「Thinkstock」より

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 2017年2月24日、「プレミアムフライデー」が始まる。毎月最終金曜日は、午後3時に終業するというものだ。経済産業省が旗を振って、日本経済団体連合会(経団連)、小売り、旅行などの業界団体でつくるプレミアムフライデー推進協議会が取り組む。

 プレミアムフライデー当日には、各地のショッピングセンターや商店街などにイベントやキャンペーンを企画してもらい、買い物や外食、旅行など幅広い分野で消費を喚起する。

 経産省は、広告費などとして16年度の補正予算に2億円を計上した。協議会は、毎月最終金曜日に従業員が午後3時をめどに退社できるよう企業に働きかける。

 経産省と経団連などは、米国で定着している「ブラックフライデー(黒字の金曜日)」の日本版として検討。デフレ脱却を掲げる安倍政権が16年8月にまとめた経済対策で、実施が盛り込まれた。

●イオンは「ブラックフライデー」セール
 
 16年11月、ブラックフライデーの名前を冠したセールが流通大手イオンで登場した。

 ブラックフライデーとは、米国で毎年11月第4木曜日に催される感謝祭の翌日、11月第4金曜日を指す通称。米国におけるクリスマス商戦の初日であり、かつ最大の山場とされる。商品は5割引以上になることがほとんどで、このブラックフライデーを含めたクリスマス商戦で年間の4割を売り上げるといわれ、「どんな小売店も黒字になる」という意味である。

 イオンは、大手小売りとして初めてブラックフライデーと銘打ったセールを11月25日〜27日までの3日間実施し、通常の半額など大幅に割り引いた商品を販売した。初開催したセールは、文字通り黒字を達成したという。イオングループ全体の11月の売上高も、前年同月を1%程度上回った模様だ。イオンは今年もブラックフライデーを実施する予定としている。

 ただ、セブン-イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂を傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスは、ブラックフライデーのセールを実施しなかった。大手百貨店も軒並み見送った。小売り各社は、日本でも広がるかどうか消費者の動向を注目している。

 日本は春夏秋冬、年中セールを行っている。そのため、11月下旬に買わなければならないという意識が消費者にはない。値引きの目玉となる冬物衣料は、まだ正価で販売している時期で、値引きセールが始まる年明けまで待つ習慣が根強い。

 単に米国の制度を猿真似しただけのイベントでは、定着させるのは厳しいと見る向きが多い。ハロウィーンに続く新たな商戦として定着させるには、確かな手応えが必要になる。

●年収600万円でもギリギリの生活

 買い物自体をお祭り(イベント)に仕立てて、どんどんモノを売るというのは、消費喚起の常套手段だ。午後3時に会社を出て、買い物や食事をする。または、金曜日は早く帰って、土日にかけて家族と一緒に旅行するといったバラ色のアイデアである。年間で1230億円の経済効果が期待できるという解説まであり、株式市場では百貨店、外食、旅行代理店や資格を取得するための学校、英会話スクールなどの業績が上向くと騒いでいる。

 だが、NHKや民放のテレビ番組で、街中でインタビューに答えていた若い会社員たちは、「賃金を上げてください。それが先です」「先行きが不安で、国の政策も信用できない。遊んだり消費するより、まず貯金です」などと、否定的な感想を述べている。

 これらは、もっともな反応といえる。複数の調査で、平均世帯年収は500〜600万円といわれている。一見、十分な年収に見えるが、年収600万円でも家計はギリギリという家庭は少なくない。都市部で子供2人を大学に行かせれば、税金や保険料、子供の学費を差し引くと、残りは100万円程度だ。家族4人が年間100万円で暮らしていかなければならないとなると、生活保護の基準を下回ってしまう。さらに住宅ローンが加わると、年収800万円でギリギリ生活できるレベルだ。冷静に考えれば、年収600万円では余裕のある暮らしとはならないことは明らかだ。政府が笛吹けど、人々が消費に踊ることはない。

 アベノミクスは、企業の業績が向上すれば事後的に家計が良くなるという考えに基づいているが、安倍政権が強調してきた波及効果が起きてこなかったことが失敗要因と指摘する声が多い。本来、順番は逆でなければならない。高度成長期がそうであったように、まず家計が富み、それが企業に波及していくコースに戻さない限り、消費は上向かないだろう。
(文=編集部)