聞き慣れた「イブプロフェン」に難聴リスク?(shutterstock.com)

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 市販薬を購入する際、ドラッグストアに積まれた数多くの薬の中から、どれを買ったらいいのか迷う、という人は多いだろう。

 知名度、値段、売れ筋、薬剤師のオススメ度、「〇〇配合」という効きそうな謳い文句......。さまざまな購入動機は挙げられるが、副作用やリスク情報まで心得て服用している人は少ないかもしれない。

 厚生労働省が改訂指示を出す薬の安全情報は、年に500件近くに上るといわれている。使い慣れた市販薬でも、心得るべき新たな副作用やリスク情報が加わることもあるのだ。

 今回、『American Journal of Epidemiology』(12月14日付オンライン版)に、多くの人が耳にしたことがあろう成分「イブプロフェン」「アセトアミノフェン」のリスクについて最新の知見が報告された。

 イブプロフェンやアセトアミノフェン配合の市販薬(頭痛薬や風邪薬)を長期使用していると、一部の女性に関しては「難聴リスク」が高まる――。そんな可能性が、米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のGary Curhan氏らの分析結果から読み取れたという。

事前研究でも「難聴」傾向が...

 Curhan氏らが今回の分析研究に際して採用したのは、看護師健康調査(NHS)に協力参加した女性層(48〜73歳)のデータ。そのサンプル数は約5万5000人分に及ぶ。

 結果、イブプロフェンあるいはアセトアミノフェン配合の薬を「6年以上使用した女性」の場合、同じ使用期間が「1年以下の女性」に比べて、難聴になる可能性が高い確率が解読された。

 一方、昔から耳なじみのある「アスピリン」の長期使用(者)と難聴の関連性については有意が認められなかったそうだ。

 この研究陣は以前の研究報告においても、「アセトアミノフェン」あるいは「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」の使用量が増えると、男性および若齢女性層の難聴リスクが高まる可能性について言及していた。

 市販の風邪薬にも多く含まれているアセトアミノフェンは、坐剤やシロップとして子どもの解熱にも多用されている。坐剤の場合、4時間以上はあけて使わないと子どもの体温が下がり過ぎる危険に陥る。入手しやすいとはいえ、使用間隔を厳守すべき、十分に注意が必要な薬なのだ。
宣伝効果ばかりにとらわれず<注意事項>にも注目を

 冒頭で掲げた「イブプロフェン配合」の市販薬(頭痛薬・風邪薬・生理痛薬)だと、よく知られているのが『イブ』や『ナロンエース』『バファリンルナ』『カイゲン感冒薬』あたりだろう。

 なかでも<のどの痛みに>と効果を謳う風邪薬には、このイブプロフェンが配合されているものが多い。さらに子宮への移行性に優れているため、生理痛にもよく用いられることから女性層には馴染みの深い成分だ。それだけに今回の知見は大いに気になるところだ。

 「実際のところ、鎮痛剤の長期使用による難聴リスク上昇の程度はわずかだ。しかしながら、これらの薬剤の使用頻度を考慮した場合、わずかなリスクの上昇でも健康面では重要な意味を持ち得るだろう」と、Curhan氏らは報告している。

 ただし、今回の研究からこれらの薬剤と難聴リスクの因果関係が確立されたわけではない。それでも、研究陣は次のように記している。

 「もし因果関係があるとするならば、解析対象層の女性内で生じた難聴の約16.2%がイブプロフェンあるいはアセトアミノフェンの長期使用による可能性が高いことを意味している」

 もっとも、今回の対象者の大多数を占めていたのが、高齢の白人女性層だった。つまり、鎮痛薬と難聴の関連性、その可能性をさらに解明するためには、他の年齢構成層も対象にすべきであり、調査規模の拡大も必要だろう。

 とはいえ、将来の研究報告を待つまでもなく、常に問われているのは服薬する私たち自身の意識改革だ。

 知名度や宣伝効果ばかりに耳を奪われず、服用の際には添付文書を一読するという基本を習慣化したい。<飲むなら読め>である。
(文=編集部)