血管が硬く、もろくなる「動脈硬化症」。糖尿病や高血圧症、脂質異常症(高脂血症)がリスク因子で、近年は手足に血液を送る末梢動脈の動脈硬化症:PADが注目されている。

 PADの自覚症状は手足の冷え、しびれ、痛みなど。進行すると「間欠性跛行」──しばらく歩くと足の筋肉が痛み歩けなくなるが、数分休むと歩ける、という特有の症状が出てくる。「足の狭心症」として名高く、PADの7〜8割でこの症状が認められる。

 PADはがんに匹敵する悪性疾患だ。足の病変そのものより、全身の動脈硬化の進行が心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、診断後の5年生存率は7割に満たない。早期の大腸がんなら9割を超える。PADの悪質さがわかるだろう。

 2016年11月、米国心臓協会と米国心臓病学会は、共同でPADの診療ガイドラインを公開した。

 ガイドラインでは、(1)65歳以上、(2)50〜64歳で糖尿病や喫煙歴、脂質異常症、高血圧、またはPADの家族歴がある、(3)50歳未満の糖尿病患者で脂質異常症など動脈硬化の危険因子がある、(4)心筋梗塞などの既往、の4タイプを「PADのハイリスク群」と定義。早期の受診と検査を推奨している。

 ハイリスク群は危険因子である血圧や血糖コントロールとエクササイズが重要だ。米国のガイドラインでは全PAD症例に運動するよう推奨している。

 家庭でできそうなのは、週3回、30〜45分/回のウオーキング。万が一痛みが出たら、休み休みでよいので30分は歩こう。続けることが肝心なので、医師に相談しながら無理のない運動プログラムを作成するのも一案だ。

 このほか、血管の細胞を傷つけるタバコの煙は厳禁で、禁煙と「職場や自宅での受動喫煙の回避」が推奨されている。

 もう一つ大切なのは、水虫など足の感染症や傷をきちんと治療すること。足先の血流が不足していると小さな傷から壊死が始まり、命取りになりかねないのだ。すでにPADが進行していると、足先の感覚が鈍り、傷に気がつかない。たまには自分の足をじっくり、ゆっくり観察するといい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)