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●ライフサイエンス企業のネットワークが進展
2016年は製薬企業や大学など、ライフサイエンス分野に関わる企業・研究機関のコミュニケーションが一気に進んだ感がある。たとえば一般社団法人「LINK-J」(ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン)。多くの製薬企業が集積する東京・日本橋を拠点に、企業や研究機関などのネットワークを構築するため、昨年6月に設立された。 そして、やはり同じ6月、LINK-Jとは直接関係はないが、やはり製薬企業に大きな動きがあった。アース製薬と大幸薬品が資本提携・業務提携を結ぶと発表したのだ。大幸薬品の発行済み株式を5.78%譲り受ける格好で、アース製薬が出資、7月にはこの資本提携が実行された。

アース製薬といえば殺虫剤で国内最大手、大幸薬品といえば誰もが服用したことがあるであろう「正露丸」シリーズのイメージが強い。前者は東京・神田を本拠とし、後者は大阪市に本社を置くなど、距離的にも接点がみられない。全国的な知名度を誇る両社の企業活動に地理的なことを結びつけるのはナンセンスかもしれないが、それぞれが得意とする事業内容を考えると、この提携には違和感が生じなくもない。

○アース製薬と大幸薬品を結びつけた気体

この両社の資本提携・業務提携のキーワードとなるのが「二酸化塩素」という気体だ。

筆者は研究者でもなければ理系にもまったく通じていないので二酸化塩素についてうまく説明できない。なので、社団法人 日本二酸化塩素工業界のホームページから1文を引用させていただくと「二酸化塩素は、ラジカルの1種であり、強い酸化力をもつことから、ウイルス除去、除菌、消臭、坑カビ等のはたらきを有することが知られています」とのこと。

消臭・除菌をおもな目的とする大幸薬品の衛生管理商品「クレベリン」の主成分にこの二酸化塩素が使われている。単に消臭だけではなく、大気中の菌を除去することで、人体におよぼす悪影響を低減できるとしている。

前述したとおり、筆者に科学的な知見はまったくないが、ザックリいうと、インフルエンザのようなウイルスを不活化する効果が、二酸化塩素にはあるということらしい。

●提携による両社のメリット
では、なぜアース製薬と大幸薬品が資本提携・業務提携を結ぶのか。

前述したとおり、二酸化塩素が両社の縁を結んだ。大幸薬品はクレベリンという商品で二酸化塩素に関して他社に対し先行している。二酸化塩素に関する複数の特許も取得し、現在にいたっている。

一方、アース製薬も二酸化塩素の活用に目を向け、研究・開発にのぞんでいるという。だが、大幸薬品が取得した特許の壁があり、思うままにいかなかったそうだ。事実、アース製薬の代表取締役社長 川端克宣氏は、「弊社でも二酸化塩素の研究・開発を進めていますが、先行する大幸薬品さんの特許を活用させていただく道を選びました」という。

○消臭・除菌商品普及への試金石となるか

こうして、アース製薬と大幸薬品の共同事業による二酸化塩素活用商品の開発が始まった。ちなみに、大幸薬品の取締役の一人によると、「アース製薬による資本出資は、M&A的なものでもなんでもなく、商品をスムーズに共同開発するためのものです。資本提携の前から共同開発は進められています」という。

また、「アース製薬が見込んでいる事業領域以外の二酸化塩素の活用であれば、ほかの製薬メーカーへの協力も排除するつもりはありません」とも付け加えた。二酸化塩素で先行する企業ならではのスタンスといえよう。

大幸薬品にとっても、アース製薬とタッグを組む利点が大きくある。それは、アース製薬の販売力だ。

クレベリンという消臭・除菌分野の商品は、ともすれば正露丸でイメージが固着している大幸薬品に結びつきにくい。だが、アース製薬は前述したとおり殺虫剤などの国内最大手で、消臭・芳香剤のイメージとも結びつきやすい。おそらく、国内の薬局の消臭・芳香剤の販売チャネルに大きな影響力を持つだろう。

両社の協業が、消臭・除菌商品の市場をどう活性化させるのか、今後の展開に着目したい。

(並木秀一)