テレビ東京系で金曜深夜0時52分放映の『山田孝之のカンヌ映画祭』
1話はAmazonなどののテレビ東京オンデマンドで配信中だ。


山田孝之は突然、映画監督の山下敦弘を呼び出して、言った。
世界最高峰のカンヌ映画祭で、賞を取りたい、と。

山田は演者として映画に出ず、プロデューサーに徹するという。
彼はすでに横浜に事務所を構え済み。
「合同会社カンヌ」設立済み。
主演俳優決定済み。
山下に有無を言わせない。

虚実入り交じるドキュメンタリードラマ


「映画のメイキング」という名目で撮っている、ドラマとドキュメンタリーをミックスしたものだ(公式では「ドキュメンタリードラマ」と呼んでいる)。
2015年に放映された(『山田孝之の東京都北区赤羽』の続編。
山田孝之の人生を山下敦弘が映す、という体は同じ。ストーリー的なつながりは現時点ではない。


『赤羽』は、どこまでが本気なのかわからない、一歩間違えたら大やけどになりそうな会話の綱渡りが面白かった。
演技だったら凄すぎる。金曜深夜「山田孝之の東京都北区赤羽」がひやひやして面白い エキレビ!
山田がスランプに陥り、映画の主演を休止。
清野とおるのマンガ『東京都北区赤羽』に憧れて、赤羽で暮らしたいと考え、うろうろする。自分探しの記録だった。

浮つきまくる、山田孝之


山田孝之の仕事の幅は、もりもり広がっている最中。
『電車男』ではおどおどした青年になり、『闇金ウシジマくん』では一切物怖じしないダークヒーローになった。『MW』ではゲイの神父の苦悩を見せ、『勇者ヨシヒコ』では目の据わった勇者を演じている。
2016年にはTEE「恋のはじまり」のMVで初監督を務め、エッセイ「実録山田」を出版。
「JINTAKA」でCDデビューもしている。

キャリアを積んだ彼、『カンヌ』ではやけにテンションが高い。
「日本アカデミー賞」に呼ばれたことが無いことに不満を訴える。
世界最高峰の「カンヌの一番のやつ」じゃなきゃ意味がない、と山下に詰め寄る。
山下は、それだけが賞じゃないと正論をいうものの、山田は頑として聞き入れない。

オフィスには、漫☆画太郎に描いてもらった肖像画がデカデカと飾られている。
「合同会社カンヌ」の名刺を、山下に作らせようとする。
山下はわけがわからず、狼狽するばかり。

彼が撮りたいのは、殺人鬼エドモンド・エミル・ケンパーをモチーフにした映画。
ケンパーは、身長2m強、小さい頃から動物殺しを繰り返し、15歳で祖父母を殺害。ヒッチハイカーの女性などを屍姦し、ついには母親を殺した人物。
この親殺しの心理に惹かれたらしい。
彼が連れてきた主演俳優は、芦田愛菜だった。

いやいやいや。芦田のケンパーはものすごく見たいけどさ。
さすがにネタ臭が強すぎる。ツッコミきれない。
完全フィクションドラマならすんなり楽しめるのだが、これは「山田孝之」の記録だ。

何をドキュメンタリーとして撮るのだろう?


おそらく、一話の流れは「設定」なのだろう。
二話以降、実際に様々な人に話を聞きながら、映画制作ドキュメンタリーを撮っていくようだ。
「大ヒット映画」ではなく「カンヌで賞を取れるような映画」という実験的切り口で、3人が映画技術を模索してみた記録、となるとかなり面白い。

ただ、気になるのはキービジュアル。
しっかりした顔の芦田と、ぼさぼさで汚らしい、死んだ目の山田。
一人の時のビジュアルは、自信にあふれているのに。


『赤羽』で道に迷っていた山田。今度は皆を引っ張っていく側だ。
仮に困った時がきたら、監督・山下は話せばわかってくれるかもしれない。
でも、彼に付いていくことになった主演・芦田の前から、逃げることはできない。

山田の机の上に置かれているマンガ。
『軍鶏』は両親を殺害した少年の物語。
『クリームソーダシティ』は2人組がテロを起こしてから、混沌とした世界に放り込まれる話だ。
一話の山田孝之は、空想と現実の間をうろうろしている。

(たまごまご)