『ザ!鉄腕!DASH!!』HPより

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 あのDASH村が復興のシンボルに──いま、こんなニュースが世間を賑わせている。ご存じのようにDASH村とは、TOKIOの人気番組『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)の企画で開墾された里山の一区画で、福島県浪江町の山間部・津島地区にあるが、事の発端は12日付の福島民友新聞に掲載された高木陽介経済産業副大臣の取材記事だ。

「帰還困難区域の解除に向けて一歩踏み出して前進する中、DASH村の復興に向けた手だてがあるのではないかということについて協議を始めたい。帰還困難区域の復興の大きな柱にできないかと考えている」

 同記事によれば、高木経産副大臣は〈5年後をめどに、復興祈念館や体験農園のような形での再生を目指す〉のだという。だが、そんななかで『ザ!鉄腕!DASH!!』のプロデューサーである日本テレビの島田総一郎氏は、ツイッターにこんな投稿をおこなった。

〈知らぬ存ぜぬとは まさにこのニュースの事 そもそもDASH村は 誰かのものでは無いですし〉

 つまり、DASH村の復興計画は日テレの番組関係者にも伝えられていない、政府サイドだけの構想だったのだ。それでも、このDASH村復興計画にネット上では「いいアイデア」「復興のシンボルにぴったり」という好意的な意見が寄せられた。

 だが、ちょっと待ってほしい。たしかにDASH村の知名度は抜群だし、自然ゆたかなあの里山をもう一度見たいと願う視聴者も少なくないだろう。この場所をシンボルにすることは福島の復興を進めるうえで多くの人の関心を集めることもできるはずだ。

 実際、浪江町はいまだ全域に避難指示が出ており、町の8割にもおよぶエリアが帰宅困難区域に指定されている。今年3月には一部が避難指示解除されることが想定されているが、DASH村のある津島地区は事故から5年が経ったいまも除染はおこなわれていない。

 そうしたなか、政府は先月20日に福島の復興指針を改定し閣議決定。帰宅困難区域に5年を目処に避難指示解除を目指す「特定復興拠点」を設け、同拠点の除染費用として2017年度予算から300億円を計上した。浪江町は「特定復興拠点」として津島、大堀、苅野の整備を求めており、この「DASH村復興計画」を考えれば、津島地区が「特定復興拠点」に選ばれる可能性は高いようにも思える。

 しかし、この「特定復興拠点」以外はどうかといえば、相変わらず除染の方針は定まっておらず、〈拠点を設けることが難しい自治体もある〉状態だ(毎日新聞1月11日付/福島版)。ようするに、そんな曖昧模糊な復興指針を政府が「アピール」するために、DASH村復興計画がぶち上げられたとしか見えないのだ。

 だいたい、現実に目を向ければ、"社会基盤の整備や除染が進んだ"という理由から17年度の予算案で復興特別会計は前年よりも約5600億円も減少。他方、「特定復興拠点」にしても、除染費用は東京電力の負担とする原則を反故し国費が投入される。

 そして、もっとも忘れてはいけないのが、今年3月、避難区域外から自主避難した人々に対しておこなわれてきた住宅の無償提供が打ち切られることだ。除染費用を負担すべき「加害企業」は守るのに、保障すべき避難者は切り捨てるのだ。

 避難指示解除にしても、帰りたい人もいれば、いまの状態ではまだ帰ることができないという人だっている。生活を奪う大事故を起こしたのだから、国と東電はどんな事情にも対応するのが当然だが、これでは「国策に従わず帰らない人は自己責任」という風潮が高まることも十分考えられる。

 それでなくても、国は福島の健康被害に対する対策を完全に無視している状況にある。既報の通り、今年9月に公表された「福島県民調査報告書」によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子どもたちが前回より2人増えて合計174人と膨大な人数となっているが、政府や有識者会議、電力会社は「被曝の影響は考えにくい」などと非科学的態度、抗弁を続け、さらには現在、福島では子どもたちの甲状腺検査を縮小しようという異常な事態が進んでいる。

 しかも、甲状腺がんの問題に対しては、御用学者の詭弁を鵜呑みにし「原発反対派のデマだ」「福島いじめにつながる」などとしてバッシングする者も多い。しかし、福島にかんするマイナスな情報は復興を阻害するという考え方では、どんどんと不都合な情報は隠蔽され、本来検討されるべき安全や環境は守られない。

 DASH村の問題も同じだ。DASH村が復興のシンボルとしてそこに祈念館がつくられ、多くの人が「帰宅困難地域も復興が進んでいる」と安心するその一方で、避難指示が解除されても「帰れない」と判断した人々の保障が切り捨てられていては、それは復興などと呼べない。たんに政府が五輪を控えて復興を強調するためのものとしてDASH村復興計画が打ち出されたのだとしたら、これは「DASH村の政治利用」と言うべきだろう。
(編集部)