ニコラス・ウィンディング・レフン

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 「ドライヴ」「オンリー・ゴッド」など卓越した映像表現で知られるニコラス・ウィンディング・レフンの新作「ネオン・デーモン」は、エル・ファニングを主演に迎え、ファッション業界に渦巻く欲望と狂気を描くサスペンスだ。これまでのハードボイルドな男性主人公を描いた作品群から一転、若く美しい少女を主人公に据え、現代人の“美”への執着を耽美的な映像と音楽で描き出す。独特の美意識を持つ鬼才が、カンヌで賛否両論を巻き起こした新作を語った。

 「これまで美は、女性の強さを定義づけるものとして描かれてきたが、美とは複雑なものなので、深く考察するだけのものではないと感じていた」そうで、以前から「美しさ」に焦点を当てた作品を制作したかったという。自身が考える「美」は「不完全であること」。「エル・ファニングはユニークなものを持っていて、言葉では表しにくい。そういう俳優は男性であれば、ライアン・ゴズリング。完璧ではないが資質のようなものを持っている」とキャスティングの理由を明かす。

 そして「この映画はナルシズムの祝福」だと断言。「美しくありたいというのは、人間誰しも抱えている感情であり、美しさにとらわれるなんて浅はかだ、重要なポイントではないというのは嘘だと思う。デジタルレボリューションをきっかけに、見られることに価値を置くようになっているので、その流れは加速していっていると感じる」と現代社会における美のあり方について言及する。「僕は美というものを恐れる必要はないと思うし、美についてだけでなく文化についても、マス(大衆)の目線は気にする必要はないと思う」

 劇中の音楽を「ドライヴ」以降タッグを組んでいるクリフ・マルティネスが担当。冴えわたったエレクトロミュージックが、映像の一部となって倒錯的な物語を完成させているといっても過言ではない。

 「もともと僕は、動かない映画を作る可能性を考えてきた。観客の心の中で状況が動いていくが、絵が動くわけではない、というようなことができないかと。ほとんどの映画は、観客が見ていて、A地点からB地点へと話が動いていくけれど、それがもし動かずに観客の内なる経験としてのみ動く作品を考えたときに、音楽が重要な一部になると思った」

 「音楽は快感でも、恐怖でも感情をより喚起させることができ、人の欲求を解放することもできるもの。だから、我々の感情の色彩のパレットに届く。そして、映画の場合“サイレンス(沈黙)”も正しい形で使えれば音になりうるということ。この映画の半分は音楽で成り立っていると言える」

 カンヌで賛否両論を巻き起こしたことに関しては「アートの形とは、どういう風にリアクションしたかによって定義づけられるが、アンチの方が記憶に残ったりするもので、感情が両極化する方が作り手としては正しいことをしたと感じる。クリエイティビティとは、善かれ悪しかれ何かのエモーションを想起させるものでなければいけない。みんなが同じものに同意することは、人生はシンプルになるかもしれないが、クリエイティビティはダイバーシティにつながるものだと思う」と持論を語る。

 美に執着する女性を描いた今作で「『ブロンソン』以降の、自分の執着が今回で完結したとも言える」と達成感を得たようだ。監督自身がもし生まれ変われるならと問うと「絶対に女だね。もっと面白そうな人生になりそうだからね」と笑みを浮かべる。次回作の構想は「誇張された現実というものに興味を持っている。映画も、見ていて心地良くないものよりは良いものを作りたいと思っている。リアリティを改めてつづるようなことに僕は興味がないから」と方向性を語った。

 「ネオン・デーモン」は、1月13日から東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国順次公開。