今年の大会も優勝した青森山田のGK広末らJリーグ入団予定の選手も多数

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正月恒例の全国高校サッカー選手権大会。今年度の大会でも、高校生たちの熱い戦いが繰り広げられた。

Jリーグ誕生以降、能力の高い選手ほどJクラブのユースチームに進む傾向が生まれ、一時は高校サッカーの弱体化が危惧されたこともあった。実際、高校のチームでプレーする選手が小粒だった時期があることは否めない。

だが、最近ではかなり見直され、Jクラブから声がかかるような有望株でも高校を選ぶケースが増えてきた。

今大会に出場していた選手にも、将来が楽しみな素材を数多く見つけることができた。その中から何人かの選手を紹介してみたい。

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まずは、GK広末陸(りく)。今大会で初優勝を遂げた青森山田の守護神である。

昨秋のU−19アジア選手権で優勝した日本代表のメンバーでもある広末が、今大会のベストGKだったことは間違いない。前橋育英との決勝でも好セーブで失点を防ぐだけでなく、正確なロングフィードで攻撃にも大きく貢献した。

広末は中学時代、FC東京の育成組織に所属しており、「ユースチームに上がれなかった時点で、高校を卒業する時にプロ入りすることを目標に、見返したい一心でやってきた」という。そして3年後の今、FC東京入りが内定し、古巣への“復帰”を勝ち取った。

高校No.1GKは「全体的に底上げしないとプロでは通じない」と語り、謙虚さを見せる一方で、「(ルーキーとはいえ)年齢は関係ない。遠慮していたらプロではやっていけない」と強気な性格も垣間見せる。Jリーグでの活躍に止まらず、「世界に進出していけるGK」が最終的な目標だ。

その広末とともに青森山田の初優勝に大きく貢献したのが、MF高橋壱晟(いっせい)。黒田剛監督が「チームのエース」と認める選手である。

卒業後はジェフ千葉入りが内定している高橋の特徴は、点を取れるMFであること。中盤の選手でありながら、今大会でも5ゴールを挙げるなど、高い得点能力を披露した。ただパスをさばくだけではなく、自らもゴール前に進出していくダイナミックなプレーが魅力だ。

一方、今大会では1回戦敗退に終わったものの、高校レベルとして際立つポテンシャルを示したのが、京都橘のFW岩崎悠人である。

武器であるスピードを生かした突破はもちろん、身長171cmと小柄ながら強引にシュートまで持ち込むパワフルなプレーも得意とする。U−19アジア選手権でも5試合(全6試合)に出場し、チーム最多タイの3ゴールを記録した。

世代屈指のFWは卒業後の京都サンガ入りが内定しており、選手権の悔しさをプロの世界で晴らすことになる。

そして最後に、もうひとり名前を挙げておきたい逸材が、桐光学園のDFタビナス・ジェファーソン。身長182cmの大型サイドバックだ。

その名前から想像がつくように、タビナスも最近様々な競技で活躍が目立つハーフの選手。だが、彼の場合、日本とどこかの国ではなく、父・ガーナと母・フィリピンのハーフなのだ。現時点での国籍はフィリピンで、必然的に(年代別も含め)日本代表ではプレーできない。

だが、今後は日本国籍の取得を考えているといい、将来的には日の丸を背負ってプレーすることも可能になるはずだ。

普通の高校生が相手なら、ショルダーチャージされても身じろぎさえしないほど強靭な肉体を持ち、しかも希少価値の高い左利きで攻撃力は高い。これほどスケールの大きなサイドバックは、そうそう現れるものではない。卒業後は川崎フロンターレ入りが内定しており、J1のスピードに慣れれば、早々にプロで活躍する可能性もある。

ここに名前を挙げたのは、もちろん今大会で活躍した選手のごく一部にすぎない。その他にも東福岡のJ内定トリオ、MF藤川虎太郎(ジュビロ磐田)、MF高江麗央(ガンバ大阪)、DF小田逸稀(鹿島アントラーズ)など、可能性を感じさせる選手は多かった。

また、卒業後にすぐJリーグ入りはしなくとも、大学を経てプロで活躍する選手も当然出てくるだろう。今大会では目立たなかった選手が大化けする、ということもあるかもしれない。

加えて言えば、今大会に出場した高校3年生は(早生まれを別にすれば)2022年に22歳になる。つまり、23歳以下の選手を中心に臨む東京五輪で活躍が期待される世代の選手たちなのだ。

高校選手権を彩った選手たちが、東京を舞台に世界中のライバルを迎え撃つ。そんなシーンが見られることを楽しみにしたい。

(取材・文/浅田真樹 写真/アフロスポーツ)