冬の寒い日に、「夏のうだるような暑さを貯めておける装置があったら、冬に熱を放出して温まることができるのに……」と思ったことがある人も中にはいると思いますが、今までその有効な手段は存在していませんでした。スイス連邦材料試験研究所(EMPA)で開発が進められている新しいタイプの熱交換・保存装置を使えば、夏の暑さを別の形に変換して保存しておき、冬には水を加えるだけで熱源として利用することが可能になると考えられています。

Empa - 604 - Communication - NaOH-heat-storage

https://www.empa.ch/web/s604/naoh-heat-storage

New technique stores summer heat until it's needed in winter

http://newatlas.com/renewable-energy-heat-storage-empa/47334/

EMPAが開発しているのは、濃縮した水酸化ナトリウムを熱保存の媒体として利用する装置です。比較的入手が容易な水酸化ナトリウムを利用するだけで熱を別の形で保存し、ニーズに応じて自由に再び取り出すことができるようになるため、化石燃料を必要とせず二酸化炭素を排出しない熱源として大きく期待されることになりそう。

その仕組みは、水酸化ナトリウムが水と反応する際に激しく発熱する性質を利用するというもの。水を加えることで、水酸化ナトリウムは化学エネルギーとして閉じ込めていたエネルギーを熱エネルギーとして放出するのですが、この現象を暖房の熱源として活用することが研究されています。水酸化ナトリウムは吸湿性が高いため、水蒸気のような少しの水分でも熱源として利用できると考えられており、開発次第では息を吹きかけるだけで暖まるカイロのようなものも実用化されるかもしれません。

逆に、熱を取り込む際にも水分が役目を果たします。太陽光などから熱エネルギーを水酸化ナトリウムに加えると、含まれていた水分は蒸発して水酸化ナトリウムの濃度が上昇します。これはつまり、再び水を加えれば熱源として利用できる状態になったということになるため、熱エネルギーが化学エネルギーとして水酸化ナトリウムに保存された状態ということになります。

装置の内部は、濃度50%で粘性を持つ水酸化ナトリウム溶液の中に、らせん状のパイプを配置する構造になっているとのこと。パイプの中には水が流れるようになっており、水分を与えられた水酸化ナトリウム溶液がパイプを外側から熱して水を摂氏50度程度に温め、ヒーターや床暖房などの熱として利用することが可能になると見られています。



濃縮された水酸化ナトリウムは腐食性が強く、日本では劇物にも指定されている物質であるため、一般家庭や産業への活用を実現するには安全性の確立が特に求められることになります。とはいえ、従来はほとんど活用できなかった真夏の暑さを冬になるまで閉じ込めておける装置の開発には大きな期待が寄せられることになりそうです。