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ネットユーザーらによる芸能人への誹謗中傷は、どのような罪に問われるのか? 昨年12月25日、日本テレビ系情報番組『PON!』(毎週月〜木10:25〜11:30)にVTR出演したタレント・加藤紗里(26)は、2016年を「バッシングがつらかった」と振り返った。マスコミやコメンテーターに向けた言葉だったようだが彼女のブログコメント欄は他の芸能人にはない、ある"特徴"を確認することができる。

加藤といえば昨年、お笑い芸人・狩野英孝(34)との二股騒動で知名度が急上昇。ブログへのアクセスが殺到しアメブロランキングで1位になるなど、一躍時の人となった。先述した"特徴"というのはブログの読者コメント欄。昨年2月から多い時で数千、平均して数百のコメントが各記事に書き込まれているのだが、応援の声もある一方、そのほとんどが批判的な内容だ。最新の投稿(2016年12月30日)だけでも「妖怪おばさん」「気持ち悪い」「疫病神」「詐欺師」「ゴミ」「ドブス」「馬鹿」「消えろ」など日々、誹謗中傷の罵詈雑言で埋め尽くされている。

加藤はこれらの書き込みについて、「コメント監視はOFF」と宣言して放置。「コメントを見ると紗里は吐きそうになるから、紗里は見るけど心臓の弱い人は見ないでね」と呼びかけるなど、コメントの選別は行っていないようだ。SNS上では著名人に向けた誹謗中傷があふれているが、果たしてどの程度の罪に問われるのか? そして、その量刑とは? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に見解を求めた。

○匿名でも罪に

――SNSでの誹謗中傷はどのような罪になるのでしょうか。

不特定又は多数人が見ることができるSNSで、事実を示して、人の評判を下げるような書き込みをすると名誉毀損罪が成立する可能性があります。また、事実を示さないで単に侮辱すると侮辱罪が成立する可能性があります。

――ブログコメント欄、ツイッターなど投稿先によって違いはありますか?

不特定又は多数人が見ることができるものであれば、どのSNSでも違いはありません。書き込んでも自分以外は見られないような設定になっていれば名誉毀損罪は成立しないでしょう。

――今回のように匿名コメントによる書き込みでも罪になりますか?

書き込みした人の名前が匿名であったとしても、同じように罪は成立します。

――どこまでのコメントであれば許されるのでしょうか。

具体的な線引きは難しいですが、人の評価を低下させるおそれのあるコメントは名誉棄損行為にあたります。

○書き込んだ数で量刑が重くなる

――仮に加藤さんが民事の損害賠償請求をする場合、コメント欄に書き込んだ人物を特定することはできますか?

プロバイダ責任制限法では、(1)権利が侵害されたことが明らかであり(2)開示を受けるべき正当な理由がある場合は、プロバイダ、サーバの管理・運営者に書き込んだ人の情報(氏名や住所)の開示を請求できるとされています。開示に応じてもらえなかった場合は、開示について訴訟でも争うことができます。

――書き込んだ数などによって量刑は変わりますか?

書き込んだ数が多く内容が悪質であれば、犯行対応が悪く被害も甚大ということで量刑は重くなります。その他、被告人の反省や再犯可能性なども考慮されて量刑は決まります。

――これだけ多くの人からの誹謗中傷の場合、一人ひとりを罪に問うことは可能なのでしょうか。

起訴するのは検察です。複数人が名誉毀損行為を行っているのであれば、起訴するとしても別々に起訴するでしょう。

○「バカ」は侮辱罪

――「事実を示して、人の評判を下げるような書き込みをすると名誉毀損罪が成立する可能性がある」とのことですが、「事実を示して」というのは具体的にどのような文言を指すのでしょうか。

過去の裁判例では、「手前の祖父は詐欺して懲役に行ったではないか」「今まで何十軒となく泥棒をしている」など具体的な事実を示した事案で名誉棄損罪が成立しました。一方、事実を示さない単なる軽蔑、例えば「お前はバカだなあ」などの場合は侮辱罪が成立する可能性があります。

――名誉毀損罪と侮辱罪が成立した場合、どのような罰則が課せられるのでしょうか(罰金、懲役など)。

名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金、侮辱罪の法定刑は、拘留又は科料(科料とは、1,000円以上1万円未満の罰金)です。

■岩沙好幸(いわさ よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。頼れる労働トラブル解決なら、「弁護士が教える 労働トラブル解決サイト」へ。

(アディーレ法律事務所編)