ある日突然家を失う理由はさまざまだ。火事、地震や津波などの自然災害、そして戦争。人間が基本的な生活を営むためには、最低限の衣食住を確保する必要がある。難民支援といえば、食料や衣料品の配給をイメージするが、雨露をしのぐ住居の存在も人間の生存には不可欠だ。

国際NGOハビタット・フォー・ヒューマニティは建築技術を提供し、現地の人たちのコミュニティと協力しながら住宅を作る活動をしている。また、無利子・無担保で費用を融資することで、被災者が無理なく新しい生活を立て直す支援もしている。


だが、中東やアフリカなどの紛争地など大量の難民が発生する地域では、できるだけ早く大量のシェルターを用意しなければならない。それを支援している企業のひとつが、IKEAである。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との協働で、IKEAは4時間で組み立てられる高品質なシェルター「Refugee Housing Unit」(RHU)を開発した。



『Better Shelter』と呼ばれるこの難民用キャビンは、ダンボール詰めされた資材を特殊なツール無しで組み立てができ、従来のシェルターと比べ運送の手間が低く抑えられる。IKEAが創業時から蓄積してきた、組み立て式でコンパクトに収納・輸送ができる低コストな家具づくりのノウハウが活きたのだ。


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『Better Shelter』は難民の家族たちのシェルターとなるべく、イラクやエチオピア、ネパールなど国を含めて、世界中で6500万個以上が展開されている。ハミド・アブデラツァは2年前、病気の妻をふくむ家族4人(すでに嫁いだ娘たちを除く)とともにISISが制圧したファルージャから逃れてきた。だが、難民キャンプのテントには狭くて空調もなく、食料や水も十分ではなかったため、砂漠地帯の過酷な気候の中、妻の具合は悪化する一方だったという。その後、RHUに住み替えることができたため、適切な看護環境とプライバシーを確保できた。RHUを利用する他の難民の感想もほぼ同様だ。



IKEAはこれまでも積極的に社会貢献活動を行ってきた。2014年2月〜2015年12月にかけて行われたキャンペーン「難民キャンプに明かりを届けよう」では、約39億円をUNHCRに寄付した。2003年から毎年行っている「Soft Toys for Education」はソフトトイの収益の一部を、学校に行けない子どもたちを支援する教育プログラムに寄付をし、すでに1200万人の子どもたちが支援を受けている。


『Better Shelter』は、ニューヨーク近代美術館やロンドンのデザイン・ミュージアムが主催した「難民」をテーマにしたエキシビションにも出展された。さらに、タイム誌は、「2016年最高の発明品」の1つとして、PlayStation VRやナイキのHyperadapt 1.0などと並べて『Better Shelter』を称賛したのだった。