが、商品を認識する方法だよね。俺は商品にICタグをつけてゲートとかでチェックするのかと思ってたけど、Amazonがやったのはディープラーニングを使った映像認識だったんだよね。映像で客が何を買ったのか管理してるんだよ。これには正直ビックリした。

ひろ 実際に買い物をしている映像を見てみましたけど、かなりリアルタイムに認識してますよね。まあ、映像認識のエラーを少なくするためにも、今は商品数を絞っているんでしょうけど。

ホリ Amazonがリアルな書店を展開してたけど、あれってこの新サービスのデータ取得のためだったらしいんだよ。本当に抜かりないと思うわ。このシステムって、既存のコンビニにも導入できるはずだしね。

ひろ 導入はできるでしょうけど、各コンビニの独自商品まで認識するのは難しいんじゃ? 例えばコンビニのおでんの具とかだと、同じ商品でも別のものとして認識しちゃうかもなので、そこはまだ難しい気がしますね。

ホリ おでんもそれに最適化していくんじゃない? 例えば、今は好きな具を容器に入れてるけど、具の一個一個が箱に入ってるとか。

ひろ なるほど、箱ごと入ってると認識はしやすいですね。

ホリ Amazonといえば、あのムダに大きい配送用段ボールのイメージがあるけど、あれは箱を規格化することでトラックの詰め込みに最適化させたんだよね。あのデカイ箱もムダなように見えて効率化には役立ってるんだよね。

ひろ 余談ですけど、エコにうるさいフランスでは不必要にデカい段ボール箱が不評だったりします。なので、Amazonで注文した時に「箱のサイズ大丈夫だった?」みたいなアンケートが来ます。でも、こうやって流通だけじゃなくて、コンビニレベルの小売業界もAmazonが変えていくんですかね…。

ホリ まあ、セブン−イレブンは独自の商品開発をやって攻めの姿勢を見せてるし、ローソンは自動でレジ打ちや袋詰めを行なう無人レジの実証実験を始めたりしてるけどね。

ひろ 世界を見渡しても、小売業界は次世代の動きが出始めてるんです。例えば、中国ではスーパーの特売品を代理購入してくれる人のマッチングアプリがあったりします。それに比べて、日本の小売業界はあんまり進化してない感が強いですよね。

ホリ それは言えるね。どんどん取り残されていきそう。

ひろ タクシー配車アプリの『Uber』が始めたフードデリバリーサービス『UberEATS』もそうですけど、はやりのアプリとか人気のサービスって、結局は既存のシステムと技術の組み合わせばかりなんですよね。この「既存のものを組み合わせて改善する」のは、日本のお家芸だったのですが、最近はどんどん海外に抜かれつつある気がしますね。

ホリ だよね。日本の小売業界ももっと頑張らないと。

ひろ 今の状況はどう考えても日本にとって良くない状態ですから。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)

1972年10月29日生まれ、福岡県出身。旧ライブドア社長。SNS株式会社オーナー兼従業員。『やっぱりヘンだよね』(集英社)が好評発売中

●西村博之(にしむら・ひろゆき

1976年11月16日生まれ、神奈川県出身。元『2ちゃんねる』管理人。近著は『ソーシャルメディア絶対安全マニュアル』(インプレスジャパン)

(構成/杉原光徳 加藤純平 イラスト/西アズナブル)